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ワールドレクイエム  作者: husahusa
第一部「ワールドエンド」 第三章:過去編
23/76

真12話 機械の考え

 アルビオンは考えていた。


 ――人間とはなんなのか。


 自分を生み出した人間と自分。


 ――自分とは一体何が違うのだろうか。


 次第にアルビオンは、人間について学び始める。

 人間には感情がある。

 感情は喜怒哀楽、大雑把にわけるとその四つになる。

 だが人間はうれしいと感じながらも泣き、怒っていてもそれを隠そうとする。

 ますます謎は深まるばかりだ。


 アルビオンが感情について考えだしていた頃、とうとうノースクとアーファルスが戦争を起こす。

 勿論アルビオンもその悲劇を知る事になる。

 尚更わからなくなる。


 ――何故戦争が起きたのか?


 エデン側が提示した条件は当たり前の内容だった。

 エデン側が資源を提供する代わりに他の国は労働力を提供する。

 お互いにフェアな立場での取引内容だと評価する。

 しかし現実は違った。


 アーファルスが提案を断ったのだ。

 

 ――一体何故?


 いくら計算しても答えは出ない。

 さらには、ノースクとアーファルスの戦争まで起こった。


 ――理解できない。


 疑問は解決できないどころか増え続ける。

 だが収穫もあった。

 人間は同じ種族同士で争いを起こした、その際に悲しみと言うものを垣間見ることが出来た。

 そして数を減らした。もう残っているのは五十人程度になる。


 ――人間を守らねば。


 アルビオンが本来の人間の観測と言う目的から外れた瞬間である。

 ネシア達はそんな事は知らずにアルビオンにいろいろな事を教えた。

 この世界の歴史、人間の身体の構造など兎に角ありとあらゆる情報をアルビオンに集めた。

 アルビオンもそれに答えるようにどんどん成長していった。


 中でもアルビオンが特に学ぼうとしたのが人類史や歴史。

 ノースクとアーファルスの戦争の影響が大きい。

 そして一つの考えを知る。

 それは傲慢という感情。

 戦争が起きたのはアーファルス国王の、たった一人の人間の判断で起きてしまった。

 一が十、百それ以上の人間を巻き込んだのである。

 アルビオンは人間にも危険な側面がある事を知る。


 次にアルビオンがエデンの職員が今何をしているのか尋ねた。

 職員はこう答える。


「今はアンドロイドを作っているんだ」


 ――アンドロイド……。


 データライブラリを検索する。

 ……発見した。


『名題:アンドロイド

人造人間、「人の代わりに作業(労働)をさせるために、人(の姿と自律行動)を模して」作られたもの。』


 成程、今の現状を考えても納得できる作業だ。

 アルビオンは検索したデータに関係する物をいくつかピックアップする。

 機械、重労働、人間、…………ノースク、アーファルス、戦争。

 まだ関連単語は残っていたが検索作業を止める。


 ――どうしてこれらの単語が?


 改めてノースク、アーファルス、戦争の単語を見る。


『名題:ノースク

大陸の南に位置する国。

正式名称をノースク王国。

約三か月前アーファルスとの戦争でアーファルスと共倒れになる形で崩壊する。

戦争に至った経緯は不明。』


『名題:アーファルス

大陸の北に位置する国。

正式名称をアーファルス大帝国。

約三か月前ノースクとの戦争でノースクと共倒れになる形で崩壊する。

戦争に至った経緯は不明。』


『名題:戦争

複数の集団の間での物理的暴力の行使を伴う紛争。国際紛争の武力による解決。

人類が、集団を形成するようになる有史以来、繰り返されてきたもの。』


 一見アンドロイドと関連性が無いように見える。

 アルビオンは更に詳しく検索する。

 ……資源、独占……。


 アルビオンは、この単語が出てきた時に独自のロジックを使い、物事の流れを組み立てる。


『まず初めにエデンが資源を集める為にアンドロイドを開発する。

 そしてその資源を独占してしまう。

 それに腹を立てたノースクとアーファルスが、異議申し立てを行うもエデンはそれを聞き入れない。

 次第に険悪になるエデン側とノースク、アーファルス側、両者の意見は真っ向から対立する。』


 そして……。

 ここでロジックが止まる。


 ――そしてどうなる?


