『師弟はイケナイ部屋♡』①クールな師弟は素直じゃない。
しいなここみ様主催 『この部屋で○○してはいけない企画』参加作品!
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私が書くのは、『ラブコメ×ファンタジー×禁断×両想い×秘密の部屋』!
これは、そんなお話です。(*´▽`*)<長編になってしもうた・・(爆)
轟音とともに、大地を揺らすような咆哮が響き渡った。
漆黒の魔獣――その巨躯は城壁を破壊し、炎を吐き、並み居る兵士や魔術師たちを次々と薙ぎ倒していく。
盾は砕け、魔法障壁は紙のように破られ、ローランド王国は今まさに崩壊の淵に立たされていた。
「・・くそっ、誰か!誰か止められないのか!?」
騎士団長の叫びも虚しく、誰もが絶望に立ちすくむ。
「戦列を立て直せ!負傷者は後ろにまわせ!・・ここは”我々”に任せてもらおう!」
その時――白銀の髪を風に揺らし、一人の青年が魔獣の前へ躍り出た。
「まさか・・エリオット殿下!?」
ざわめく声が兵士たちから漏れる。
服越しでもわかるしなやかな筋肉――決して見かけ倒しの逞しさではない、鍛え抜かれた身体。
その銀髪の顔立ちは彫刻のように整っていたが、左右の瞳の色が異なる――蒼と金のヘテロクロミア。
その異彩は神秘を纏い、人々の目を奪う。
白銀の髪を風に靡かせ、単身で魔獣へと疾走する青年、エリオット=ローランド=グランツ。
彼はここ、ローランド王国の王子であった。
しかし、王位継承権は低く、王族の中ではほとんど顧みられぬ存在。
王子は魔獣の嵐のような連撃を自らが握る剣で防ぎつつ、異貌の眼で捉えた紙一重の間合いで攻撃を回避していく。
その舞踏のような完成された動作の全てが、戦場に立つ者たちの目を引き付けていく。
「グォォォォッ!!!」
苛立った魔獣が咆哮と共に、男性の腰回りよりも太い剛腕で、王子を叩き潰さんと跳躍する。
しかし、王子は冷静に剣を地面に突き立て・・
「――封縛の環よ、我が血を鎖と成せ!!」
両の腕を広げ、魔力を込める。
その整った顔立ちからは想像できないほどの力強い詠唱。
空気が震え、白銀の鎖が地を這い、無数に伸びて魔獣の四肢を絡め取った。
「おおっ・・す、すげぇ・・!」
「あの魔獣を止めている・・!・・流石は、銀鎖の王子!」
兵士や魔術師たちが驚愕と歓声をあげる。
王族でありながら、彼は政治の世界や表向きだった軍部ではなく、魔獣討伐の道を選んだ男だった。
「――我が名は宵闇を裂く者。
古の契りに従い、天に座す光よ、我が詠に応えよ。」
その背後の高みから――澄み渡るような清らかで荘厳な女性の声が響いた。
「あれは・・薄紫の魔女、ツァミーナ様!」
負傷者の救護に当たっていた金髪の聖女が、黄昏の空に浮かぶ女性の姿を見上げる。
――森を裂いて吹く風も、その存在に触れれば沈黙する。
ツァミーナ・マルヴァ。
その名を知る者は、誰もが敬畏と畏怖を込めて、その名を口にする。
薄い紫の髪は月明かりをすくい取ったかの様に煌き、その髪先にすら魔が宿ると囁かれ、ひとたび目の当たりにすれば、見た者の視線を捕らえて離さない。
その肌は冬を閉じ込めた大理石のごとく白く、長い年月を生きてなお衰えを知らぬ。
整った頬の曲線は、冷徹と慈愛を同時に孕み、眼差しは漆黒の深淵にも似て、ただ覗き込むだけで心を見透かされる。
纏う衣は黒曜のごときローブ。
胸元を大胆に切り落とすその仕立ては、彼女の意志か、あるいは孤独に抗う最後の矜持か。
豊かに形づくられた女の肢体は、威厳の仮面の裏に隠した魅惑の証であった。
けれど、彼女の姿に卑俗な艶やかさはない。
そこにあるのは、女の恥じらいを遥かに超えた『神秘』。
――触れれば朽ち、遠ざかれば慕わしくなる、魔そのものの気配。
齢二百に及ぶその魂は、孤高の塔に咲き続ける一輪の花のよう。
幾多の時を経てもなお衰えぬ美は、もはや人の時を離れた『象徴』となり、見る者に畏敬を抱かせる。
彼女は微笑まない。
けれど、その沈黙の横顔が、月よりも冴え冴えと美しい。
――ツァミーナ・マルヴァ。
その名こそ、魔女という存在の究極の象であり、恐怖と混乱の只中にあってなお、魔女の存在感は異質であり――美しかった。
「随分と・・遅いですよ、師匠!」
ギシ、ギシ……。
魔力で編まれた銀鎖に走る亀裂。
魔獣の渾身の抵抗に砕け散る寸前の軋む音。
「ぐっ……ぬぅぅっ!」
王子の額から汗が滲み落ち、歯を食いしばって必死に耐える。
「闇を喰らう獣を浄め、炎を灰に、影を無に還せ――」
弟子である王子の奮闘する姿を眼下に見下ろす、旋律にも似た、美しい詠唱。
それは祈りのようであり、呪いのようでもあった。
詠唱が続く中・・鎖が砕け散る!
