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古城学園にとって幼等部はどこよりも重要な教育課程だった。三歳からの強制的な居住で、一番最初に入るのは当然古城学園幼等部だ。幼い子供たちのほとんどは親元から離れ、まったく知らない場所で急に生活していかないといけなくなる。それが、子供たちの精神にどれだけの衝撃と影響を与えるのかは想像に難くない。
しかも、そもそも何故幼稚園に入る年齢から魔法都市への居住が定められたかと言えば、他人と触れ合う機会が多くなることによって無意識の魔法暴走が多発したからだった。その為、魔法都市への強制居住年齢が幼稚園入園の年齢、三歳と定められた。
そんな精神も魔法の力も不安定な子供たちに、笑顔を取り戻すことがどれだけ大変なことか……それを、一身に背負い子供たちに笑顔を取り戻させたのが和穂だった。
そんな和穂をシリスは誰よりも信頼していた。だが、逆に言えば和穂以外に任せられないという状況も事実だった。
「和穂の姿を見て他の先生も先生候補たちも変わり始めているけど、それでもまだ時間はかかる。和穂の負担が大きくて力を十分に出せていないから、早くなんとかしたいんだけど」
「都合よくそういった転入生がきてくれたらいいんだけどね」
「紅耶みたいな子が来てくれるんだったら大歓迎なんだけど」
「今日、転入してくる子はどうかな」
「さあ、どうかな」
その時、話が一段落するのを待っていたかのシリスの机にある電話が鳴った。
「噂をすれば、ね」
水沙と鈴と談笑していた瑞穂が音に気付き電話を取ろうとするのを止めて、シリスは紅耶から離れて机に歩いていった。
「はい――」
電話を取り何かを話すシリスを見ながら、紅耶はふと心の中で呟いた。
(転入生か)
シリスから視線を外し、今度は生徒会室全体をなんとなく見渡してみた。古城学園に来てまだ三ヶ月だが、随分と長くここにいる気がする。
部屋の奥にあるシリスの机、その左右に書棚があり部屋の手前には会議に使うためのテーブルがあった。今はそのテーブルも、水沙と鈴の憩いの場となっているが。
実を言うと、生徒会室という部屋に入ったのはこの古城学園が初めてだったのだが、頭で描いていたどことなく硬く重苦しいイメージとは違って、ここの生徒会室は落ち着いた暖かい雰囲気があった。言ってみれば、水沙や鈴が紅茶を飲んでゆっくりしていても違和感のない雰囲気がある。シリスは「カジュアルシックな感じでいいしょ?」と言っていたが、生徒会室にそういうものを求めるのもシリスらしいといえばシリスらしかった。




