アッシュポート再訪
【前話までのあらすじッ!】
国王ガチ逝去! 悪魔王フラグ確定! 地獄のタイムアタック第二ラウンド、マジで強制スタート! いざ、涙と希望を胸にエモエモな出発の朝!
【第十三話 スタート!】
夜明け。
眩しいくらいの朝日が、俺たちの拠点、いや、もうエモくて感傷的だが「元」拠点と呼ばせてくれ、『こころ茶屋』の障子を黄金色に染め上げてる。出発の時だ。クソッ、こんな別れのシーンは泣けるに決まってるじゃねえか、中身はまだ枯れた爺の合わせ技なんだからな、チクショウ。
「ジンお兄ちゃん、リリスさん、セラさんたち…マジで気をつけてね…なの! 絶対、絶対無事に帰ってきてね! 約束なの!」
玄関先で見送ってくれるのは、俺の心のオアシスであり最終防衛ライン、天使の双子、リリアとマリア。その潤んだ大きな瞳、マジで反則中の反則だろ…。アイ◯クライ◯ーにしか見えん
爺の涙腺にダイレクトアタックとかやめてくれ! マジで効く!
「エル姉様への手紙、絶対に絶対に届けてなの! ジンお兄ちゃんなら絶対大丈夫だって信じてなの」
マリア、お前もか! ダブル天使の涙目ウルウルアタック、効果は抜群すぎる! ぐぅっ…!
爺の涙腺、完全にダム決壊! 洪水警報発令中! だらしねえ!
「…ああ、任せておけ。必ず戻ってくる。そん時は、超絶ヤバい土産話と、お前らの姉ちゃんも一緒に連れて帰ってきてやるから。だからお前たちも、いい子で元気に待ってるんだぞ。巫女さんたちの言うこと、ちゃんと聞くんだぞ? 約束だからな」
思わず手が伸びて、二人の柔らかくてサラサラな髪をくしゃっと撫でちまう。
リリア&マリア:「「うん!! 約束なの、ジンお兄ちゃん!」」 最高の笑顔! 天使! やっぱりお前らはガチで本物の天使だ!
「リリアちゃん、マリアちゃん、マジで元気でなー! またすぐ会えるって信じてる!」
「なんかヤバいことあったら、うちらの名前を大声で叫べば、音速で駆けつける…かも!」
「寂しくなったら、この飴ちゃん舐めときな! 甘くて美味しい特別なヤツだから! アゲてこ!」
「………また……絶対……一緒に遊ぼうね……待ってて……約束……だよ……」
「ちゃんとご飯食べるのよ! 野菜も残さずにね! 大きくなるのよ! スタイル良くなれ!」
LJKどもも、それぞれの会話を交えつつ、双子に別れを告げている。
いつもよりちょっとだけしおらしいのが、またギャップ萌えでグッとくるじゃねえか。
ミャウリ:(双子の足元でスリスリ、ゴロゴロしながら別れの挨拶)「ミャー…(いい子にしてるニャ。ジンたちのことはアタシがしっかり見張ってるから心配いらないニャ。まあ、ジンはちょっとアレだけどニャ。多分ニャ)」
巫女さんたち:(深々と頭を下げて)「道中のご無事を、心よりお祈り申し上げます! お店のことはどうぞお気遣いなく!」
ジン:「よし、行くぞ! 目指すは港町アッシュポート! そっから船で中央大陸へ渡るぞ!!」
振り返らずに歩き出す。
道中。またしても街道歩きだ。
でしょうね。
ニニギの豊かな自然が目に染みるぜ。
澄んだ空気、どこまでも続く緑の草原、遠くに見える荘厳な霊峰…。
数日前、双子を助けるためにこの道を必死で進んだ時は、こんな景色をゆっくり眺める余裕なんて全くなかったな…。
ミリア:「うおー! やっぱ外の空気マジうめー! シャバ最高! パリピ気分! ずっと茶屋に引きこもってんのはマジで性に合わねえわ!」
大の字になりたいのを必死で我慢してる感じだな、この元気脳筋まっしぐらギャル娘。今にも踊りだしそうだ。
踊れ!
