第2話(8人の参加者)
ーー当日の夜、8人の参加者と翔、田中が廃病院の駐車場に集まった。田中は撮影係だ。翔は参加者にtotoゴール3の当たり券を見せる。月明かりでバッチリ見えた。
「優勝者にはこれを手にすることができる。まあ、気楽に楽しんでって」
「「「スゲー」」」
ーー参加者と翔は携帯電話のアドレスを交換した。脱落者を一斉メールで知らせるためだ。
ーー8人それぞれ事情がある。一番先に登録した近藤は仕事をクビになり、少しでもカネが欲しい。
二番目、三番目に登録したユウキとマミはカップルだ。特にカネに困ってる訳ではないが、暇潰しに参加した。
四番目に登録した小宮山は精神科医だ。昔から廃墟めぐりが趣味で、別に優勝しなくてもいいと考えてる。
五番目に登録した小池は翔と小学三年生の時、1年だけ同級生だった。その事を翔はすっかり忘れていた。
六番目、七番目に登録したのもカップルだ。ヨウコとマチコ。レズビアンだ。この二人もオマエチューブの動画クリエイターで、それを隠して自分達も配信しようと考えてる。
八番目に登録したレオは売れないタレントだ。一発逆転を狙って参加した。
ーー翔は参加者にスタートの合図を出す。
「それでは準備はいい? 隠れる時間は5分間。そしたら鬼の俺が探し出すから。脱落者は病院の外に出ること。ペイント弾が当たったらアウトだからね。行くよー、レディ…………ゴー!」
参加者は一斉に廃病院に入っていく。そして、5分が過ぎた。
「緊張してるのか? 翔」
「ちょっとな」
「これ飲め」
田中はスポーツドリンクを翔に渡す。
「既製品じゃないな」
「粉から作るタイプのスポーツドリンクだ。全部やるよ」
翔はキャップを開けてカブ飲みする。
「美味いな」
「それじゃあ俺は撮影係として良い画を撮るよ」
「頼んだぞ、田中」
田中はデジカメを片手に廃病院へ入っていった。翔もペイント銃を構えて廃病院に突入する。6階建てだ。翔はまず、目線カメラ型ウェアラブル端末を装着してから最上階へ行く。所々、落書きがあった。
「これがバンクシー作なら1億円か? 人によって落書きの価値が変わるとはな。世も末だ」
翔は最上階に1人くらい隠れてると思ったが空振りになる。しかし、小宮山と階段で鉢合わせになった。
「ま、待て!」
「待~たない」
シュポッ! シュポッ! 翔は小宮山の顔面にペイント弾2発をお見舞いした。