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遥かな場所で  作者: 生野紫須多
第一章 旅立ち編
19/59

019話 目標は優勝で

会場を出ると、私はすぐさま自室へと戻った。


そこは友人邸のとある一室で、私が招待されたおりに宛がわれた部屋でもある。

部屋は調度品や家具なども高級な物でこしらえられており、かなり上質なものであることが窺えた。


それでも私の部屋と比べると見劣りはするが、別にそんなことに不満などはない。


「…………ふぅ」


広い部屋を見渡した後、鬱陶うっとうしかった帽子を脱いで一息吐く。

この部屋もこの帽子も、私が大会に出るためだけに準備したものなのだ。


もう試合には負けてしまったので、この帽子はもう必要ない。

会場に行くとしても、これでは少々目立ち過ぎるだろう。

顔を隠すにしても、もう選手ではなくなったのだからサングラスでもかければいい。


さて、ここの部屋はどうしよう、大会が終わるまではもう少し使わせてもらおうか……。


「わあっ!!!」

「――きゃっ!?」


突然の背後からの掛け声に、びくっと全身で仰け反る。


「きゃっ! って、あはは! ルルちゃんってば、やっぱり反応いいね~」

「な、なんですのいきなり!? ノックくらいしなさいっ!」

「だって部屋のドア開いてたんだもん。ルルちゃん何やってるのかな~って」


……そういえばドアを閉めた記憶がない。

まったく我ながら迂闊うかつだった。

いつもならこんなミスは絶対しないのに……。


「それで、試合に負けた私に、一体何の用ですの?」


少し意地悪かな、とも思ったが、仕返しの意味も含めてこの屋敷の持ち主にそう尋ねた。


「あれ? もっと落ち込んでると思ったのに意外と元気なのか。ルルちゃんも大人になったね」

「ミズリー……私を誰だと思っていますの。それに、そうやってすぐ私を子供扱いする癖は直しなさいと言っているでしょう?」


部屋にやってきたこの館の持ち主……ミズリーは私の幼い頃からの友人で幼馴染だ。

砕けた口調はいつものことだが、事あるごとにこうやって私を子供扱いしてくるのは彼女の悪い癖(主に私にとって)である。

いくら注意しても直らないので、一体いつまで子供扱いされるのか、と実はちょっと困っているのだ。


私の注意にも耳を貸さず、ニコニコと笑顔を浮かべている友人を見て溜息をつく。


桜色の髪に、それよりもうちょっと濃い紅色の瞳。

真ん中で分けられた髪は軽いウェーブを描いて耳元まで届いていて、彼女の魅力的な笑顔にとても良く似合っていた。


背は私より少し低くて幼く見えるが、実は一つ上で18である。

彼女と一緒にいると私の方が上に見られるようで、そのことも少し気になっていたりするのだ。


「相手の男の子、意外と強かったね。私、びっくりしちゃったぁ~」

「……そうですわね」


ちっとも私のことを気に掛けない言葉に、自然と声が低くなる。(まだ少し引きずっているのだ)

こういう忌憚のない所は彼女の長所で、時折助けられることもあるのだが、今に限って言えばそれは短所でもあった。


然し、彼女の言うことは確かに最もなことで。

Bランクの上位であるこの私が手も足も出ないなんて……本当に彼は一体何者なのだろうか?


試合中、何かと挑発してくると思ったら、最後は意外と優しかったり……。

試合後も負けて落ち込んでいる私を見て励ましてくれたり……とはいっても、無茶苦茶なことばかり言われた気がするが……。

あの後彼は、文句を言う私を残してさっさと会場を出て行ってしまった。まったく、自分勝手な青年である。

まぁ、怒ったおかげか嫌な気持ちはどこかへ無くなってしまったのだが、実はこれも彼の思惑なのだろうか……。


なんというか、今までに出会った事の無い、不思議な感じの人だと思う。


「――ルルちゃん? お~い、ルッルちゃ~ん♪」

「……え、あっ……な、なんですの?」


いつの間にか物思いに耽っていたようで、ミズリーの声に呼び戻された。


「名前だよぅ~、な・ま・え! ルルちゃんに勝った人の名前ってミナセル・アーケイトーくんだっけ?」

「……誰なの、それは。彼の名前はミナセ・アキヒトよ、確か」


ミナセ・アキヒト……試合が終わった後、私も彼の名前を確かめたから間違いない。

何だってこの私が負けた相手なのだ。この借りはいつかきっちりと返さなければいけない。

私のためにも……そして、我が家名のためにも……。


「ああ、そだった! 珍しい名前だね。ミナセくん? アキヒトくん? う~ん……アキヒトくんの方がいい感じ~♪」

「……?」

「じゃあルルちゃん、アキヒトくんの応援にいこっか!」

「……は?」


この子は……一体何を言い出すのだろうか?

