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(つまりは――)
紅耶は歩きながら、水沙の顔をちらっと見た。
(心が強く優しい人ほど、強い魔法の力を持っている)
生徒会や代表のメンバーを見ても、それは一目瞭然だった。本当に優しく、心が強い者ほど魔力が強い。
(目に見えず測ることのできない心の強さを魔法で測ることができるようになった……これこそが魔法の役割かもね)
「ん?」
視線に気づいて、水沙が右にちょこっと首をかしげて見つめ返してきた。
「ううん。やっぱり水沙が代表でよかったなって」
「そうかな?」
「そうだよ。水沙だからこそ、みんなが安心して学生生活が送れている。その本当の強さは誇っていい」
「本当の強さ?」
「魔法の力が強いだけじゃ代表には選ばれなかったってこと」
「??」
言葉の意味が分からなかったのか、今度は左にちょこっと首をかしげて水沙は視線で問いかけてくる。
「そのうち分かるようになるよ」
ポンポンとまた頭を撫でると、くすぐったいように目を細めてから、水沙は少し複雑な表情をした。
「でも、強いっていうのなら、紅耶ちゃんのほうがよっぽど強いと思うけど……」
「まあ、役所の人たちには喜ばれてるかもね」
「もう、また」
笑いながらも、水沙は不思議な想いを感じていた。今更なことで、あまり気にしていなかったのだが、生徒会でありその実力は誰もが認めているこの高等部の先輩は実は魔法使いではなかった。
詩凰紅耶はあらゆる意味で有名だった。良くも悪くも……というより、悪い意味での有名なほうが多いかもしれない。
三ヶ月前、古城学園を視察するために転入してきた初めての研修生が紅耶だった。魔法使いとの共生に向けて……共生といっている時点で差別していることになっているのだが、ともかくも共生の第一歩として転入してきた紅耶に、古城学園の生徒たちは表向きは歓迎しても感情では歓迎はしてはいなかった。
魔法都市というものが作られた経緯でも分かるとおり、魔法を使えない普通の人々は魔法使いに対して良い感情を持っていない。むしろ恐れていた。元はといえば、一部の魔法使いの暴走がすべての元凶だったにも関わらず、全ての魔法使いたちがそうだと認識され、あっという間に恐怖と嫌悪が広まっていった。
そうした社会的雰囲気は当然ながら魔法使いたちの感情にも影響を与えた。魔法は生まれ持った力で、好きで魔法使いになったわけではないのに勝手に嫌悪され、しかも、強制的に魔法都市に隔離されたのだ。その怒りは簡単に恨みへと変わった。
その溝は埋まらないまま……いや、むしろそういった溝を埋めるために研修生として来た紅耶ではあったが、やはり魔法使いたちの対応は自然と厳しいものになってしまった。
万一のことも考えられ、生徒会の一員になったことも恨みを買う結果になった。そして、なお悪いことに、普通の一学生として生徒会の飾りで大人しくしていればよかったものを、紅耶は魔法使いを圧倒する力を持っていたのだ。
といっても、紅耶は魔法以上の特別な力を持っていたわけではない。ただ、身体能力と格闘術だけで魔法使いを押さえこんでしまった。
その活躍は魔法都市全域に伝わり、紅耶の存在は魔法使いたちの脅威となった。