解放された魔獣が牙を剥き、振りかぶった爪が王子を引き裂こうと迫る。
周囲から絶望の悲鳴があがる。
「――光よ、降り注げ。《天墜光葬》!」
次の瞬間――魔女が最後の一節を紡いだ。
天を割るほどの光が降り注いだ。
轟音。
白炎のような聖なる輝きが魔獣を包み、その巨体を焼き尽くしていく。
断末魔の咆哮も光に飲まれ、やがてその姿は跡形もなく消滅した。
静寂。
地を覆っていた影は晴れ、闇を照らすのはただひとり――残光を纏って地上に舞い降りる魔女の姿だった。
その姿は、恐ろしいほど美しかった。
魔獣の残滓は灰となり、冷たい夜風に散っていく。
戦場には日常の静寂が戻った。
「・・終わったか・・ふぅ・・」
鎖を維持し続けた王子は、荒々しく息を吐き捨て、疲労のためか膝を地面につきかけた。
――紫髪の魔女がわずかに手を伸ばしかけた、その瞬間。
「エリオット殿下! ご無事ですか!」
金の髪を翻し、青い瞳を煌めかせて駆け寄ってきた令嬢がいた。
人々から“聖女”と讃えられる貴族の娘である。
王子の表情は、影になって見えない。
「・・アレぐらいの魔獣を抑えきれないなんて、私の弟子失格ね。」
聖女が王子の腕を取って支え上げると、魔女は伸ばしかけた手を引っ込め、冷たい笑みを浮かべた。
「そんな出来損ないの弟子を持っていたら、私の魔女としての名が穢れるわ」
声は氷のように鋭く、冷酷に響いた。
その言葉に兵士たちが息を呑む。
聖女は「まあ・・!」と顔を強張らせ、王子を庇うように抱き寄せた。
「っ・・もう大丈夫です、聖女様。」
しかし王子はその手を振り払い、俊敏に立ち上がった。
「それよりも何ですか、あの長ったらしい詠唱は? もっと短縮できたでしょう?」
銀の髪を乱し、険しい目で魔女を見据える。
「この僕が魔獣を拘束しなければ、後ろでのんびり控えていた師匠も、とっくに餌食になっていたでしょうね?」
その整った容貌と声ゆえに、その言葉は挑発的とも思えた。
「ふふふっ・・あの程度の魔獣なんて無詠唱の一撃で消せるけれど、辺りに汚らしい破片が飛び散るのがイヤなだけ・・」
その言葉へ応酬するかのように、魔女が王子へ「それぐらい弟子として理解していないのかしら?」とでも言うような態度を摂る。
・・・ゴゴゴゴゴゴ・・・・
「・・・!?」
兵士たちの顔が一斉に強張る。
「お、おふたりとも、どうかお止めく・・ひぃぃ!?」
聖女が慌てて間に入ろうとしたが、王子と魔女の間に渦巻く濃密なマナの気配に、誰も踏み込めなかった。
「聖女様と言えど、これは我ら師弟の問題・・口出し無用に願います」
「女に助けられるひ弱な弟子は、エリオットじゃなくて、”エリー”って呼んだ方がいいのではなくって?・・ねぇ、聖女様?」
むしろ、敵対した魔獣よりも強い敵意をふたりから感じた聖女は、腰を抜かしてしまった。
まるで、二人の戦いが始まるかのような――そんな圧迫感。
天才と呼ばれる王子と、稀代の魔女と呼ばれる者同士が戦えば、先の魔獣による被害など・・
ふたりの視線に支配された周囲に張り詰めた氷のような雰囲気が走る。
・・だが実際には・・・
魔女の心臓は締め付けられて破裂しそうで、王子の心臓もまた鼓動が熱くて仕方がなかった。
(・・っ、な、何を言ってるの私!? 冷たすぎた!? 本当は弟子がケガをしないか、冷や冷やして見てたけど、その戦う姿に見惚れていたとか・・ああ!でも本音なんて出せるわけない!?)
(・・な、何を言ってるんだ僕は!? 師匠はちゃんとタイミングを見計らって僕を巻き込まないように魔法を放ったのに・・誰よりも美しい師匠の功績を讃えたいのに、あんな言い方を!?)
「「ふふふふふっっっ・・・」」
互いに心の奥で悶絶しながら、外面だけは完璧な冷笑を装い続けていた。
「あわわ!?どうして、こうなっちゃうの・・・(´;ω;`)ウゥゥ」
聖女はそんなこととは露知らず、王子の『ピンチを演出することで師匠の気を惹こう作戦』と、魔女の『ウチの弟子ってスゴイでしょ?カッコイイでしょ?作戦』を邪魔してしまったのであった。
・・これは、そんなお話です。
さて、どれぐらいで『〜してはいけない部屋』が『師弟はイケナイ部屋♡』になるのか・・
気長にお待ちくださいw( *´艸`)←マテ




