第十四話「白いデルタ」
-4月26日 7:00-
「――っ!?」
身体の激痛で目が覚めた和人。
辺りを見回すも、地下からの爆発の影響で瓦礫や道路のコンクリートがでこぼこに散乱している。
最早道路と呼べるような状態では無かった。
仲間は無事だろうか……。
そう考え、激痛に耐えながらも身体を起こそうとするが、中々起き上がれない。
どうやら右足か左足かまたは両方かが骨折している様だ。どちらの足も痛む、とてもじゃないが立ち上がれない。
「和人、俺を使え」
すぐ傍にいたデルタが言う。
確かにバースト・オンすれば身体能力が向上し立ち上がる事もできるかもしれない。
「バースト……オンっ!」
和人はデルタに言われるがままに使う。
その瞬間、和人を中心に火柱が上がる。
オルギアを使ったからか、なんとか立ち上がる事が出来た和人だったが歩くのがやっとだ。そんな状態だがゆっくりと少しずつ歩くことは出来る。
仲間は何処だと執念の様に一歩一歩前に進む。
「あれ? 全然死んでねえじゃん」
前に進む和人の背後から声がする。
思わず勢いよく振り向いた際に再び和人の身体を激痛が襲う。
「だ……れだっごほっごほ……」
どうやら内臓も相当なダメージを受けているらしい。喋ろうと声を出したと同時に血反吐を吐き出し膝を付く。
限界が来たのか和人のバースト・オンも解けてしまう。
自由に動けるようになったデルタが和人を守る様に男との間に割って入る。
「なんだ、死にかけかよめんどくせえな」
振り返った和人の目の前には見知らぬ男が一人立っていた。
めんどくさそうに頭を掻き毟る男は一言「ベータ」と呟く。
すると男の背後からデルタと同じ様に浮遊する物体が現れた。
「ベータ……」
男と同じ言葉を口にしながらデルタはその浮遊する物体に話しかける。
「久しぶり、と言うべきだろうな」
「ああそうだな……」
和人は下から見上げる形でデルタと話す物体を見る。
形はほとんど一緒だが黒いデルタに対し、ベータは白色だった。
到底人間とは思えない浮遊する二つの物体は人間の言葉で互いに久しぶりだと話す。
しかし、その言葉とは裏腹に声色は普段より低く、デルタは憎しみを込めたような言い方をしていた。
「ベータぁ、旧友との話し合いもいいんだが今日の目的はそうじゃないだろう?」
「わかっているさ」
男はベータを呼び止めると和人がするのと同じようにベータを掴み呟く。
「騎士邁進」
瞬間、べータは発光し、辺り一面を光が包み込む。
ベータもまたオルギアだったのだ。男は和人と同じように変身した。
だがそれは和人とは正反対で、変身の際に周りには心地いい風が吹きどこか安心するような、包み込まれている様な気分になる。
和人も痛みなど忘れ心地いい風に身体を任せてしまいそうになっていた。
だが和人は目の前の男を見て一気に現実に引き戻される。
微かに呟きが聞こえていた和人はナイトという単語が聞こえていた。
その言葉通り目の前には白い鎧に身を包み、顔も兜で覆いかぶさっていた。
デルタと違い、ベータは自信を大剣状に変化させた。
どこか中世の雰囲気を感じたのも束の間、和人はとてつもない気迫に思わず身体が固まっていた。
この男は何者なのか?何の目的でこの場所にいるのか?そんな疑問を思い浮かべる余裕は無く、ただ一つ。
――殺される。
その感情だけが和人の心を支配する。
だが逃げようとしても足は動かない。
両足が折れているからか、恐怖からか、あるいはその両方か。とにかく逃げようとしても一向に動かない。
「和人! 何してやがる! 早く逃げろ!」
何時までも動かない和人にデルタの怒号が響く。
少しだけ正気を取り戻した和人は痛みに耐えながらも立ち上がろうとしてまた地面に倒れ込む。
それでも腕で地面を這いずりながら、なんとか逃げようとする。
そんな和人を冷たい眼差しで見下ろす男。
兜で表情までは見えないが、必死に這いずる和人をゆっくりと歩きながら追いかける。
変身の際にベータが変化した大剣を和人目掛けて振り下ろそうとした時、遠くから和人を呼ぶ声が聞こえてくる。
「ちっ! ベータっ! お前が無駄話してるからだぞ!」
悪態を付きながら男は声の方向とは反対の方角へと姿を消していく。
和人は聞き覚えのある声を聴き安心したのか、そこで意識が途絶えてしまった。
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「和人おおおおお!」
歯車が大声を上げても反応は無い。
地下通路爆発から3時間。
歯車たちは運よく爆発の衝撃が少なく、軽い擦り傷程度で済んでいた。
だが先行していた三鶴城は右腕に重傷を負っていた。
状況的に同じ位置にいた和人も恐らくかなりの重傷を負っているだろう。
爆発から直ぐに三鶴城は見つかったが、和人は何時まで経っても見つからない。
次第に焦り始めた歯車たちに火柱が上がるのが見えた。
「あれは……和人か!?」
直ぐにあの火柱が和人のものだと理解する。
「中島、ルートを!」
「すぐにやります!」
中島のオルギアは古代エジプトのグライダーがモチーフにされており、形状は鳥型である。
中島はオルギアを手に持つとそのまま上に放り投げる。
オルギアは鳥と同じ動きをしながら辺りを滑空し始める。
一方中島はもう一つ小型のカメラの様な物でオルギアから送られてくる映像を見る。
中島のオルギアは完全にサポート向けの物となっており、こういった少数チームには欠かせない存在だった。
「どうだ!?」
「火柱が上がった方にそれらしき人影が――待ってください! 二人います!」
「なんだと!? 和人が危ない……猫又は三鶴城に付いていてくれ!」
「了解!」
「中島最短で行くぞ!」
三鶴城と猫又をその場に残し、歯車と中島が全速力で和人の元へと向かう。
二人がたどり着いたのは、丁度騎士の男が和人目掛け大剣を振り下ろそうとしている時だった。
二人の声に騎士の男が反応し、その場から逃げるのを中島が追いかけようとするが歯車に止められる。
和人の容態が思った以上に酷い物だったからだ。
「医療班を!!」
本日何度目かの歯車の怒号が辺り一面に響いていた。




