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(ま、わたしも似たようなものだけどね)
大人は都合によって子供をモノとして使うことがある。子供の意思は関係なく、自分たちの利益の為、あるいは保身の為、有用であればモノとして平気で使った。
様々なことが頭に浮かび、だからこそ自分とシリスが今の立ち位置にいることを改めて思いながら、紅耶は話の続きを促した。
「なにかあるの?」
「明日、転入してくる子がいるの」
「ふーん、転入、ね」
転入という言葉を聞いて、また複雑な気持ちになりながらも紅耶は背もたれに体重を預けた。
「最近、覚醒した子ってことか」
転入というのはこの学園では珍しいことだった。何故なら、魔法使いのほとんどは生まれたときに調べられており、法律で三歳以上の魔法使いはすべて魔法都市に住むことが義務づけられているからだ。
だが、稀に今回の転入のように突然魔法の力に目覚めるものもいた。
どういう理由であれ、魔法の力に目覚めた以上は魔法都市に住まなければいけない。家族や友人と別れて、強制的に……
「転入ってことは学生だろうから、成人するまで親とかまわりが黙ってればよかったのに」
実際、魔法に覚醒してもそのまま黙って生活している人間はいる。魔法の力を使わなければ普通の人間と変わりはないのだ。黙っていれば魔法都市に住むことはない。
「……っていうのは、難しいか」
自分で言った事をすぐに否定して、紅耶は外した眼鏡をたたんで机の上に置いた。
「そうね」
紅耶の否定に同意して、シリスは苦笑した。
確かに、黙ったまま生活することはできる。だが、魔法都市への強制的な居住が法律で義務づけられている以上、意図的に魔法使いということを隠していた場合は当然罰せられることになっていた。
なので、罰せられることを恐れて、親類や友人が申告することは多かった。子供は特に……
「一緒にいられなくなるのを悲しむような親が多かったら、人権的な問題をあっさり通過してこういう状況にはならなかったでしょ。逆に、是非魔法都市に住まわせてくださいっていう親もいるんだから」
法律で定めた以上、国が魔法都市を管理するのは当然だった。つまり、魔法都市に住めば国からの生活が保障されている。
なので、喜んで子供を差し出す親も現実としていた。
「…………」
紅耶とシリスはしばらく黙った。このことに関しては、一口では言いあらわせない感情がある。
「それで、今回転入してくる子は?」
「複雑。色んな意味でね」
シリスは引き出しから数枚の書類を取ると、紅耶に差し出した。




