第1話(オマエチューブ)
翔は25歳で仕事を辞めて、動画投稿サイトの〝オマエチューブ〟で動画クリエイターとしてデビューした。しかし、鳴かず飛ばず。とある週にtotoゴール3で10万円当ててしまった。それを動画投稿せず、というか頭になかった。それがチャンネル登録者、再生回数を稼げない理由でもあった。翔はチャンスを活かせない。
子供の頃からの友達、田中が翔の現状を心配して電話を掛けてきた。
「翔、久しぶり」
「よっ。どうした?」
「お前のチャンネル登録者、50人だぞ。大丈夫か」
「51人だ」
「そろそろ現実を見た方がいいんじゃないか?」
「いやそんなことはない。ネタだ、ネタさえあれば。事件が起きれば」
「宝くじでも当たればな、ハハハ」
「totoゴール3の1等なら当たったんだけどな」
「マジか! 何故それをネタにしない!?」
「あっ……うっかりうっかり。何とかネタにならないかな」
「当たりの券はまだ持ってるか?」
「あるよ」
「それをオマエチューブで配信しろよ」
「今更やっても動画映えしない。ドキドキ感が大切だ。ドカンと行きたい、ドカンと」
「だったら肝試しでもやるか? totoの当たり券を賞品にして」
「それいいねえ。しかし、ただの肝試しじゃ面白くない。かくれんぼとサバゲーを組み合わせよう」
「なら良い物件がある。町外れにそこそこデカイ総合病院があったろ?」
「ああ。子供の頃に風邪で何度か行ったな。まさかそこでやるのか」
「今は廃病院だよ。夜に侵入してそこでやったら再生回数を伸ばせるんじゃない?」
「いいねえ。だけど仲間内でやるとつまらんな」
「SNSで参加者を募集するか」
「よし、SNSで募集しよう。友達だとリアリティーに欠ける」
ーー後日、翔はフォロワー120人のSNSに宣伝した。ルールは翔が鬼固定でペイント銃を持ち、撃たれたら脱落。最後まで残った参加者がtotoゴール3の1等当たり券をゲット。
★ショータイム参加条件。その1、決められた時間までに例の廃病院に現場集合出来る事。その2、定員8名、先着順。その3、オマエチューブに配信されてもいいという事。その4、何が起きても自己責任。