③王子の元婚約者、聖女が招く『魔女が行ってはいけない門の先』(前編)
しいなここみ様主催 『この部屋で○○してはいけない企画』参加作品!
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『ラブコメ×ファンタジー×禁断×両想い×秘密の部屋』の第三話!
果たして”魔女(師匠)”ツァミーナと”王子”(弟子)エリオット”との恋の行方はいかに!?
書きすぎたので前編、後編に分けました!( *´艸`)<後編はそんなに待たせしなくても良い・・かな?w
【――白き羽に 金髪なびき 乙女来る
魔の館にも 光さしぬる――】
朝。館の大窓から差し込む光――
「・・おはよう・・エリー・・うぅーん・・ふぅー・・」
珍しく寝間着姿のツァミーナが気怠そうに窓辺に立ち、伸びをする。
淡い朝日が差し込み、薄紫の髪を透かし、彼女を儚げに照らし出す。
「おはようございます、師匠・・珍しいですね・・何かありましたか?」
エリオットは既に身支度を整えていたが、その眼差しはツァミーナの髪へと自然に向けられる。
今日の彼女の長い紫髪は、いつもよりひどく乱れて、あちこちに跳ねていた。
「・・少し夢見が悪かったのよ・・そう、あれは現実ではない・・ただの夢見・・」
睫毛に美しい陰りを見せながら、何か自分に言い聞かせる様に呟く。
「・・今日はできれば、念入りにお願いしたいわ・・」
小さくため息をつき、椅子へ腰かけるツァミーナ。
「気になりますね・・師匠の夢見が悪い時は大抵・・わかりました、そういうことなら・・」
その様子を気に掛けながらも、彼女の長い紫髪を今日も静かに梳こうとブラシを取るエリオット。
姿見の鏡に映るふたりの間には、昨日と変わらぬ尊い空気が流れていようとしていた。
――その瞬間、窓に映るひとつの影。
「しぃぃつれーしまぁあぁーすぅーーッッ!!!」
ガッシャャーーーン!!!
突如として大窓が粉砕され、白い翼を広げたペガサスが館に飛び込んできた。
舞い散る硝子片と共に、金髪の少女がひとり床に転がり込む。
――ペガサスとは、心清らかな乙女しか乗ることを許されぬ幻獣。
「はぁっ、はぁっ・・! ツァミーナ様、エリオット殿下っ・・一大事でございます!!」
息も絶え絶えに言葉を紡ぐ”聖女”――セレスティア。
「・・今までも邪魔されることはありましたが、まさか“人としてのマナー”さえ忘れられているとは思いませんでしたよ・・」
エリオットは眉ひとつ動かさず、冷ややかに告げる。
「・・セレスティア・・命が惜しくば、二度と私の髪を梳く時間を邪魔しないことね・・」
ツァミーナの紫の瞳が細まり、低くく吐き捨てられた。
常にクールな師弟が怒りに声を張り上げることはしない。
――ただ、相手を絶望へと突き落とす絶対零度の空気を放つだけ。
ふたりは大事なルーチンを破った不届き者へ、反射的に“殺意の籠った視線”を突き刺した。
普段のセレスティアならば「ひぃぃぃ!?」と悲鳴を上げるか、腰を抜かして泣き出すか、気絶しているのが常。
「もはや時間は残されておりません。ツァミーナ様、殿下――どうか、お力をお貸しください!」
だが、今日の聖女は震えることもなく、涙すらにじむ蒼い瞳で必死に訴えた。
普段の無駄にフリルが多い衣装とは違い、動きやすそうなズボンスタイルの姿。
しかし、”太陽の様な”と称される美しい金の髪はボサボサに乱れ、身体のあちこちには擦り傷や小さな歯型、服には様々な絵の具の様な汚れ、食べ物のカスが付着しているようであった。
そのただならぬ気配に、魔女と王子は瞬時に事態の大きさを予測する。
聖女の告げた言葉は――。
「お願いです、ツァミーナ様、エリオット殿下。どうか一度だけで構いません・・孤児院に来ていただけませんか?」
――仮にも”聖女”と教会から公式に認められたはずの少女が、床に頭をこすりつけるような体勢をとる。
