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ワールドレクイエム  作者: husahusa
第一部「ワールドエンド」 第三章:過去編
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真16話 問と答えⅡ

 ゼノにはここ二日間ずっと考えていた事がある。

 メモリーチップの事だ。

 ネシアが自分に向けて、これを託した事は明白だった。

 だからこそわからない、中身のないメモリーチップをどう生かせばいいのか。


 ゼノはアジト中のアンドロイドに関する資料を読み漁っている。

 その過程で分かった事がいくつかある。


 一つ目に、アンドロイドの制作目的について。

 驚くことにこの制作目的は、2000年前、つまり初めて作られたプロトタイプアンドロイドの頃から一切変わっていない。

 目的はただ一つ、人間では困難な場所や作業量をこなす為の物になる。

 決して人間を襲う為の物では無い。

 これでアンドロイドは、完全にアルビオンに操られていると確信する。


(しかしアルビオンの言っていた敵って……?)


 敵から人間を守るためにアンドロイドを動かした。

 それならだけなら話は分かるが……。

 リリーの方を見ながら思う。そのアルビオンが敵と判断したのがリリー、彼女も間違いなく人間だ。


 矛盾している。

 人間を守るために人間を殺そうとする。

 ゼノには理由がわからなかった。


 そして二つ目に、メモリーチップについて。

 人間でいう所の脳みそであるそれは、アンドロイド一体一体に左右されるわけでは無く、あくまでメモリーチップ一枚一枚に保存されているという事。

 つまりは、同じ身体でもメモリーチップが別の物なら、それは別人なのと一緒という事になる。


 最後に三つ目。実際にメモリーチップの入れ替えを行ってみた際の事だ。

 丁度一体アンドロイドが居る事もあり、新品のメモリーチップから一枚アンドロイドに入れてみる。


 ピー、ピピッ。

 耳に付く音を出しながら、久しぶりに聞く人間味の無い声でゼノに語りかける。


「初期設定ヲ開始シマス、管理者ヲ設定シテクダサイ」


 管理者……?

 ようは誰の命令を聞くようにするのかって事か?

 どうすればその管理者になれるのかわからない。

 ゼノは手探りで操作していく。


「管理者ってどうすればいいんだよ……」

「管理者ノオ名前ヲ、オ聞カセクダサイ」

「成程ね……」


 管理者はゼノだ、そう一言言うだけで登録が完了したらしい。

 音声認識とやらで、自分の声を少しだけ聞かせると、それもすぐ終わる。

 こんな程度で大丈夫なのかと、少し不安になったが、どうやら大丈夫らしい。


「うまく行ったか」


 一旦腰を落ち着かせる。

 ゼノは更に新たな実験を試みる。


---


「数は……一体だけだな、よし!」


 ゆっくりと背後から忍び寄る。

 ある程度距離を詰めると一気に飛びかかる。


「な、何!?」


 まるで人間のようなリアクションを取るアンドロイドに少し恐れながらも、構わず頭の左側を殴りつける勢いで何度も叩く。


 ピピッと小さな音と同時に、メモリーチップが出てくる。

 そのままアンドロイドを引きづりながらアジトまで戻ったゼノは、以前にアンドロイドから取り出したメモリーチップを初期化し、今回捕まえたアンドロイドに入れる。


「初期設定ヲ開始シマス……」


 ゼノはアンドロイドの新たな管理者になる。

 そうして三体のアンドロイドを従えることに成功したゼノは、いよいよP-2001-type-O、プロトタイプアンドロイドのメモリーチップをその身体へと戻す。


「いいか、もし仮にこいつが襲い掛かってきたら全力で排除しろ」

「「「カシコマリマシタ」」」


 三体のアンドロイドはいわば保険だった。

 ゼノも剣を握りしめながらプロトタイプアンドロイドの起動を待つ。


「……ここは一体」


 開口一番疑問を口に出しながら起き上がるプロトタイプアンドロイドに警戒を強めるゼノ。


「おい、言葉はわかるな?」


 それが彼との、オーとの出会いだった。


---


 あのプロトタイプアンドロイドの名はオーだという。

 「更に言えば、人間で言うあだ名なんてものもついていた、メモリーチップにロックが掛かっているんで思い出せないがな」だそうだ。


 オーからは色々な事を聞けた。

 まずオーは予想通り1000年前に製造されたP型というアンドロイドになる。

 しかし、正確にはP型は、製造から200年程利用されており、次の型が出来るまで利用されていたらしい。

 昔ネシアに見せられたデータログと一緒だ。嘘は言っていないだろう。


「ではこのアンドロイド達はどの世代のアンドロイドなんだ?」


 後ろで待機している三体のアンドロイドを指す。


「右腕を見てみると良い、型番が記載されている筈だ」


 右腕には確かに型番が記載されていた。

 『N-0000』

 「すまない、知らない型だ……」オーの答えは当然だ。

 なんせ過去から来たのだから。


 オーからは型番の読み方も聞いていた。

 P-2001-type-O、これはつまり、


 P:プロトタイプ

 2001:2001年

 type:Oタイプ


 という事らしい。

 それで言うなら、このN-0000という型番は意味不明だ。

 ここではN型としよう。

 Nの部分はプロトタイプといった世代を表す、プロトタイプつまり最初期のオーが知らなくても無理はない。

 しかし年代を表す部分が0000とはどういう事なのか。ましてやタイプ表示すらない。


「これはあくまで予想の範囲内でしかないのだが、ゼノの言うアルビオンという人口AIが作ったんじゃないのか?」

「アンドロイドを操ってか?」

「ああ」


 オーはN型に触れながら説明する。


「まずこのメモリーチップの部分ここがおかしい」

「何故?」

「考えても見ろ、アンドロイドにとってメモリーチップは脳と同じ。

それを守る、いわば頭蓋骨の部分がこんなに簡単に外れるのがおかしい」


 確かにそうだ。

 いくらなんでもガードが甘すぎる。


「更に言うならこのボディー部分も作りが甘すぎる」


 ほら見てみろと、手足を繋ぐ関節の部分の指差す。


「この部分もこの身体と大差ない」


 オーは自身のプロトタイプの身体を指す。


「このボディは2000年前の物だ、2000年前だぞ? ここの資料を少し読んだが、確かに技術レベルは落ちていた、だがそれを踏まえても余りにも進歩が無さすぎる! きっとアンドロイドのノウハウもまともにないまま作ったんだろう。じゃないとこうはならない……」


 オーから得られる情報はどれも新鮮で、役に立つものばかりだった。

 二人は主にアンドロイドの事について調べ始める。

 エデン内には莫大なデータライブラリが存在し、何年もたった今でも調べきる事は出来ていなかった。


---


  結局、新しい情報が得られたのは三か月後だった。


「ゼノこれを見てくれ」


 オーに言われ確認する情報にはプロトタイプ以降のアンドロイドの製造についてが纏められていたものだった。


「SにPにC……ねえ」


 自分が捕獲した三体のアンドロイドを見ながら言う。


「やはりNは無い様だな、予想通りアルビオンが……これでは全部ハズレだな」


 オーの言葉ににやにやするゼノ。

 その様子にオーが気づく。


「ふっ……お前が言うのかよ」


 あははと笑いあう二人。


「せめてこの中の一体がこの三種類だったらなあ」


 ゼノは思わず天井を仰ぎ、今後の未来について少しの希望を見出すのであった。

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