ノラ:「わぁ! 見てください、あそこに大きな虹が! 雨も降ってないのに、すごーい! 超きれーい! 映える~!」
指さす先には、鮮やかな七色の虹。
心が浄化されるようだ。
ミカ:「………ふわふわの……白い雲……大きい……見てると…お昼寝……したくなる……きもちよさそう……むにゃ……」
とろーんとした眠そうな目で空を見上げてる。
寝てろ可愛い。
「おいお前ら! はしゃぐのは結構だが、周囲への警戒は絶対に怠るなよ! キョロキョロしすぎだって! いつ追手が来るか分からん状況だってこと、マジで忘れるな! いいな! 分かったか!」
つい爺くさい説教が口から出てしまう。
セラ:「はいはい、キモジン爺、分かってますってばー。言われなくてもちゃんと警戒してますぅー。…ねえ、」
ジン:「なんだ? セラ、何か御用でも?」
その時
ザッ! ザザッ! バサァッ!
街道脇の茂みが大きく揺れて…やっぱりキタァァァァァ! フラグ回収早すぎんだろ常識的に考えて! しかもなんか既視感が凄い! またお前らか!
「見つけたぞ! まさかこんな所までノコノコと戻ってくるとはな! バカなの? それともよほど死にたいと見える!」
黒ずくめのローブ!
胸元には黒曜の蛇の禍々しいエンブレム!って
アピってどうする?バカなのか?
ただ 間違いねえ! また追手だ!
しかも今回は、なんかデカくて緑色の粘液をベチャベチャ撒き散らしてるキモい芋虫みたいな変異魔物も数体引き連れてやがる! ワンパターンか! 芸がないぞ! 嫌がらせか!
黒曜の蛇リーダー(前回とは違うが、やっぱり小物臭がプンプン漂う甲高い声)
「まさか本当にユメノサトから再びアッシュポート方面へ向かっているとはな! 我々を舐めているのか! ! 全員ここで無様に死んで、我らが偉大なる『あの方』への良き贄となるがいい!」
ジン:「チッ…! 早速のお出ましかよ、しつこい蝿どもめが! ストーカーかてめえらは! 追跡ご苦労さん! 数は…十数体ってとこか。よし、ちょうどいい! ウォーミングアップには最適だな! お前ら! 数日前の温泉郷での初陣、そしてアッシュポートでのデビルシザー戦の反省を活かせよ! 連携重視! 油断は禁物だ!」
LJK一同:「「「「「キモ!!」」」」」
即座に臨戦態勢! うーん清々しいいい返事だ!
戦闘開始!
今回も俺がガンガン前へ出てヘイトを集める!
いつまでも爺気分じゃいられねえからな!
若返ったボディを活かさないと!
ジン:「俺が前衛のデカブツを引き受ける! ヘイト管理は任せろ! その隙にお前らで後方の雑魚と指揮官を確実に、そして華麗に仕留めろ!」
一番デカい緑色の粘液芋虫モドキに突貫!
速い! 前回よりさらに体が軽い気がする! 剣を振るう!
ギャリィィン!
硬ぇ! クソ硬ぇぞこいつ! 見た目によらず外殻が超硬質化してやがる! しかも粘液キモい! だが!
ジン:「(なら! 力と技と気合で無理やり押し切るまでじゃあああ!)」 剣に黄金色の魔力を集中させる! 刀身が眩い光を放つ!
「喰らえやァァァッ!!」
ズバァァァン! 硬い外殻ごと、粘液まみれの芋虫モドキを綺麗さっぱり真っ二つ!
よし! 手応えあり! 気持ちいい!
ミリア:「うぉっしゃあ! ジンに負けてらんねえ! アタシの筋肉美と大剣捌きで魅せてやるぜ!」 大剣を竜巻のように振り回し、連中を薙ぎ払う! 相変わらずパワフル! そしてそのダイナミックな動きでチラ見えするお腹と太もも! グッド! 非常にグッド! 元気印最高!
セラ:「詠唱完了! 裁きの雷よ、我が敵を貫きなさい!」
無数の雷の槍が嵐のように降り注ぎ、正確に魔物を貫く! さすがリーダー!
クールビューティー! ドレスのスリットから覗く白く長い脚線美も最高! 眼福!
リナ:「敵の死角へ回り込みます…急所を狙って…確実に仕留めます!」
短剣(?)を逆手に持ち、影のように素早い動きで敵を翻弄! 暗殺者かお前は!
そのぴっちりスーツでのアクロバティックな動き、マジでエロすぎ! ありがとうございます!
ノラ:「ミリアちゃん、危ないです! 守ります!
回復しますね!」
戦況を的確に把握し、味方を完璧に支援!
回復だけじゃないぞ! その優しい声だけで俺のHPもMPも精神力も全回復する! マジ天使!
