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ワールドレクイエム  作者: husahusa
第一部「ワールドエンド」 第三章:過去編
26/76

真15話 問と答え

 アルビオンは尋ねる。


「国トハ何デスカ?」


 ネシアは答える。


「うーん……難しく言うなら、『国家の権利及び義務に関する条約に基づいた、主に大きさと独立性、統治機構や担税力などを備えた国家・独立国』かな?」

「簡単ニ言ウナラ?」

「人間が国ごとのルールを守りながら過ごす場所……ちょっと違うかもしれないけどね」


 ネシアは少し笑う。


 ――成程。


 アルビオンは尋ねる。


「国ヲ作ルニハ何ガ必要デスカ?」


 ネシアは答える。


「勿論人間だよ。人間が生活する為のいわばその場所で安全に暮らすための組織みたいなものさ」


 ――人間、それが暮らすための組織が国。


 アルビオンは尋ねる。


「人間ハドウスレバ作レマスカ?」


 ネシアは答える。


「人間を作る事はできないよ、人間は生まれるものだからね」


 アルビオンにはよくわからなかった。

 ネシアはアルビオンの状態を表すモニターを眺めていた。

 『エラー』と表示されているモニターを見て、またかとため息をつく。

 数秒間エラーを出していたモニターは通常状態に戻り、再びアルビオンがネシアに質問する。


 ゼノと別れてからの半年間、ネシアはこの繰り返しを永遠に続けている。

 アルビオンからの質問に答える。

 その答えが理解できたなら次の質問に、理解できなかったら数秒間エラーを出し、その後また質問を出す。

 ネシアは永遠に繰り返されるそれに飽き飽きしていた。


(ゼノはどうしているだろうか、リリーは目を覚ましたのだろうか)


 アルビオンの質問に答えながら、そんな事を考える日々だった。

 アルビオンも飽きないのか、次々とネシアに問いかけ続ける。

 しかし、ネシアの答えの半分以上は理解できずエラーを吐く。


 アルビオンは完全に壊れていた。

 壊れていたからこそアンドロイドの操作権だけは放棄しなかった。

 ネシアは常に逃げる隙を探しているが、その考えを見透かすようにネシアの傍には常に複数のアンドロイドが常駐している。


(逃げるのは無理か……)


 ネシアが諦めかけていた時に外から物音がする。

 地下にいたネシアにまで響いたその音はかなり大きい筈、アルビオンも物音には気づいていた。

 直ちにアンドロイドを外へと向かわせるアルビオン。

 これは好機と逃げ出そうとするネシアだったが、アルビオンに逃げたら、ゼノの命の保証は無いと釘を刺され、おとなしくなる。


---


 数分後、外に出ていたアンドロイドが帰ってきた。

 手荷物と言わんばかりに物体を地面に投げつける。

 かなりの重量を持っていたのか、大きい音を立てながら落ちるそれの近くまで移動する。

 ネシアは意外なそれの正体に驚く。


「アンドロイド?」


 どういう事だ、アルビオンが操っている筈のアンドロイドが何故こんな形で……。

 エデンで破壊された内の一体か?

 いや、あの時破壊されたアンドロイドは爆発に巻き込まれバラバラになっていた筈。

 このアンドロイドは五体満足のまま、少し顔面のパーツが故障している程度で綺麗な物だった。


「アルビオン、このアンドロイドは?」

「ピー! ピー! 所属不明、現在ノリストノ中ニ確認出来マセン」


(リストに無いアンドロイド? そんな馬鹿な!?)


 ネシアはアンドロイドの右腕を確認する。

 アンドロイドの右腕には、その形式や型、製造年数を彫ってある。


『P-2001-type-O』


(P? プロトタイプだと? 2000年前に初めて製造された型番じゃないか! そんな古代の物体が何でこんなところに? しかもこんな綺麗な状態で!)


「ドウカシマシタカ?」

「い、いやなんでもない」


 必死に平然を装う。


(アルビオンにばれてはいけない)


 兎に角ここから早く移動させないと。

 そう考えアルビオンに提案する。


「どうやらこのアンドロイドは機能停止している様だ、使い物になら無い様だし外に捨ててきたらどうだ?」


 完全に嘘だ。

 あのアンドロイドは旧式でありながらまだまだ動く。

 しかしアルビオンにはそれを伝えない。

 もしかしたらゼノの助けになるかもしれない。

 恐らくあのアンドロイドには、アルビオンの支配は届かない。

 ネシアは大きな賭けに出たのだ。


「……ワカリマシタ」


 アルビオンは少し考えたのか、ネシアの意見に賛成する。

 アンドロイドに指示を出し、プロトタイプアンドロイドを外へ運び出す。


「大丈夫か? 私も手伝うよ」


 ネシアが椅子から立ち上がりアンドロイドに近づく。

 その際にばれないように、1mmほどの小さな板の様な物をプロトタイプアンドロイドに貼り付ける。


「オ構イナク、ネシア本部局長」

「ああ、そうかい?」


 そのまま椅子に座るネシア。


(私に出来るだけの事はした、どうにか届いてくれ)