私に勝った相手を応援するなんて、何の意味があるというのだ。


「貴女、何を考えてるの……」

「え~、だって、ルルちゃんに勝ったんだよぉ~? それじゃあ、アキヒトくんが優勝するんじゃないかなって」

「…………それは」


この子はこう見えて案外聡い。

その言葉は私が優勝するのを信じてくれていたということだが、理由はただ幼馴染だというだけではないだろう。

彼女の願望も多少は入っているかもしれないが……ちゃんと私の実力も含めて、彼女はそう思ってくれたのだ。

彼女が情だけで流されない性格だということは、幼馴染である私が一番良く知っていた。


残念ながら私は負けてしまったが、それでも彼女の中では評価は変わってはいないらしい。

不意打ちである。然も、その言葉に私は少しだけでも救われてしまった。


やはり、この幼馴染は侮れないな、と思う。

こういう所があるからか、どうしてなかなか憎めない。


「でも、何故、彼の応援なのです?」


私はできるだけ平静を努めて答えた。

嬉しいのだが、顔には出さない。なんだか負けた気になるからだ。


「試合を見るだけなんてもったいないしね~。それに自分が応援してる人が優勝したら、うれしいよ、きっと!」

「……ホント、貴女らしいわね。ふふ、でも確かに……それも悪くはないのかも、ね」


子供みたいな事をあっけらかんに言う友人に微笑を返して、私は窓から見える闘技場へと目をやった。


そういえば、その当人である彼もまた優勝する、と言っていたが……。

一体どんなつもりでそんなことを言ったのだろうか。そのことも気にならないと云えば、嘘になる。


「ミナセ・アキヒト」


私に勝った男、どこか私達とは違った雰囲気を持つ、見慣れぬ風貌の青年。


――――いいですわ、そこまで言い切った貴方の覚悟、見せて貰いましょうか。


眼差しはそのままで、窓の外に見える闘技場……そこにいるであろう彼に向かって、私は心の中でそう宣言した。



☆★☆★☆★



「へっくしょーんだいまおーっ!!!」


いきなりくしゃみが出た。最後の方は誤魔化した。


「どうしたのじゃ……妙な風でも引いたのか、主?」

「ふっ、さっきの試合で俺に惚れた奴が、噂でもしてやがるのさ……」

「…………」


…………、……自分で言って、自分で萎えてしまった。


「ごめん……」

「うむ、わかれば良い」


駄目だ、モンさんの試合が終わった後だと云うのに、まだ調子は戻っていないのか……。

どうもさっきの試合の後から、俺のテンションがおかしくなっている。


試合直後はそう状態にあった俺だが、あたかも波打つが如く、その後うつ状態が俺を襲ったのだ。


――――まぁ順を追って話をしよう。


まずは戦いが終わって早々、闘技場の端っこ……入場門の入口付近で応援していたモンさんに俺はこう問いかけられる。


「一体何をしたのだっ!?」


これは試合で俺がしたことを考えれば十分に予測できた。

しかし、この時の俺は既に鬱状態。自分の過ちに押し潰されそうになっていて。

どうにも彼女の問いに答える気力を、俺は持ち合わせてはいなかったのだ。


すると、言葉を濁す俺を見てモンさんはどう思ったのか、


「成程……それほど気力を消耗する技だったのだな」


と、呟きながら一人で納得してしまって。

モンさん、誤解してる、と云えば良かったのだが、いかんせんその時の俺は無用の長物。

ダメダメな俺は、間違いを指摘して彼女の誤解を解くことはできなかった。


それから、少し惰性な時間が続いて。


今度はモンさんの出番である。


まぁ結果から言って、勝敗はモンさんの圧勝だった。


相手はBランクの生き残りの一人。(案山子みたいな男だ)

見ていて思ったが、こいつはルルさんよりもかなり弱かった。

当然、Aランクのモンさんに敵うはずも無く、試合が始まると同時に秒殺である。


最後に泣き崩れた敗者の姿に、会場は大いに盛り上がった……とだけ言っておく。


この頃になると漸く俺も鬱状態を脱してきて、今や俺の出番を待つばかりである。

因みにモンさんとは試合後少し話したが、なにやら私用があるようで今はここにはいない。


そして、一つ問題があった。


「どうするよ、俺」


言葉にならない雄叫おたけびを想像し、俺は天を仰ぐ。


それは俺の頭の中にこだまする一つの台詞せりふ


『優勝する……優勝する……優勝する……』(エコー風に)


