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(――だけど)
それは、自分が帰還しても同じことだ。新たな研修生が来ることになれば、シリスや古城学園の生徒が危険にさらされ、いずれは魔法都市に住む全ての人にまで危険が及ぶだろう。
だったら、自分が古城学園にいたほうがまだいい。みんなを守れるだけ、そのほうが断然良かった。
(まったく……このまま政府が何の手出しもせず大人しくしていれば、みんな笑って過ごせるようになるのに)
何事もなく今のままの生活が続けば、魔法使いと魔法を使えない人の壁は壊され、普通に暮らしていけるようになるだろう。いや、シリスがそうしていくはずだ。
魔法使いが悪いものだというのなら、魔法の力を上手く使えるように育てればいい。暴力や犯罪に使われないようになれば、魔法を使えない人々とも一緒に暮らしていけるはずだった。
そのために古城学園がある。
時間がかかるかもしれないが、いずれは魔法都市もなくなり、みんなと一緒に暮らしていける社会になるはずだ。
(……それまでが怖いんでしょ?)
研修生なんてものを作り、魔法都市を支配し管理しようとしている理由がそれだった。
シリスが中心になって、魔法使いの全てがまとまるのが怖いのだ。シリスや魔法使いたちに反抗する気がなくても、まとまり団結すれば国を一日で変えるくらいの力ができてしまうことになる。それが怖い。
(ほんとややっこしくて、バカらしい)
紅耶は内心で大きく嘆息した。みんなが望む問題の解決に向かっているのに、それをわざわざ壊そうとしているのだ。自分たちの勝手な思い込みの恐怖で。
(だからこそ)
自分とシリスがいる。だから、今ここで特魔に帰還するわけにはいかなかった。
「紅耶?」
自分でも気付かないうちに長く思索していたようだった。翠が心配そうに名前を呟き問いかけてくる。
「ごめん、翠姉。でもさ」
紅耶は内心で苦笑して翠のほうへ顔を上げると、にっと笑って話の続きを答えた。