ミカ:「………邪魔……する子は……深く…静かに…眠ってなさい……」
広範囲の強力な睡眠魔法!
敵がバタバタと気持ちよさそうに(?)永遠の眠りに落ちていく! えげつない! さすがミカちん! そのギャップがたまらん! 無表情からのえげつなさ!
ジン:(内心:おぉ! すげえ! 前回よりも明らかに連携がスムーズになってる! 数日でここまでレベルアップしてるじゃねえか! 俺が細かい指示を出さなくても、ちゃんと状況判断して最適な行動を取れてる!)
リリス:(後方から優雅に弓を引き絞り、寸分の狂いもない精密な狙撃でLJKたちの死角を的確にカバー)「皆さん、素晴らしい連携ですわ♪ 見違えるようですわね。これなら安心ですわ。でも、油断は禁物ですよ? ♪」
女神スマイルで的確な忠告! さすが女神!
その微笑みだけで百人力! 戦場の女神!
ミャウリ:(俺の肩の上で優雅に毛繕い…してるフリをして、敵の魔法発動を地味に妨害してやがる!?)「ミャ?(雑魚ばっかりニャ。退屈すぎてあくびが出るニャ。もっと強い敵はいないのかニャ? 歯ごたえのあるやつを所望するニャ)」
黒曜の蛇リーダー:「な、なんだこいつら!? 報告にあった強さと全然違うぞ!? ば、馬鹿な! こんなはずでは! ひぇ、退け! 一旦退却だ! 体勢を立て直すんだ!うわぁ~」
逃がすかよ! この三下が! さっきの威勢はどうしたんだよ!
ジン:「ミリア! セラ! 逃がすな! 左右から完全に挟み込め! 逃げ道はないぞ!」
ミリア:「おうよ! 袋のネズミだぜ! 観念しな! このクソ雑魚が!」
セラ:「逃しません! 覚悟なさい!」
左右から完璧なタイミングで挟撃! 逃げ場を完全に失った敵リーダーの心臓を、俺の剣が一閃!
ズバッ!
あっけなく決着! 呆気ないぜ! 雑魚め! もっと楽しませろよ!
結果:今回も余裕で圧勝! 敵、完全壊滅!
ウォーミングアップにもならなかったな!
俺もまだまだやれる!
ミリア:「っしゃー! 楽勝すぎ! うちらマジで最強じゃね!? 向かうところ敵なし! イェーイ!」
ドヤ顔でハイタッチ求めてくる! 最高に可愛い!
セラ:「ふぅ…まあ、作戦通りですね。ジン、あなたの突進力と的確な指示、なかなかのものでしたわ。見直しました。少しだけですけれど、認めますわ」
上から目線! でもちょっと顔赤いぞ!
ツンデレ可愛いぞ!
ギャルゲーなら攻略難易度Sクラスのメインヒロイン候補!
リナ:「戦闘データ記録完了。各員の連携精度、前回比で15%以上向上を確認。ジンの単独戦闘能力…やはり規格外。ただし、戦闘後の息切れが前回よりも若干早く現れた模様。スタミナ面に依然として深刻な課題あり、と結論付けられます。早急な対策が必要です」
だからうるせえ! 分かってるわ! 余計なお世話だ! でも心配してくれてるのは分かる! クーデレ最高!
アッシュポート到着 - 残り寿命:約360日
数日後。
ようやく見えてきた!
数日ぶりだが、忌々しさがある、潮の香りとカモメの甲高い鳴き声! 活気があるように見えるが、その裏にドス黒い何かを隠している港! 古びたレンガ造りの建物がごちゃごちゃと立ち並ぶ…俺のクソ忌まわしき故郷、アッシュポートの姿だ。
ミリア:「うおー! また海だー! でもなんかここの海、前の時よりドス黒くね?気のせい? ま、いっか! ちょー広い! テンションぶち上がるー! 前は泳げなかったけど、今度こそ泳ぎてぇ! 水着持ってくればよかった!」
大はしゃぎ! 元気でよろしい! 水着!? それは非常に重要なワードだ! 前回も聞いた気がするが、何度聞いても素晴らしい!
ノラ:「わぁ! またアッシュポートですね! 前はゆっくり見れなかったけど、やっぱり大きな船がいっぱい! すごいですね! 見てるだけでワクワクします!」
キラキラした目で港を眺めてる! 可愛い! その純粋さ、絶対に汚したくない!
