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「もうとっくに敵でしょ、わたしは」
「…………」
今度は、翠が黙ってしまった。
「あ、翠姉の敵ってことじゃないよ」
「……そんなの、分かってる」
「うん、そだね」
妹の笑顔に、翠は視線を落とした。妹の笑顔には敵わない。
「紅耶、私は……」
「翠姉、わたしはさ」
姉の気持ちは分かっている。だから、紅耶は翠の言葉を止めて変わりに自分が話を続けた。
「自分の面倒は自分で見たいしさ。でも、どうしたって周りに迷惑かけるし。現に、今まさに翠姉にしたって」
「私は、迷惑だなんて思ってない」
「それでもだよ」
姉の視線に紅耶は苦笑した。その先を言おうとして……何と言っていいか分からず言葉を止め、何かを払うように手を振ってから紅耶は無意識に閉じていた目を開いた。
「完璧に、誰にも迷惑かけず全部一人でしようとするなら、政治的な事をするしかない。でも、逃げかもしれないけど、それはわたしのやり方じゃない」
そこまで一気に話し――紅耶は動きを止めふっと息を吐くと笑って姉に謝った。
「だから……うん、ごめん。とにかく、しばらく好きにさせて」
「……紅耶」
「多分、もう少ししたら……ううん、ちょっとどれくらい先かは分からないけど、必ず特魔へは行くから」
それがどういう意味なのか――翠は聞くことはできなかった。それはきっと、その再会は自分たち姉妹にとって幸せなことではないと分かっているから。
「分かったわ」
だから、翠はそれ以上なにも言わなかった。妹を信じる、それだけで十分だった。
だから……これ以上はなにも言わない。自分は妹を助ける。それに――
「しょうがないわね。心配しても、怒っても、あなたは昔から自分の考えを曲げないんだから」
妹なら、やり遂げるだろう。どんなことも、必ず。
「あはは、ごめんね」
言葉は出さなくても、姉の気持ちは分かっている。だから、紅耶は笑った。
「お姉ちゃん、大好き」
「……今更、そんなこといわないで」
悪戯っぽく言った紅耶に、翠はやっと妹に本当の笑顔を見せた。