嗚呼、何故俺はそんなことを口走ってしまったのか……自分の口が妬ましい。

ルルさんを元気づけるためとはいえ、浅はかだった俺は阿呆あほうなことを言ってしまった。


いや、まぁ言ってしまった事は仕方が無い。

鬱状態の俺は、永遠とそんなことを繰り返していたが今の俺は違う……たぶん違う。


俺は迷っていた。

次の試合に関して、適当にやるか、真剣にやるか、と云うことである。


正直、何の理由もないのに自分から戦うのは気が進まない。

そろそろ相手も強くなってくる頃だし、自分の強さの程も大体わかったので、もう負けてもいいかな、と思う。


しかし、だ。

ルルさんに優勝する、と言ってしまった手前、俺は紳士としてその責務を果たすべきでは無かろうか……とも思うのである。

まぁ、ルルさんにはもう会わないだろうから、そこをどう捉えるかが問題だ。


「ディズ、理念と信念。お前ならどっちを取る?」


迷った俺はその答えをディズに訊いてみた。


「……ふむ、主の答えはもう決まっておるように視えるが?」

「………………」


お前の考えはお見通しだ、と云わんばかりである。


……そういやこいつ、相手の意図が読めるんだったな。

俺の答えは決まってる、か。……ちっ、俺よりも俺のことを解かってるとか、ちょっと複雑だ。


しかし、納得してしまった俺がいた。


全くもって悔しいが、確かにディズの云うとおりかもしれない。

ディズがどっちを答えていたとしても、たぶん最後は俺の意思で決めていただろうから。



☆★☆★☆★



『Aブロック第三回戦、やってきました今大会注目の対決です!! まさに異例中の異例っ!!! なんとここまで勝ち上がってきたのは、どちらもCランクの青年たちだーーーー!!!』


――ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!


『並み居る強豪を打ち倒したその実力や如何にっ!!! それでは順に紹介していきましょーーーーっ!!!』


会場はまさに熱気の嵐。

大会も中盤に差し掛かり、盛り上がりも好調なようだ。


俺も既に入口にスタンバっている。

気分は上々、準備は万端。

さあ、俺の名前を高らかに呼びあげなっ!


『さあーー! まずは東門から! 謎が謎を呼んでますっ、彼は何者なのでしょうか――ミナセ・アキヒト選手ーーっ!!』


観客の声援に応えて入場。

俺の存在もいよいよ有名になってきた予感……うん、まぁいいやっ!


俺の後ろではディズが応援している。

モンさんも俺の試合は見ておくと言っていたので、会場の何処かにはいるはずだ。


『続いては西門ーー!! 華麗な剣技で観客達を魅了するっ、最近巷ちまたで噂になっているようです――オスカー・シャイナ選手です!!』


――あれ?


俺は気付いた。


前から歩いてくる俺の対戦相手、それは俺の知っている奴だった。

あの温和そうな顔に短めの金髪ヘッド。

腰に差してるあの剣は、確かに見覚えがある。


俺と一緒にCランカ―共のサバイバルを勝ち残った金髪青年だ。


そうか、おまえの名前はオスカーだったか。

それを踏まえて見ると……はは、確かに、オスカー像にそっくりだな。

なんかの映画関係の賞だっけ? 


そして闘技場内で俺達二人は向かい合った。


「やはり、僕たちは戦う運命にあったようですね」


…………WHAT'Sホワッツ? ナニヲイッテイルノカナ?

