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ワールドレクイエム  作者: husahusa
第一部「ワールドエンド」 第二章:変化編
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真3話 襲来セシ鉄

 -元の月第7日-


 ゼノはアジト近くの林の中の切り株に、ため息と共に腰掛ける。


「らしくねえな、イデアルみたいだ」


 悪態をつきながらベルがやってくる。


「よう、準備はもういいのか?」

「元々準備する様な事も無いからな」


 ベルも近くの切り株に腰掛ける。

 そして、ふと気になった事を聞く。


「そういえば今回は全員参加なんだな」


 記憶通りなら、前回の時はイデアルはいなかった。


「ああ、もちろんだ」


 当然と言わんばかりにゼノが答える。

 この時点で前回と違いが出ていた。


(そういえば前はイデアルが怒って任務に不参加だったな)


 今回はイデアルと会話する為にアジトを出たのもあるが、ベルが記憶を失っていないというのもあり、任務に行く事になんの不満も出さなかった。


(記憶を維持する魔石ベルナンド、これのおかげだな)


 ベルが取り出そうとするも無い。

 確かにこのポケットに入れておいた筈だったが……。


「あれ?」

「どうしたんだ?」

「い、いや大丈夫だ」


 ゼノはベルナンドの事を知らない。

 ガーネア姫の事もある。

 元々の持ち主であるイデアル以外には、迂闊に教えるわけにはいかなかった。


「本当にどうしたんだよ、なんかおかしいぞお前」

「いや大したことはない、少し忘れ物を思い出しただけだ」


 思えば4日の朝に触れたベルナンドは、ガーネア姫に渡したものだった。

 その時からオーから受け取った方のベルナンドを見た記憶が無い。


(あのベルナンドの大きさは俺の掌ぐらいの大きさだ、見失う訳がない)


 何時からだ?

 記憶を辿るが、謎は解けない。

 ループの初日から無いのなら初めから無かったのかもしれない。


(だとしたら……?)


 オーから受け取った後に、アルビオンから放たれた衝撃。

 あれはきっとリセットされる時に起きた衝撃なのだろう。

 であればその時に落ちたのではないか。

 折角受け取った物を活用出来る事なく手放してしまった事に落胆するも、イデアルにこの事を知らせなければと立ち上がる。


「すまんゼノ! 少し準備しないと行けなくなった、俺はアジトに戻るぜ」

「おう、しっかり準備しろよ」


 ゼノをその場に残したままアジトに走る。


---


「イデアル! ここにいたのね!」


 どうやらガーネア姫がイデアルに詰め寄っている様だ。

 見つかったと言わんばかりのイデアルの表情にガーネア姫も不満顔をしている。


「どうして逃げるの!?」

「逃げている訳じゃないよ」


 困り顔をするイデアルがこちらを見る。


(俺には何もできないよ)


