表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
溺愛夫に愛されて。  作者: 当麻 あい
2/2

1-1



 昔から、読書が好きで、まさか本当に結婚できるとは思っていなかった二十台。

 きっかけは、インターネットでの趣味チャット。

 夫の雄一も読書が好きで、意気投合し、知り合って三か月目で、お茶をした。

 雄一の最初の印象は、クール、やさしそう、スーパーサラリーマン。

 印象通り、雄一は私に軽い一瞥を向けただけで、すぐに店の中へと入って行った。

 (思ってた以上に、つめたいような)

 チャットでも冷淡な口調だと思ってはいたが、当時の私は、様々な友人を作りたくて躍起になっていた。目の前で、無言でコーヒーを飲む彼が、まさか三年後、自分の夫になるとは、夢にも見ていなかったのだけど。

 (沈黙が重い。何か話さなくては……)

 そう思い、あれよ、あれよ、と読書の話に花を咲かせて、どうにか息苦しい二時間を終えた。それでも、私は必死であった。

 非モテ人生の中で、少しでも男性と知り合いたい、デートしたい。いや、デートのようなものがしたい。そう思っていた。

 彼は、十一時を迎えるころ、おそらく高いだろう、ロレックスの時計を見てから、意地悪く笑って、

 「これから、どうします?もうこんな時間ですけど」

 そう言って、時計を指先で、とん、とん、と叩いた。

 私は、びっくりして逃げ出したくなるのを我慢しながら、余裕そうに見せようと、笑みを浮かべたまま、一瞬の間を作った。

 「ええ、そうですね。明日も仕事があるので……」

 そう言って、カバンを抱えると、彼は眉を少しだけ持ち上げて、「そうですか、では、またお会いしましょう」と淡々とつぶやいて、私を駅まで送ってくれた。

 夜の風に吹かれながら、彼の横に並んで歩く。

 まさか、こんな関係が三年も続くとは思わずに、ああ、きっと悪い印象を与えてしまったのだろう、と、少しがっかりしていた。

 雄一と出会ったころの私は、まだ初心な少女のような心を持っていた。

 彼も、今ほど情熱的では無かった。

 何をきっかけに、お互いこれほどまで、甘やかしあう関係に発展してしまったのか。

 未だに不思議でならない。


 「かな?どした?」

 雄一が、背後から抱きしめたまま、私の顔を見下ろしていた。

 その整った表情が、やわらかく微笑んでいる。

 (これが、あの時の冷淡な男の顔かあ……)

 そう思い、黙って見つめていると、雄一の温かいくちびるが降って来た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