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ワールドレクイエム  作者: husahusa
第二部「ワールドリメイク」 第二章 本部襲撃事件
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第二十話「新たな世界への第一歩」

「それではそもそも滋賀支部に辿り着いてすらいないと!?」


 中澤は声を荒げながら驚く。

 歯車はその様子に不信感を抱く。中澤に対してでは無く、あの日の一連の流れにだ。

 滋賀支部に辿り着けなかった事と、和人の重傷は繋がっている。

 地下通路爆発。そこから数時間後に和人の元に駆けつけ連絡してからものの数十分でやってきた救助隊にだ。

 まるで初めから和人の重傷を知っていたかのように、歯車からの連絡を待っているかのように。


「申し訳ありません、今日の所はお引き取り下さい!」

「え、どういう……」

「何があったんですか!」


 今日初めて見る中澤の慌てた様子。

 歯車と中島が事情を聴こうとするも取りつく暇もない。

 無理やりに本部から追い出される歯車達が納得できる筈もなく、しかしできる事も無く呆然と本部前で立ち尽くす。


「隊長、あれなんですかね?」


 ふいに猫又が青空を指差す。

 指差した先には他の鳥とは一回りも二回りも大きな黄色い鳥がメディア本部を中心に、大きく円を掻きながら空を滞空している。


「なんかデカくねえ――」


 歯車が言い終わる前だった。

 黄色い鳥は滞空を止めたかと思えば、次の瞬間目で追うのがやっとのスピードで本部目掛けて急降下した。

 大爆発と共に一足早い夏並の暑さが辺り一面を覆いこんだ――。


 ---


 -5月23日 16:13-


 周りからは自分達に関しての連絡や状況確認の声が行き来する。

 あれ程派手に突撃したのだ、当然だった。


「もう少し考えて行動しろよ!」

「ちゃんと考えたわ」

「どこが!?」


 自信を『使う』少女に向けて言っても何とも思っていない。

 散々考えてから行動しろと言ったのにこれだ。

 本人からすれば考えているらしいが……。


「これの何処が考えてるんだよ」


 自分達に向かってくる兵士達を前にして言う。


「これが一番早いの、イプシロンは黙って見てて」

「あーそうですか! ご勝手にどうぞ!」


 言うが早いか少女は兵士目掛けて動き出す。

 走りながら兵士達の銃撃を難なく躱し、先頭の兵士まで数秒でたどり着く。

 兵士も負けじと銃床(ストック)で殴ろうとするが少女はこれまた軽々と躱す。


「あの人は違うわ」

「あいつだけじゃねえぞ、目の前の奴らは全部違う!」


 少女が一旦距離を取ろうとするも、すかさず兵士達も銃撃を開始する。

 だが少女は軽やかに右へ左へ踊る様に躱す。

 少女は無数に飛ぶ弾丸を一つ残らず目視で確認していた。確認しているだけでなく動きもそれについていっている。

 そう、少女の動きは銃弾よりも早かった。


「リーノ! 人が集まってきた、やるなら早いうちがいいぞ!」

「そう……」


 イプシロンの助言で躱す動きから一転、再び兵士達に向け高速で向かう。

 今度は先頭の兵士の前で立ち止まらずにそのまま全ての兵士達を通りすぎて奥に進む。

 兵士達は一瞬何をされたかわからなく、自分の身体を確認したが何処にも異常は無かった。

「違う」と言った時点でリーノと呼ばれた少女には兵士達の事など眼中に無かったのだ。


 ---


「リーノ! ストップ!」


 高速で廊下を進むリーノはイプシロンの声で急ブレーキを掛ける。


「いた?」

「ああ、だがこいつは……」


 イプシロンの目の前には先ほどと同じく数名の兵士達。

 その中心にいる人物にリーノを通して見ていたイプシロンの視線は集中していた。

 その人物の名は亞月元(あがつげん)。この東京にあるメディア本部の守護神であり、全戦闘部隊の総隊長である。

 しかめっ面で侵入者を睨みつける亞月はそのままノーモーションでリーノの目の前にまで移動した方と思えば、既に持っていた剣をリーノ目掛けて抜いていた。


「っべえ!」


 反応が遅れたリーノに変わりイプシロンが後ろに引く。

 間一髪亞月の斬撃を交わす事に成功したリーノだったが、亞月の攻撃スピードにもイプシロンの反応速度にもついていけていない。


「リーノ!? 何してる! 早く逃げるぞ!」

「――っうん!」


 イプシロンの声ではっとしたリーノは慌てて立ち上がり飛行する体制を取る。

 幸いリーノは侵入した際に自身でぶち抜いた天井の位置に居た。

 たった一撃で圧倒的な実力差を感じていたリーノは飛ぶ体制を取り、天井から逃げようする。


「声が二つ……何者だ?」


 声が聞こえるのが早いか再び目の前にまで迫っていた亞月は剣を振り下ろそうとしていた。


「――っ!?」


 今度は何とか反応する事ができたリーノはギリギリながらも亞月の足元目掛け潜り込む。


「それは悪手だ」


 狙い通りと言わんばかりに剣の柄でリーノ左顔を殴りつける。

 そのまま壁に激突し、止まるかと思われたが、亞月の殴りが強力過ぎて吹き飛んだリーノに耐え切れず壁は崩壊する。

 だが、これがリーノにとっては好都合だった。


「おい! リーノ! ……くそっ!」


 外に投げ出され重力に引きづられながら地面に向かうリーノに必死に声を掛けるが返事は無い。

 死んではいない、気絶しているだけだと信じて身体のコントロールを自分に戻す。

 だが予想以上に身体のダメージが大きいようで上手く飛べない。


「声が二つ、意識も二つ、身体は一つか……だが落ちるぞ」


 亞月の言葉通りなんとか態勢を整えようとするも結局地面に落ちてしまう。

 落ちた先には無数の兵士達。

 絶体絶命か……。

 そう覚悟した時に転機は訪れる。


「あいつは――」


 イプシロンが目にしたのはベータとそのパートナーの男が合体した姿で暴れている光景。

 この数の兵士達はあいつのせいかと考えを巡らせる。

 よく見るとこちらに注目しているのは落ちたすぐ傍の数名のみで、殆どの注目はベータ達に向いていた。


「一体どうなってるんだよ」


 イプシロンにも何がどうなっているのかはわからなかった。

 しかし、この状況は好機だ。

 痛むであろうリーノに悪いと思いつつも無理に身体を起こす。

 イプシロン達の様子に気づいた周りの兵士達は取り押さえようと取り囲む。


「邪魔くせえ!!」


 大きな翼を勢いよく振り回し、兵士を近づけないようにする。

 振り回された翼は強力な風を起こし、次第にリーノ付近の兵士だけでなく更に遠くの兵士達迄巻き込んでいく。

 だがそれもほんの僅か数秒で、リーノの身体の限界が来てしまい、膝から崩れ落ちる。


「クソがっ……」


 リーノだけでなく、イプシロンの意識までも遠のいていく。


 ——だから俺は反対したんだ。


 そんな想いを抱きつつもイプシロンの意識は遂に途絶えた。

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