 ベルは心の中で呟く。

 イデアルの視線を無視して、念のため、部屋にベルナンドがあるかもしれないと向かう。

 イデアルはベルに無視されたことにより落胆している様だった。


「ちょっと待って下さい!」


 ガーネア姫に遅れてナーファがやってくる。


「ガーネア姫! 勝手に出歩かれては困ります!」

「でも……」


 悲しげな表情でイデアルを見るガーネア姫。

 その視線から目をそらすイデアル。

 観念したのか寂しそうな顔をしてナーファが謝る。


「すいませんでした、一目イデアルを見たかっただけなの」


 「では」と実にお姫様らしくドレスの両端を持ちお辞儀をして、ナーファと部屋に戻っていく。


「いいのか? あんな態度を取っていて」


 同じく遅れて帰ってきたゼノが言う。

 イデアルにも何かあるのか複雑そうに「ああ」と一言だけ残し部屋へ戻っていく。


「なんだかねえ……」


 ボリボリと頭を掻きながらゼノも複雑そうな顔をする。

 一同は各々に、こんな事でしっかり護衛が務まるのかと不安がよぎる。


『ゴオオオオオっ! ドンっ! ドンっ! ドドンっ!!』


 突如アジトの外から爆音が響く。

 かなりの振動が辺りを襲う。


「何があった!?」

「わからない、外で爆発でも起こったのか!?」


 自室で身支度をしていたガンデスが飛び出してくる。

 ゼノがガンデスの言葉に答えながら二人で外へ出る。

 他の者も遅れながら外に出てくる。


「なんだあれ」


 ベルの目の前には約20メートル程の二本足で立つ巨大な物体が現れていた。

 その物体は人間と同じ形をしている。


「巨大な人間?」


 リリーが息をのむように呟く。


「見た目は同じだがな!」


 皆が驚く中でイデアルだけが巨大な人間に向かっていく。


「待てイデアル!」


 イデアルにつられる様に他の者も向かっていく。

 ベルはエデンで資料を見た時の事を思い出す。

 資料で見たアンドロイドの見た目と今目の前にいる巨大な人間の見た目が同じなのだ。


「ナーファ! お前はガーネア姫を連れて逃げろ!」


 ガンデスが叫ぶ。

 ナーファもガンデスの指示に従い、ガーネア姫を連れて巨大アンドロイドとは逆方向の林へと向かう。


「リリーとイデアルは援護を! ベルとゼノは俺と一緒にまずは右足を破壊するぞ!」


 ガンデスが指示を出す。

 いつも任務でやっているように言うが、今回の相手は得体のしれない巨大な物体だ。


「脚を破壊ったってどうすりゃいい!」

「とりあえず攻撃するしかねえな!」


 オメガのメンバー達は各々攻撃するが、効いている様子がない。

 それどころか、巨大アンドロイドはオメガメンバー達を無視してガーネア姫へ向かっている様だ。


「こいつ! 一向に倒れねえ!」


 ベルが剣を作り必死に切りつけても、イデアルが氷で脚を固めても、ゼノがひたすら殴りつけても全く止まるそぶりを見せない。


「一点に集中しろ!」


 ガンデスが加えて指示を出すが巨大ロボットの脚は止まらない。

 変わらずガーネア姫に向かい続けている。


「ゼノ! 脚の隙間に氷を入れろ! 関節を凍らせるんだ!」

「了解!」


 イデアルが氷で右足の関節を固める。

 少し動きが鈍ったが、それでも止まらない。

 人間の歩幅と巨大アンドロイドの歩幅では差がありすぎるせいで、ガーネア姫とアンドロイドの距離の差はどんどん狭くなる。


「地面だ! 地面を凍らせろ!」


 ゼノの思いつきでイデアルが地面を凍らせる。


「ベルは左側に!」


 ゼノに何か考えがあるのだろう、ベルも従う。

 ベルに指示をした後にゼノが凍らせた地面の先をとてつもないスピードで掘り進める。


「これぐらいか……?」


 丁度アンドロイドの脚幅程の穴を作る。

 それと同時にアンドロイドが凍らせた地面の上を歩き始める。


「今だ! 右脚を一気に押し出せ!」


 ゼノの意図に気づいた皆は一斉に右脚に攻撃を集中する、攻撃によって押し出された右脚はゼノが掘った穴に落ちる。


「ベル! 頼んだ!」


 ゼノの掛け声と同時にベルがハンマーを作り出す、そしてハンマーで左側から一気に殴り飛ばす。

 左側から力を加えられたロボットの重心は右側に、しかし右脚は穴に落ちており、アンドロイドはバランスを崩し倒れこむ。

 倒れ込んだ瞬間に辺りに巨大な地響きが走る。


「今の内に片脚だけでも破壊するんだ!」


 衝撃に怯む事なく、ゼノはすかさず次の行動に移る。

 この時、巨大なアンドロイドをなんとかしようと皆夢中になっていた。

