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05

 入学式で新入生挨拶をしたのはオスカーだった。

 成績最優秀者が行うそれは、ゲームでもオスカーの役割だった。


 彼はその身分に甘えることなく常に勉学にも魔法の訓練にも励んでいる。純粋にすごいと思う。幼い頃からその姿勢は変わらなかったので、一度ふと言ってしまったこともある。努力を続けることができるのは本当すごいですね、と。

 将来国を負う者として努力だけは忘れないようにと思ったんだよ、とオスカーは少し照れながら答えてくれた。


 オスカーのルートではアリスがオスカーに勉強を教えてもらうイベントもあったように思う。

 魔法操作について教えてもらうのは魔術師団長の息子のルートだったはずだ。


 魔術師団長の息子は生まれた時から膨大な魔力を持っており、それを持て余しはしつつも才能に恵まれていた気がする。

 オスカーは才能もさることながら努力を惜しまぬ人とされており、その対比もシナリオのどこかで書かれていた。



 オスカーが壇上に上がった瞬間、ほぅ、という乙女たちのため息が聞こえてきたのは空耳ではないと思う。


 攻略対象者達はメインキャラなだけあって皆整った顔をしている。


 クリスやオスカー含め攻略対象者達と触れ合うことの多くかったため、深く考えていなかったが、改めてそれを思い知らされた気分だ。


 まあ、未だ婚約者のいない第一王子というだけでも競争率は高そうなのに、美貌も兼ね備えているのだから女性陣のアプローチはすごいものになるだろう。

 貴族女性らしく水面下のものから、それこそ実際のものまで。


 そんなことを考えつつ壇上で話すオスカーを見ていると、ふと視線が合った。


 そして、彼はふわりと誰もが魅了されるような顔で、笑った。


 普段彼を見慣れている私ですら胸が高鳴ってしまう破壊力。

 周囲の女性陣にもこれは毒だろう。


「お姉さま、お姉さまを見て殿下は微笑んでらっしゃいましたね」


 隣に座っているアリスに耳打ちされる。


 オスカーとアリスは我が家にアリスが迎え入れられた後に光魔法の使い手として王城に挨拶に行ったことで顔を見知っている。

 最近では私とアリスで王妃殿下主催のお茶会に招かれるようにもなったため、オスカーと話す機会は他の令嬢よりも多く、親しくしている。

 

 これも、もちろんゲームのシナリオには無かったことだ。


「オスカー殿下は皆に微笑まれたのですよ」

「もう、お姉さまったら、鈍感なんですから」


 ぶつぶつぶつ、と呟くアリスの声はよく聞こえないけれども、きっとオスカーのことを褒めているだろう。


 オスカーの挨拶の後に理事長の挨拶があった。

 理事長はいまは公爵位を持つ王弟殿下だったはずだ。

 第一王子と同じ黒髪の美丈夫の登場に、再び生徒たちのほぅ…というため息が聞こえた。


 前世の校長の話と比べると、理事長の話は簡潔に、理事長という立場の話としては早く終わった。


 理事長に似たキャラクターがゲームに登場していた気もするが、入学式の時のスチルなのか他のものなのか判別がつかなかった。

 


 クリスと会い、この世界が乙女ゲームだということを思い出してから、年々、ゲームの詳細を思い出せなくなってしまっている気がする。


 ノートに思いついたことを記入していったので大まかなイベントなどは覚えていたりする。


 けれども、スチル絵の詳細など、少しずつ少しずつ忘れていってしまっている。


 攻略対象者と会っていれば思い出すことができるだろうか。


 まず、アリスとの仲がゲームとは違うのだ。


 この先何が起こるかある程度知っていたら対応できるのか、それともシナリオの強制力が働いてしまうのか。


 今はまだゲームの開始前だから耐えられている気持ちだとしても、ゲームが開始してクリスとアリスの仲が深まっていくのを間近で見て私は耐えられるのかだろうか。


 それとも、シナリオの強制力などがなくなったら私は他の人に恋をしたりするのだろうか。


 もしくは無事にアリスとクリスが結ばれた後に私は政略結婚で誰かと穏やかな結婚生活を送ることができるのだろうか。




 クラス分けは乙女ゲームと同じく、私もアリスも同じ学年になる攻略対象者達も全員同じクラスだった。



 ついに、私の運命の一年が始まることになる。




 

 



 

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