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「――紅耶」
部屋を出ると、リアがとてとてと近寄ってきた。
「あれ、ここで待っていたんだ、リア」
「うん……紅耶の側にいたくて。どこにいるか聞いて待ってたの」
「そっか」
紅耶は近づいてきたリアの頭を撫でると、にこっと笑った。
「遅くなってごめん。もう終ったから、学園に帰ろう」
「……うんっ」
頷くと、リアが自然と手を繋いできた。
リアの小さな手の温もりが紅耶の手を包み込む。その温もりに紅耶も優しく握り返した。
きゅっと握られた手に、リアは紅耶を見上げ――微笑んだ。
それは、リアが紅耶に初めて見せた本当の微笑み。
母を失って微笑みをなくし、父を失って取り戻せた微笑み。
そんな小さい微笑み――そして、世界で一番大切な微笑み。
(子供の微笑みほど大事なものなんてない)
それを守るために力をつけた。
そして、今の自分がいる。
だから帰ろう、あの場所へ。
古城学園へ――
「おかえりなさい、リアちゃんっ!!」
生徒会室にはいると、水沙と鈴がリアに抱きついた。
「……ただいま」
受け止め、リアも二人を抱きしめる。
「よかった、リアちゃんが帰ってきてくれて……」
「うう、ほんとによかった……」
「心配かけてごめんね」
涙を溜めながら言ってくる水沙と鈴に、抱きついた身体を離してリアは微笑んだ。
「ありがとう、水沙、鈴。そして……これからもよろしくね」
「リアちゃん……」
リアの微笑みに感動して水沙が見つめていると、嬉しさに耐え切れずに横から鈴が抱きついた。
「うんっ、もちろんだよ! これからずっと一緒だよ!」
「わっと、もう鈴」
「あ、ずるいよ、鈴ちゃん!」
「うむっ!? み、水沙、重い……」
二人の抱きつきに耐え切れずリアが尻餅をつくと、抱き合って座り込んだまま三人は笑い声を上げた。
「よかった。三人とも笑顔が戻って」
そんな三人を見て、瑞穂が微笑む。リアが帰ってくるまで、水沙は落ち込み、鈴は探しに行くと言い張って大変だったのだ。
「まったく、水沙も鈴もまだまだなんだから」
紅耶とリアよりも先に帰ってきていたシリスが、水沙と鈴を見て苦笑する。
「でも、あの優しさが二人のいいところだよ、シリスちゃん」
「それはそうだけど、もう少しわたしと紅耶を信用して安心してくれてもいいんじゃない」
「えっと……それはほら、状況を何も言ってなかったし。大丈夫っていわれてもやっぱり心配なのはしょうがないよ」
「ふふ、分かってるって、冗談よ」
慌てる瑞穂にシリスは笑って言ってから、紅耶へと視線を向けた。
「ともあれ、これでひと段落ってところかしら」
「いや、まだまだこれからよ」
シリスの言葉に、紅耶は笑って答えた。
「リアが今まで笑えなかった分、楽しい思い出をいっぱい作ってあげなくちゃ」
笑顔を守るために戦うというのなら、一緒に生活するこれからが本当の戦いだろう。
リアが笑って過ごしていけるように、ルームメイトとして一緒にこれからなにをしていこうか――
談笑するリアと水沙と鈴を見つめて、紅耶はまず今日の夕食は自分が作ろうと考え始めた。