 夢中になりすぎていて一人いない事にも気づかない程に夢中になっていた。


---


 ロボットが倒れ込んだ衝撃は、ガーネア姫を連れて逃げていたナーファにまで届いていた。

 その衝撃で足を挫いてしまったガーネア姫は歩くことすら困難になっていた。

 このままでは追いつかれてしまうと考えるナーファの前にリリーが現れる。


「リリー? どうして此処に? あの衝撃は? 皆は無事なの?」


 ナーファは目が見えないが、自身の能力で数キロ先の地形まで把握する事が出来る。

 ナーファは巨大なアンドロイドが倒れている事に気づいていた。

 その周りに、仲間たちが取り囲むようにアンドロイドを破壊しようと手を尽くしているのがわかる。


「アンドロイドの動きを封じたのね! よかったそれでリリーは私達を連れ戻そうとしたのね!」


 危機的状況を乗り越えた事に安心し、笑顔で言う彼女に、リリーはイラつきを隠せないでいた。

 隣にいるガーネア姫もリリーの表情を見てナーファに伝えようとする。


「あ、あのナーファさん……」

「相変わらず厄介な能力ね」


 ガーネア姫の言葉を遮る様にリリーが呟く。

 ナーファの能力は人の表情までは読み取れない。

 何処に何がどれだけあるのかという事実しかわからない。

 人間の感情まではわからないのだ。


 リリーは普段のおだやかな表情からは想像がつかない程の気迫あふれる表情でナーファに近づく。

 余りの恐ろしさに、ガーネア姫は恐怖で動けずにいた。

 ナーファは今どのような状況なのかいまいちの見込めていなかった。


「リリー?何を……」


 ナーファに戦闘能力は無い、同じくガーネア姫にも戦闘能力は無く、目の前で起きる光景を見ている事しか出来なかった。


「精々利用させて貰うわ」


 リリーはナーファの頭部を掴み右目を押し込む。


「――ユニット設定をリセットします。」


 先程までとは違い、ナーファの口から無機質な機械音声が流れる。

 リリーは薄く小さい長さ5cm代の板の様な物を取り出し、それをナーファの口に差し込む。


「――新規設定を読み込みました、マスター設定を『神崎莉里』に設定、その他の設定をして下さい。」

「他は今までと同じでいいわ、ただ命令権は私が持つ」

「――音声認識完了、命令了解、プログラム『ナーファ』再起動します。」


 そう言ってナーファは何事も無かったかの様にガーネア姫に向かって「戻りましょう」と言う。


「あの……い、今のは」


 ガーネア姫は何が起きているのか理解できず、リリーに何が起きたのか尋ねながらから逃げようとするが、思うように足が動かない。

 ガーネア姫の顔からは普段の気品あふれる表情や、仕草は無く、年相応の女の子の様に恐怖で満たされている。


「後3枚しか無いんだけれど、使うしか無いわね」


 目の前の出来事が理解出来なかったガーネア姫に、リリーがナーファにしたのと同じ様に、右目を押し込み板の様な物を差し込む。

 事を終えた後、これで少しはやりやすくなるだろうとリリーはロボットがいる方向に戻る。


---


「リリー何処に行っていた!」

「ごめんなさい、アンドロイドが倒れ込んだ衝撃で飛ばされて……」


 苦しい言い訳だったが、あまり詰め寄る余裕もない様なガンデスは、アンドロイドの方に向き直る。

 何とか動きを止める事に成功したが、次にいつ動き出すかわからない、しっかりトドメを刺そうとした瞬間にリリーから遅れてきていたガーネア姫とナーファが居る方向にもう一体のロボットが現れる。


「もう一体現れたぞ!」

「どういう事だよ!」

「またかよ!」


 各々が口走る。

 リリーを含めた誰もが驚愕する。


「兎に角ナーファの方に急ぐぞ!」


 ベルの声でナーファの方へ向かう。

 ナーファ達も此方に向かっていた様で何とか合流するが、後ろから二体目の巨大アンドロイドが追いかけて来ている。

 狙いは変わらずガーネア姫の様で双方一直線に此方に向かって来ている。


「皆! 来ちゃダメ!」


 ナーファがそう言った直後、二体目のアンドロイドが眩い光を放ち辺り一面を破壊する程の衝撃を放つ。

 ナーファは勿論、近くにいたガーネア姫やオメガのメンバーが住むアジト、近隣の林全てを光が飲み込む。

 所謂自爆というものだったのだが、そんな事を知らないベル達にはこれが「光の魔法なのか」と勘違いしながら爆破の衝撃に吹き飛ばされ意識を失ってしまう。

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