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――そして、数分後。
「どうぞ、こちらです」
ノックしてから扉が開き、瑞穂に促され一人の男性と一人の少女が生徒会室に入ってきた。
いうまでもなく少女のほうは転入生の蒼瀬リアだった。そして、男性のほうは知らない顔だ、つまり科学者として有名なリアの父親ではない。
そのことに関しては予想していたことではあったので特に気にすることはなく、あらかじめ立ったまま出迎えたシリスは、二人が中に入り瑞穂が扉を閉めるのを確認してからにこっと微笑んで挨拶した。
「ようこそ、古城学園へ。わたしが生徒会長のシリス・フィル・レイティーナです」
シリスの名前を聞いて、男性の顔に軽い動揺が走った。あらゆる意味で有名なシリスを知らないということはないだろうが、実際に会ってみて、およそ世間でいわれている地位と力とはそぐわない雰囲気に驚いたのだろう。
しかし、一瞬の間はあったものの男性はすぐに表情を元に戻し、丁寧とは言いがたい口調で挨拶を返してきた。
「これはどうも、私は井田といいます。リアの付き添いできました。ほら、リア挨拶して」
「……はじめまして。蒼瀬リアといいます」
井田に促され、控えめに鳴る鈴のような声を響かせてリアが頭を下げた。
「はじめまして、蒼瀬さん。では、少し学園の説明をさせていただきますので、こちらにどうぞ」
シリスは屈んでリアに視線を合わせてから挨拶すると、顔を上げて二人をテーブルへと促した。
席に座って改めて挨拶を交わす三人に、水沙が用意していた紅茶を瑞穂がテーブルに置いていく。それを、邪魔にならないようテーブルから離れた場所で水沙と鈴と共に立ったまま、紅耶は心の中で呟いた。
(写真で見るよりも、可愛い子だね)
金糸の髪に黒真珠を思わせる綺麗な瞳、白い肌。シリスがリアのことを自分と同じように可愛いといったが、確かに可愛い女の子だ。
ただ、シリスと似ているようで決定的に違うのは、その可愛さが人形を思わせるような可愛さということだろう。西洋の綺麗な人形のような、そんな雰囲気の繊細な可愛さ。触れれば壊れそうな可憐なガラスの人形。なにより、感情のない表情が人形のような印象を際立たせていた。
だが、リアの気持ちを考えれば無表情なのはしょうがないことだった。転入生であれば尚更。
突然自分の意思とは関係なく魔法使いとなり、ここへと強制的に連れてこられれば、悲しみや怒りというより事態がよく分からないというほうが素直な気持ちだろう。




