5冊め 『項羽と劉邦』境遇違いの二人の熱戦
[新潮文庫] 著者:司馬遼太郎
項羽に劉邦。ふたりとも中国の歴史上実在の人物。
時代は漢より前。だって劉邦が漢の高祖だからね。
殷・周・秦・漢・三国(魏・呉・蜀)・晋・南北朝・隋・唐・五代・宋・元・明・清・中華民国・中華人民共和国
と、王朝が並ぶことを顧みると、すんごい大昔だとご納得いただけると思います。最初から4つめ。
日本では卑弥呼以前。
ほぼ伝説扱い。
ちなみに上記王朝、「もしもしカメよ」の歌で覚えると良い、と田中芳樹先生が著作品の中でおっしゃっておられました。
私はそれで覚えた。妹にもそれで教えた。
すると妹から「"五代"と書いてテスト間違った!」とクレームが来ました。
当たり前だ――!!
五代って五代十国時代のことだからね?! 王朝いっぱいあるからね??
注釈し忘れた私のミスです。あああ、妹よ。
閑話休題。
そんなわけで、伝説世界なので、こじつけがたくさんあって面白いです。
劉邦の持ち上げ話。確か……。彼は竜である赤帝(南海紅竜王)の子であって、その証拠に身体に72個のほくろがあったとか。
待って、何その理由。
血筋ってほくろの数で証明されるものなの?
そして"四面楚歌"で有名な項羽は、良家のお坊ちゃんで有能な武将だったのに、沛のヤクザ者、劉邦に負けて残念だったよね、と、この本を読むとしみじみ思います。
そう、まるで育ちが違う、スタートが違う、境遇も立場もまるで違う。そんな二人の男が、同じ天下を目指して衝突していく。そこに生まれた物語は本当に複雑。なのに裏付けされる説得力! これは本当にもう、さすがは、さすがは(2回)、司馬遼太郎先生!! 圧巻の名作です。
ところで劉邦は部下たちも有名ですが、彼の奥さんも怖い方向にエピソードと名前を残しています。古代は過激。
数十年前の知識を引っ張り出して、今これを書いているので、間違っていたらごめんなさい。
確認したい本がね、実家なのよね。
何にせよ、作品の完成度は間違いないです。司馬先生は可能であれば、その時の天候まで調べてお話書かれる方とお聞きしてます。古代中国はともかく、『竜馬がゆく』はそうだったらしく、作中の天気も要注目です。あの小説は竜馬暗殺時の締め言葉がスゴイ良かった。別の本になるから、一言だけ引用。
<その使命がおわったとき惜しげもなく天へ召しかえした>
しびれますよねぇ。"惜しげもなく"。暗記しちゃう程かっこいい。
あ、いかん。『項羽と劉邦』の話してたんだった。
そんなもんです、脱線って。
とにかく『項羽と劉邦』、良いです。文庫版は古代モチーフの表紙も激烈好みで、相当影響を受けました。まさに、自分を作った10冊の中の1つとして数えて間違いないです。