「何かと思えば・・孤児の前で魔法を見せろということ?・・子どもの慰みものに私はなりたくないわ。」
聖女セレスティアの必死の願いにも関わらず、ツァミーナは露骨に顔をしかめた。
「そこをナントカお願いします!・・あの子たちは、親を魔獣に奪われました。住んでいた村も焼かれ、帰る場所も縋る人さえないんです・・」
顔を上げたセレスティアは目に涙を湛え、悔しそうに唇を噛みしめて訴える。
「だから、誰の手にも負えないぐらいに心が荒れてしまって・・私も精一杯に頑張ったのですが・・力が足りませんでした・・」
行く先々で”一生懸命に頑張る”この少女が、並外れた努力家なのを2人は知っているが……。
「明らかに場違いだわ。・・魔獣に家族を奪われた子どもたちに、魔女の私が何を見せられると言うのかしら。」
きっぱりとした拒絶。
世間一般では、魔獣は魔女が産み出したという風潮もある。
「・・なるほど、事情は飲み込めました・・僕自身としては断る理由はありませんね。」
だが、その隣でエリオットが静かに言った。
王位継承権から遠く、また異貌の王子であるが故に疎まれ、利用され、命まで狙われたことがある彼。
「・・師匠。貴女は僕に”暗い心は魔獣を産み出す元となる”、と仰っていましたよね?・・それにそういった子たちは犯罪にも晒されやすいと・・」
紫髪の魔女を見る、何かを懐かしむようなエリオットの優しい口調。
孤児たちのことが他人事には思えなかったのだ。
「あ、ありがとうございます・・エリオット殿下はいつも優しいですね~」
ぱぁ~っと、お日様のような笑顔を浮かべた金髪の少女の頬に、微かな赤みが射す。
「・・貴方のそういうところが卑怯なのよ・・特に、ふたりきりなんて・・」
エリオットの言葉と視線、セレスティアの反応にツァミーナは表情を隠すように横を向き、ほんの少しだけ沈黙する。
「・・わかったわ・・魔女と王子、私たち二人が行かないとダメなのね・・」
やれやれと言わんばかりに、ツァミーナは深くため息をつく。
「その代わり、”聖女”セレスティア・・貴女には私の言う事をひとつだけ聞いてもらうわよ・・いいわね?」
真っ直ぐに向けられた魔女の眼光が鋭く、聖女を睨みつける。
「あ、はい!、それはモチロンです!・・私にできることであれば何でも!」
セレスティアは、千切れんばかりに頭をぶんぶんと縦に振り続けた。
「・・師匠の言う事を聞くということは、大抵、死にかけるような大変な目に合わされることになると思いますけどね・・」
聖女に向けられたエリオットの双眸――蒼と金のヘテロクロミアが同情めいた色を浮かべる。
「えっ!?・・あわわわ・・・」
セレスティアの肩が小さく跳ね、ぞわりと身震いした。
――そして――
「それはそうとして・・」「そのことは置いておいて・・」
もちろん”朝のルーチン”を邪魔されたふたりの怒りはまだ収まらない。
「・・大きく割れた大窓をキレイに直すのは・・」
「・・散らばった窓の欠片も綺麗にするのは・・」
「別ですからね?」「別ですよ?」
ヒヤリと冷たい二人の声がぴたりと重なった。
「ひ、ひゃい!、そ、それはトーゼンでひゅから・・!」
彼女は情けない声を上げながらも、心の中では安堵の笑みを浮かべる。
――この魔女と弟子が背中を押してくれた。
それだけで世界を相手に戦えるほど心強く、セレスティアには思えたのだ。
けれど。
ツァミーナは割れた大窓に視線を投げたまま、ほんの僅かも表情を和らげてはいなかった。
紫の瞳は遠くを見つめ、薄い唇は堅く結ばれたまま。
大窓から吹く風に髪を靡かせる彼女の心に去来しているものが何なのか……
その時のエリオットには、まだ分からなかった。
【――そうして訪れた孤児院――】
「・・師匠、ここですよ。」
大きな背負い袋を下げ、先に歩みを進めるエリオットにツァミーナは怪訝な表情を隠さない。