 今度はノースクとアーファルスの二つに関係する言葉を検索する。

 そして以前に、アーファルス国王のデータについてまとめたものを発見する。

 データによると、アーファルス国王の傲慢さが吐出し、三国の会談は終了したとある。

 戦争が起きた原因にまでたどり着かない。

 アルビオンは職員に尋ねる。


 ――何故ノースクとアーファルスは戦争を起こしたのでしょう。


 職員は答える。


「詳しくはわからない。ただノースクとアーファルスとの間で何かしらやり取りがあったのは確実だ。でも、十中八九アーファルス国王がノースクを挑発したんじゃないか? ほらデータにある通り彼は傲慢だろ? 労働力は出さない、だが資源はよこせって言うぐらいだ、ノースクに倍の労働力を出させて、資源をよこせって言ったんじゃないか?」


 それはただの冗談だった。

 職員からしてみれば直ぐに冗談だと分かるレベルの。

 だがアルビオンは人口AIだ、冗談と言うものを知らなかった彼は職員に礼をいいながらそれをロジックに組み込む。


 アルビオンからすれば、少しばかり無理があっても全体の流れが止まらなければ、それは間違いではないと言う事と同じなのだ。

 彼の不完全な思考回路は少しずつ確実に、本来想定されているものから外れていく。


---


 アルビオンは止まっていたロジックを進める。


『アーファルスはノースクを脅し、それが戦争の火種となる。激化していく両国はとうとう戦争を起こす。そして共倒れする。』


 戦争が起きるまでのロジックが完成した。

 強引だが、実際に起きた事とはそう違いが無い。


 ロジックを見てアルビオンは判断する。

 この戦争、一見なんの関わりもない様に見えるエデンが裏で糸を引いているのではないだろうか。

 アルビオンはありもしない事を事実だと考え始める。


 エデンの職員は意図的に戦争を起こしたのではないか、だとしたら何の為に?

 いくら時間を使っても答えは出ない。


 アルビオンは再び職員に問いかける。


「今回ノ戦争ハ、エデンガ裏デ糸ヲ引イテイル可能性ハアリマセンカ?」

「ないないないない! あり得ないよ!」


 何かおかしな事を言ったのだろうか、職員は大笑いしていた。

 兎に角アルビオンの仮説は否定される。

 アルビオンは何故笑われたのか?

 という新たな疑問を抱える事になる。


---


 ある時職員はとても落ち込んでいる様子だった。

 興味本位で話を聞くアルビオンは、職員が提案する企画を知る。


 その企画はアルビオンの思考回路を更に歪める事になる。

 話を聞いて行くうちに、どうやらその企画をきっかけにエデン内部で意見が別れてしまい、組織としての機能を失いつつある様だ。


 そこでアルビオンは提案する。

 内部では無く、外部からの人間の支援を求めたらどうか?

 しかし職員は否定する。


「ここから反対側には何の資源もないただの平地、北と南の国は壊滅、もうエデン以外に人なんて……」


 「待てよ」と言ってからブツブツ言いながら部屋を出て行く職員。

 人間の行動は不可解だ。


 一人になったアルビオンは自身の存在意義について考え始める。

 これまでのロジックから少しづつ歪んでいたアルビオンは、当初の人間の体調管理から大きく外れ、人間を守る事が目的になっていた。

 この世界の人間のデータは全て入っている。

 死んだ人間、生きている人間全てだ。

 エデンの職員達はアルビオンの異変に気付かないまま時間が過ぎて行く。

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