リナ:「前回は緊急性が高く詳細なデータ収集が不可能でしたが、今回は多少時間的余裕があるはず。港湾施設、物流網、裏社会の動向…興味深いデータが得られそうですね。後で詳細なフィールドワークが必要です」
いつもの分析モード。仕事熱心で素晴らしい。その探求心、尊敬するぜ。
ミカ:「………かもめ……いっぱい……飛んでる……かわいい……パンあげたい……お腹すいた……早くご飯……ここの魚料理、美味しかった記憶……じゅるり……」
癒し系。マイペースで可愛い。その食いしん坊なところもチャーミングだ。前回食った魚がよほど美味かったらしい。
セラ:「ちょっと! みんな落ち着きなさい! 前に来た時より状況は悪化してるかもしれないのよ! 今回は観光じゃないんですから! まずは船の手配が最優先事項よ! 分かってる!?」
さすがリーダー、しっかりしてる。みんなをまとめてくれる頼れる存在だ。
LJKたち、数日ぶりのアッシュポートに、それぞれの反応を見せている。
前回は緊張と恐怖でそれどころじゃなかっただろうが、今回は少し余裕があるのか、あるいは俺の若返った姿(と内面の爺ギャップ)に慣れてきたのか、妙にリラックスしているようにも見える。
平和だなあ…って、だから油断するな俺!
この町は絶対に何かヤバい! 俺の直感がそう告げている! 前回の騒動で何か変わったか? それとも、もっと根深い何かが…?
ジン:「よし、まずは最優先で情報収集と中央大陸への船の手配だ! リリス、頼めるか? 俺たちはその辺をぶらつきながら、怪しまれない程度に情報収集…いや、このメンバーじゃ絶対目立つから、前回と同じく、どこか裏通りで大人しく待機してる」
リリス:「ええ、承知いたしましたわ。船の手配はわたくしにお任せくださいな。すぐに良い知らせを持って戻りますので、皆さん、良い子にしていてくださいね♪ くれぐれも騒ぎを起こしたり、変な男に絡まれたりしないように。特にジン、あなたもですよ? 前回みたいに、厄介事に首を突っ込まないでくださいましね?」
女神スマイルでウィンクして颯爽と人混みの中へ去っていくリリス様。マジで絵になるなあ。美しすぎる。惚れる。てか俺への釘刺し、余計だ! 前回のこと、まだ根に持ってやがるのか!?
俺たちは、港の喧騒から少し離れた、裏通りの寂れた酒場の前あたりで待つことにした。人目につかないように、な。
ミリア:「なあなあ、ジン。なんか美味いもんないの? この町の名物とか! 超絶腹減ったんだけど! なんか奢って!」
ジン:「さあな…前回はそんな余裕なかったからな。魚介の串焼きとか、名物の豪快な酒場メシとかあったはずだが…今もあるかは知らん。後で探してみるか? 奢るぞ」
ノラ:「わぁ、串焼き! 食べてみたいです! 楽しみです! ジンさん、キモいけど優しい!」
セラ:「今はそれどころじゃないでしょう! 任務に集中しなさい、ミリア!」
そんな時だった。
ふと、強い、粘つくような、悪意に満ちた視線を感じた気がした。雑踏の中、道の向こう側。古びた建物の二階の薄汚れた窓から、一瞬、黒いフードを深く被った誰かがこちらをじっと見ていたような…?
黒い影…いや、気のせいか? 考えすぎか? 数日前にも感じたような、嫌な予感…。
そこへ、リリス様が涼しい顔で、しかしどこか誇らしげに優雅な足取りで戻ってきた。さすが仕事が早い! 有能すぎる! 頼りになりすぎるぜ! 女神!
リリス:「お待たせいたしました。幸運にも、明日の早朝に出航する商業国家行きの大型豪華客船『シーサーペント・プリンセス号』に空きがありましたわ。少しお値段は張りましたけれど、最上級のスイートルームを人数分しっかりと確保済みです」
さすが! 有能すぎる! しかも豪華客船だと!? 頼りになりすぎる! 女神! 最高!
ジン:「そうか、助かる。さすがだな、リリス。仕事が早い上に最高の結果だ。なら今夜はこの町で良い宿を取って、明日の優雅な船旅に備えるか…!」
だが、俺の胸のざわめきは消えないままだった。 このアッシュポートに漂う、見えない不穏な空気。そして、さっき確かに感じたあの邪悪な視線…。気のせいでは済まされない何かが、この町には確実に潜んでいる気がしてならない。出航前夜、何か起こらなければいいが…