古びた木の建物、ひび割れた壁。
「騙されたわ・・”孤児院”と聞いて来てみれば・・ここは教会”の敷地内じゃないの・・」
教会と孤児院のどちらが先に建てられたのか・・そんな疑問も無意味なほど、共にみすぼらしく小さな建物。
「確かにそのようですね。・・師匠、嫌そうな顔をしすぎです。」
隣で小声で注意するエリオットに、ツァミーナは眉を寄せた。
「やっぱりエリー、私は場違いよ・・どこの世界に”魔女を招き入れる教会”があるものですか・・」
一応、”慈愛の神マナーパを祀る教会”であることが影響しているのか、それとも受け入れられない事柄によるものか・・”紫髪の魔女”として世に名を馳せるツァミーナは軽い眩暈と頭痛を感じていた。
「場違いかどうかは、ここにいる子どもたちが決めることですよ。」
エリオットの声は淡々としていた。
「・・私は子守のために生きているわけではないのよ・・弟子ならば分かってくれるわよね、エリー・・?」
珍しくツァミーナの口から弱音に似た声が漏れ出る。
「もちろん分かっていますよ、ツァミーナ様・・師匠は子守ではありません。ただ――」
エリオットの声は相変わらず淡々としていたが・・
「貴女はいつも“弟子の成長を見守るのが師の務めだ”と言っていましたよね・・たまには弟子の願いを聞いて下さるのも、良い師弟の関係であるかと。」
その目の奥には確かな想いが宿っていた。
「・・まったく、毎回あなたの頼みは断りづらいわね、エリー・・」
その言葉に押されるように、ツァミーナが粗末な作りの門をくぐった瞬間。
「よくいらしてくださいました! 子どもたちもきっと喜びます!」
ふたりに気付いた”聖女”セレスティアが、泥だらけのまま満面の笑顔で迎える。
その様子に気付いた中庭で遊んでいた子どもたちの足音が止まり、暗い瞳がこちらを向く。
手にはセレスティアに投げつけていたであろう泥団子。
館の大窓を突き破って来た時も、聖女はヒドイ有り様だった。
自分たちを守ってくれなかった”聖女”――孤児たちの感情を、この少女は受け止めようとしているのだ。
「みなさ〜ん、集まってくださ〜い!」
セレスティアの声にしぶしぶ泥団子を落とし、粗末な服装の子どもたちが集まってきた。
孤児院の子どもたちは最初、魔女のツァミーナを見ると怯えたように一歩退いた。
「・・本物の魔女だ・・」「・・魔女って、魔獣と・・」
囁きあう小声。
紫の長い髪を風に揺らす彼女の姿は、子どもにとっては恐怖と伝説の象徴だった。
「す、すいません! 実は・・その・・子どもたちにおふたりのことを話してしまって・・」
明らかな子どもたちの様子に、聖女セレスティアが慌てたように弁解する。
「魔女さまや殿下のお力を話したら、子どもたちが・・“ウソだ〜! ほんとにそんな人いるなら会わせろ〜!”って・・うぅ・・わ、私が勝手に言ったのが悪いんです・・」
目を潤ませながら、セレスティアは言葉を続けた。
「以前、ご高齢の神父様がおひとりいらっしゃったのですが・・少し前に天へ召されてからは、お世話が行き届かず・・」
しゅんと肩を落とす聖女に、ツァミーナの冷たい視線が突き刺さる。
その無言の眼差しは「魔女を何だと思っているの?」と雄弁に不満を語っていた。
「ひぃっ・・!」
セレスティアの肩が小さく震える。涙が今にもこぼれそうだ。
そんな彼女の様子を横目で見て、エリオットが小さく苦笑する。
「・・師匠。そんなに冷たい目を向けては、聖女殿が泣いてしまいます。」
「毎回この程度で泣き出すなんて、聖女の名が泣くわよ。・・まったく。」
ツァミーナはセレスティアから目を逸らし、あえて冷たく返した。
「勘違いしないで。私はただ、ここにいる”エリオット殿下”に頼まれたから来ただけなのだから。」
あくまで王子である”エリオットの命令で孤児院に来ている”――だから、アナタたちには危害を加えない。