 神頼みのネシアの思いは、結果的にゼノに届くことになる。


---


 ゼノは16歳になっていた。

 完全に再現されたノースクを見てから、暫くはアジトに篭りきりだったゼノは、意を決して再びノースクを訪れる。


 前に訪れた時と変わらず巨大な樹があり、人々は盛んにその人生を全うしている。

 だがゼノはそれらが偽りの物だと知っている。


 改めて確認した後、ゼノは次にアーファルスへと足を運ぶ。

 アーファルスもノースクと同じ様に国が再現され、人間がそうする様に、アンドロイド達が暮らしていた。

 完全にアンドロイド達によって世界が再現されている。


(ネシアはどうしているだろうか)


 今まで敢えて近づこうとしなかったエデン第二支部へと向かう。

 そして到着した時、いざ目の前にすると足がすくむ。

 どうしても中へ入る事が出来ない。


 諦めて帰ろうとした時、一体のアンドロイドが放置されているのに気づく。

 何故こんな所に?

 疑問を持ちながらも恐る恐る近く。


 だいぶ前から放置されていたのだろう。

 顔は半壊し、身体は錆ついている。


「一体なんなんだ……」


 まともにアンドロイドに触れる機会が無かったゼノは、好奇心からアンドロイドを近くで眺める。

 腕・足・顔部分的欠陥が無い中で、顔だけが半壊している、それ以外特に目立った傷は無い。


(顔だけならパーツを取り替えて再び使い回せそうなんだがな)


 よく見てみると身体に何か張り付いている。

 小さい板の様な物を手に取ると、ハッとなり、ネシアがこれを仕込んだのだと確信する。


(きっとネシアだ!)


 ネシアからのメッセージだと気づいたゼノは、アンドロイドもアジトへと連れ帰る。


「重いっ……!」


 これは大変だ、帰るまで長丁場になるぞ。

 そんな事を考えながらも一筋の希望が見えたゼノの表情は約五年振りに笑顔だった。


---


「よいしょっと」


 アジトに帰るや否や、アンドロイドに貼り付いていたものを詳しく見る。

 直径1cm程の大きさの板の様な物。


「これは何だ?」


 そういえば、ネシアが言っていた。

 ここにはいろいろ資料があると。

 ゼノはアジトの一階、二階へと進む。


 二階の一室に、アンドロイドについてのデータが保管されているのを発見する。

 幸い、まだ機械は動くようだ。


「これか?」


 データライブラリを隈なく探しているとそれらしきものを見つける。

 見ると、この板の様な物はアンドロイドの『メモリーチップ』の様だ。

 アンドロイドの記憶領域を司る場所、人間でいうと脳を司る場所になる。


 どうやらモニター近くにある機械で中身を確認出来る様だ。

 メモリーチップを入れて中身を確認していく。


「だめか……」


 どうやら新品みたいなので、特にデータは入っていなかった。

 どういう意図でこれを仕込んだのかわからないが、きっと何か意味があるのだろう。


 そういえば、あのアンドロイドにもメモリーチップが入っているのだろうか。

 一階に横たわるアンドロイドの場所まで戻る。


「何処を動かせば出るんだ?」


 適当にアンドロイドを弄っていると、頭の左側で少しだけ窪んでいる場所を見つけた、勢いのまま押してみる。


 ――プシュッ。


 空気が噴き出す音を出しながら、ケースの様な物が頭部から射出される。

 中には同じように一枚のメモリーチップがあった。

 やはりな……と、そのメモリーチップを取りながら再び二階へと足を運ぶ。

 同じように機械にメモリーチップを通す。


『識別番号:P-2001-type-O

・状態:機能停止

・メモリーチップが破損しています。

・一部ロックの掛かっているものがあります。』


 モニターに表示されている文字を見てもいまいちピンとこない。


『メモリーチップを修復しますか?

・はい ・いいえ』


 更に表示された文字に手を止める。

 メモリーチップの修復。

 あのアンドロイドの修復をするかどうか聞かれているのと同じだ。


 ゼノは迷う。

 本当に修正してもいいのか?

 修正した途端襲い掛かってくるんじゃないのか?


(いや、大丈夫だ)


 メモリーチップを修正したとしても、アンドロイドの身体に戻さなければいい。

 ゼノはとりあえず、モニターに表示されている選択肢のはいを押した。

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