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古城学園が建てられて十年経っているが、学園内はまだ綺麗だ。五年前、レイティーナ学園長が就任してから生徒がより良く生活できるように大きく改装されたというのもあるのだが、魔法の事故で校舎が壊れることがよくあり、その度に修理をしているので綺麗というのもある。
だが、今紅耶と水沙が歩いているこの校舎だけは五年前からまったく変わっていなかった。掃除はきちんとされているものの、やはり時間の経過というものはどうしようもなく、他の校舎に比べれば少し古く感じる。
僅か五年といえども、五年ぶんの歴史はある――見慣れた白い廊下を歩きながら、そんなことを考えつつ三階の奥にある部屋の前で二人は止まった。
プレートには、目的地の名前である『生徒会室』と書いてある。それを、一瞥してから紅耶はノックをせずにドアのノブを回した。
「お疲れ~」
「こんにちは」
挨拶しながら紅耶と水沙が生徒会室に入ると、ふわっと優しい紅茶の香りに包まれた。この空気と雰囲気を出せる人は、紅耶が知る限りでは二人しかいない。
「こんにちは、紅耶ちゃん、水沙ちゃん」
鈴に新しい紅茶を準備していたのだろう。湯気のたつカップをお盆に乗せたまま瑞穂――生徒会副会長、七夜月瑞穂はにっこりと優しく微笑み二人に挨拶した。
「はぐはぐ、んぐ、おっそいよ~水沙ちゃん、紅耶ちゃん」
クッキーをほお張りながら鈴――初等部副代表、日乃鈴が瑞穂の後に言葉を続ける。
「あんまり遅いから、瑞穂お姉ちゃんのクッキー先に食べてたよ」
「鈴、そういう言葉は、食べるのを少しでも我慢していた人間がいうことよ」
そして、二人の言葉の後に奥の机から立ち上がり、金の髪をなびかせながらこちらに歩いてくると生徒会長であるシリスは水沙に向かって微笑んだ。
「来てくれてありがとう、水沙。転入生が来るまでゆっくりしていて。まあ、鈴と一緒じゃゆっくりできないかもしれないけど」
「ふふ、はい、ありがとうございます」
「ああ~、ひどいよ会長。あむあむ」
「お菓子食べながら『ひどい』なんていっても説得力がないよ」
笑いながらシリスは水沙をテーブルへと促した。促され椅子に座った水沙に、瑞穂が新しい紅茶を用意しようとして、紅耶も紅茶がいるかどうか視線で問いかけてくる。
それに軽く手を振って断るのを待ってからシリスは紅耶に声をかけた。