戦う運命だって? 一体どこの電波をキャッチしたんだ、おまえは。


「くっくっく、面白い、実に面白いぞ。オスカー君」


俺のテンションもおかしい。

しかし、こいつはもっとおかしいので良しとする。


『Aブロック第3回戦!! 用意はいいですか~~~~!!!! それではっ、始めええええええええええええええ!!!!』


――カンカンカーン。


もはや、聴き慣れてしまった鐘の音で試合が始まった。

今回は遅れはとらない。それにこいつは男なので容赦はしなくてすむ。


「あいさつだ、受け取れ」


鐘が鳴り止むと同時に、俺はオスカーに向かって突進。

殴りこむように強化された右手の掌底を、奴の胸に向かって浴びせる。


「ゴフッ!?」


ドンッと衝撃が走り、奴が後ろに吹っ飛んだ。

おーっと、中々派手にいったな。一応、手加減はしたんだが。


「う、……ぐぐ……!」


オスカーはうめきながらも立ち上がる。

様子から察するに、たぶん息がうまくできないのだろう。

結構苦しそうだが、まだまだ、こんなものでは終わらせんよ。


「どうした、かかって来ないのか?」

「ふっ、……まだまだ、これからです」


うん、その意気だ。

存分に頑張ってくれたまえよ。

今までのストレスも発散するつもりだからな。


「ふー、はぁ!!」


オスカーが気合を入れる。

もう持ち直したか、強化のレベルがどんどん上がっているのが分かる。


相当な魔力を練り込んだな。

一気に勝負に出るつもりのようだ。


炎剣フレイムソード!」


奴が叫んだ。

それと同時に炎に包まれる刀身。


「いきます!」


オスカーが向かってくる。

前に見た時よりも数段速い。

あっという間に俺との距離は詰まり、奴の持つ炎剣が振われる。


「はああーっ!!」

「残念」


俺は士さんでその炎剣を受け止めた。


――キィンッ! と、刃同士の鍔迫つばぜり合いが起こる。


「えっ!? 炎が――!」


鍔迫り合いが起こった瞬間、相手の剣が纏っていた炎が消えていた。


驚くオスカー。

なんだ、前の俺の試合を見ていなかったのか。


「な、何故……」

余所見よそみはやめとけ」

「――うぐっ!!」


今度はちょっと強めの蹴りを相手の太股ふとももにお見舞いしてやった。

さらに、バランスの崩れた相手にもう一蹴りを加えて、もう一度後方へとぶっ飛ばす。


「うあああ!」


状況は先程の繰り返し。

距離を取って立ち上がるオスカーに、それを待ちうける俺という構図。


違うのは相手が既に満身創痍まんしんそういだということだ。

思っていたよりも呆気ない。これなら、ルルさんの方がまだ強かったかも。


それでも警戒は緩めずに、膠着状態へと移行する。


ここまででわかったこと、オスカーは俺の敵じゃない。


俺の強化レベルを10とすると、奴の強化レベルはたぶん5~6くらい。

そして炎の剣を使用できるのに、そのまま斬り込んできたということも引っかかる。

たぶん俺と同じで、飛び道具のような魔法は使えないのだろう。


ま、たとえできたとしても、俺には効かないのだが。

久々に訪れたストレス解消の機会だ。みすみす逃すつもりはない。


「ほら、立ち上がれ。まだ片足と両腕が残っているぞ」


気分は中ボスを相手にするレベルMAXの主人公で、俺は遥かな高みから恍惚こうこつと神託を告げた。



――数分後。


「はあ、はあ、はあ、はあ」

「だいぶ息が上がっているな、そろそろ終わりにするか?」

「はあ、はあ……まだ、まだ!」


疲労困憊ひろうこんぱいになりながらも、必死に抵抗するオスカー。

しかし、結果は誰が見ても明らかなものだろう。


「ぐあぁっ」


俺も思いっきり加減して払いのけるが、相手の体は地面へと吸い込まれる。


「ぐ……う……うう」


オスカーは体を震わせつつも、必死に四つん這いになって起き上がろうとしている。

…………まさか、ここまで粘るとは思わなかった。


前言撤回ぜんげんてっかい、こいつは強い。


力の強さとか、そういうのではなく。

決して諦めない粘り強さ、我慢強さを持っている。


両腕はもうボロボロで、両足だって立つこともままならないはずなのに、それでもまだ諦めない。


俺にはない、熱い心に少し羨望を覚えた。

もうストレス解消も十分できたし、これ以上長引かせるのも酷だろう。


俺は試合を終わらせるべく、終幕となる口を紡いだ。


「おまえ、……まだ諦めないのか?」


一体何がおまえをここまで駆り立てるのか。

まさか金や名声とかではないとは思うが……。


そんな俺の質問に、オスカーはしっかりと応えてくれた。


「絶対に、諦めません! やらないと、そこに、いかないと……いけないんです!!」


最後の力を振り絞って、オスカーは立ち上がった。

その姿にまたもや心打たれる。すげぇ、立ったぞこいつ。

ふぅっと被りを振って、俺も最後の一撃を繰り出すために、オスカーに近づいていく。


「まだ、……僕は、あきら……めない……」


もう立つだけで精一杯なのだろうが、眼光だけは強く光っている。


「まぁ、なんだ、今は休め」


ドスッっと、ふらふらの体のど真ん中に拳を突き立て、オスカーの意識を刈り取った。

支えを失った体は漸く崩れて、オスカーはもう一度地面へと帰り着く。


――カンカンカーン。


『試合終了ーーーー!!!!! やはり強い、強いです!! 完勝して決勝へと駒を進めたのは、アキヒト選手ーーーーーっ!!!! オスカー選手も敗れはしましたが、よく健闘してくれましたーーーー!!!!』


――ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!


今までで一番大きな歓声だ。

鼓膜が破れそうな程の振動だが、これはこれで味がある。


俺は倒れているオスカーに目を向けた。

こいつの目的が何なのかは知らないが、そこまで必死になれるものがあるらしい。


俺はこいつみたいに必死になることはできない……と、思う。

だけど、ちょっとは見習ってみようか、という気にはなった。それは感謝しておこう。


「目標は優勝で」


とりあえず迷いは晴れたので、誰に言うまでもなく呟いてみた。

何て言うかそのままなのだが、目的ではなくて目標なのは勘弁だ。


そして、係りの人達に担架に乗せられて退場していくオスカーを最後まで見送ってから、俺は闘技場を後にした。



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