そう端的に、ツァミーナは言葉と態度を子供たちに示した。
「・・・・・・・・・」
しかし当然、子供たちの目には好奇心も笑顔もなく、ただ『喪失』の影が根強く宿っている。
「ここにおられる”紫髪の魔女”ツァミーナ様は、僕の魔法の師匠でもある方だ。・・師匠、簡単な魔術を見せてあげてくれませんか?」
そんな暗い雰囲気の中、”エリオット王子が魔女ツァミーナに”片目をつぶり、合図する。
ツァミーナは心の中で(面倒なことになったわね・・)と呟きながらも、杖を軽く振った。
「あ!・・すいません、ツァミーナ様・・ありがとうございます!」
少し離れた場所にいたセレスティアの身体を輝く魔法の輪が通過すると、泥だらけだった衣服が下ろしたてのように綺麗になった。
「・・別に・・次の仕掛けのためよ・・」
にこりともしない仏頂面のツァミーナが、大きく杖を振った。
それに続けて中庭に小さな光の花が咲き乱れ、子どもたちの目が大きく見開かれる。
「・・きれい・・!」「お花が光ってる!」
驚きの声が漏れ、幼い手が光に伸びる。
「・・あっ・・!」「・・消えちゃった・・」
簡単な幻の魔術――物理的な力が働けば、たちまち霧散してしまう低級の技。
儚い夢に、また子供たちの瞳が曇り始めてしまう。
「魔法というものは繊細なものだからね・・ならば次は確かなものを――」
その空気を察したエリオットが、背負い袋をセレスティアに渡し、一歩前に出る。
「私の体術と剣技を少し見せましょう・・聖女様、”次の準備を”お願いしますよ。」
そう言うと、エリオットは腰の剣を抜き放ち、空へ向かって一閃した。
研ぎ澄まされた刃からほとばしる光が、陽光を反射して煌めく。
「すごい・・!」「飛んだ・・!」
そして宙返り、壁蹴り、回転しながらの剣捌き――剣士でありながら体術の冴えを見せつけるその動きに、子どもたちの瞳が丸くなる。
「聖女殿。愛剣に、聖別の加護を。・・その後、渡したモノを取り出して下さい。」
徐々に歓声が大きくなっていく中、エリオットはセレスティアに視線を送った。
「・・はっ!?・・は、はいっ!・・剣に宿れ、慈愛の力よ!」
ぽや~っとエリオットを見つめていたセレスティアが、慌てて祈りを捧げる。
エリオットの剣身に”慈愛の神マナーパ”の力――淡いピンクの光が宿る。
「よし!・・次は、これですね・・ガサゴソっと・・」
神聖魔法を発動させたセレスティアが、エリオットから渡された背負い袋の中から何かを取り出す。
「・・うぁ・・」「・・ブキミー・・」「・・ヤバィ・・」
それは禍々しい黒紫の見た目の大きな果物。
「ツァミーナ様が育てたものです。瘴気を吸い上げ、清浄へと変える果物・・セレスティア、投げて下さい!」
エリオットがそう説明した後、言葉通りセレスティアは果物を高く宙へ投げた。
「はっ!!!」
――次の瞬間、彼の剣が閃光のように走る。
目にも留まらぬ速さで果実は空中で細やかに切り分けられ、見事にエリオットの持つ器へと落ちていった。
「……っ!」「すごい!」「見えなかった!」
子どもたちは息を呑む。
「・・見た目に反して、中身は甘美。・・念のために聖別の加護をかけていただきましたが・・」
剣を収めたエリオットが切り分けた赤い果肉を手に取る。
「毒などではないと示すために、まずは私が食べましょう。」
そう言って口に運ぼうとしたその瞬間――。
「んぐっ、もぐもぐもぐっ・・んんんーっ! あまっ!!」
セレスティアが横から果実を丸ごと口いっぱいに詰め込み、頬をリスのように膨らませていた。
「セレス!?・・お、おま・・!?いつの間に!?」
「せ、聖女さまがっ!?」
呆気に取られるエリオットと子どもたち。
しかし、セレスティアが幸せそうに「おいし〜〜!」と笑ったことで、彼らの顔に安心の色が広がる。
