12
「お疲れ様。連絡は受けてる」
「疲れるほどのことではなかったけどね」
先ほど喧嘩していた生徒の話だろう、そのことをすぐに理解して紅耶はシリスに答えた。
魔法に関するトラブルは、全てシリスへと報告されることになっていた。只の喧嘩であっても、そこに魔法が加われば命の危険が生じる。なので、どんな些細な問題でも、そこに魔法が加われば全部シリスへと報告されることになっていた。
「魔法を使わないでの殴りあいだったら、止めないで好きにやらせたんだけど」
「ふふ、まあ、そうね」
紅耶の言葉にシリスも笑って同意した。本来なら、生徒会長であるシリスが同意していいことではなかったかもしれないが、魔法も武器も使わずの素手の喧嘩であれば、シリスも紅耶もしていいんじゃないかと思っていた。逆に推奨してもいいほどだ。
魔法の被害が減るからという問題ではなく、喧嘩に魔法や武器を使わないような根性のある性格のほうがよかった。そのほうが魔法を正しく使うことができる。
だが、現実は違う。魔法を持ったことで身体も強くなったと勘違いする人間は多い。生身の身体が炎の球をくらって無事で済むはずがないのに、平然と喧嘩で魔法を使おうとする。
「一本、筋の通った人間なんて今の世じゃ中々いない。残念だけど」
「だから、この学園があるんでしょ」
「そうね。ちゃんとやっていかないとね」
頷いて、シリスの眼差しが少し厳しくなった。シリスの気持ちは痛いほど紅耶にも分かる。
世界的に魔法使い黎明期とも言える今、当然ながら魔法学園の運営方法など手探り状態だった。シリスが生徒会長になって五年経っても、まだ完全に運営できているとは言い難い。
いや、世間的には運営できていると見えているかもしれないが、シリスから見ればまだまだ足りないことだらけだった。
「生徒会と各代表はいいとして、問題は先生ね。教える側を育てないと」
「普通の学園と同じように、授業だけしていればいいわけじゃないしね。誰かいい人いた?」
「なかなか……。こういってはなんだけど、幼等部の子たちのほうがよほどいい」
「和姉が教えてるからね。一番大変な幼等部の子たちをあれだけ明るくしてくれたのは、ほんとにすごいよ」
瑞穂の姉であり、古城学園の数少ない先生の一人である七夜月和穂は主に幼等部の担当をしていた。