「美味しいものを見つけた時の速さは変わらないな・・まだ沢山ある、みんな順番に並んでくれ。」
今までの礼儀正しい口調から親しみやすい口調に代えて、エリオットが笑顔で子どもたちに声をかける。
「・・うわっ、ウマっ!?」「・・ジューシー!?・・」
次々と喜んで赤い果実を口にする子どもたち。
甘美な味に、みんな頬をほころばせる。
「・・あの~・・私の分は~・・」「・・当然、さっき食べたからナシだ。」
聖女らしからぬセレスティアの食い意地に、呆れかえるエリオット。
そんなやり取りを見て、子どもたちから大きな笑い声があがる。
――ただ、その笑顔の輪から離れている影がひとつ。
「・・魔獣は瘴気から産まれる・・魔女はその瘴気を浄化するのが本来の役目なのよ・・」
輝くような王子と聖女のふたりを見ずに、ツァミーナがぽそりとつぶやく。
――しかし――
「ありがとう、魔女さま!」「こんなおいしいの初めて!」
口の周りを赤い果汁でベトベトにした子どもたちがツァミーナに駆け寄る。
「・・別に私は実験の成果を確かめたかっただけ・・」
先ほどまでの暗い色が嘘のような、夜空に輝く星のきらめきを瞳に映した子どもたち。
その思わぬ感謝に、ツァミーナは驚いた。
「・・汚れるから、私の傍に寄らないでくれるかしら。」
ふと胸の奥が熱くなるのを感じたが、淡々と語り、コッと杖で地面を叩いた。
子どもたちを魔力の輪が通過すると、先のセレスティアのように口の周りや薄汚れた服もキレイになった。
「・・うわぁ!」「・・すんげぇ~!」「・・跳ねるぞ!」
更に中庭の地面全体が、魔法の影響でゴムのように弾む。
氷の結晶が舞い、水の精霊が小さな姿で踊り出す。
花々の幻が庭を彩り、子どもたちは歓声を上げて追いかけた。
今度の魔法は、子供たちの幼い手で触れても消えなかった。
(・・この子たちは、ただ安心したいのね。明日が来ると信じたいのね。)
その様子を心の声とは真逆に、ツァミーナは腕を組みながら、冷ややかに見ていたが――。
「師匠。・・ここまでやるとは、”計画”にありませんでしたが?」
無邪気に遊ぶ子どもたちを横目に、エリオットがツァミーナに近付く。
純粋な心に触れたためか、普段のクールな彼から想像できないほどのにこやかな笑み。
「・・エリーの当初考えた、”魔女の館に孤児たちを招待する”、よりはマシだわ・・私の果樹園が丸裸になるじゃない。」
彼の笑顔に視線を合わせず、ツァミーナはくるくると自分の髪を指で遊ばせる。
「・・時間はかかるでしょうけど・・エリオットとセレスティアだけいれば、魔女の出番なんてなくても良かったのではなくて?・・元幼なじみで元婚約者なのだから・・」
自分に向けられる笑みに対して、つい不貞腐れたような声を出してしまうツァミーナ。
「だけど、ここまでは出来なかったでしょう。・・信じていました・・師匠の力は、暗い絶望の中にある、輝く希望の光になれると・・」
エリオットの声には、いつもとは違う熱が籠っていた。
自分とセレスティアの過去など、何も関係ない。
――まるで”エリオット”にとって”ツァミーナ”がそうであった、と言わんばかりに。
「……っ。」
その熱が伝播したのか、ツァミーナの胸に言葉にできない熱が広がった。
思わず髪を弄んでいた指を止めて、彼の瞳を見上げてしまう。
そこにあったのは優しいながらも、明らかに”師弟の関係”を超えてしまいそうな”ひとりの男性”としての瞳。
「・・エリオット・・」
「・・ツァミーナ様・・」
ふたりの視線が交差する。
――その瞬間、ふたりの間に入る影。
「・・やっぱり来ていただいてよかった。あの子たちに、希望をくれてありがとうございます。」
セレスティアが小さく涙を拭いながら、ツァミーナとエリオットを見つめて言った。
(後編に続く)
・・えーっと聖女セレスティアへの苦情は、お手柔らかにお願いします・・(。-人-。) ゴメンネ




