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絶対掌握者、魔王ちゃん  作者: 蕾々虎々
第0章 遠い遠い、古の物語 -大賢者様と魔王-
2/5

0-2.古の物語

 昔々、それはそれは凄い大賢者様がいました。

 彼は誰よりも賢く、誰よりも魔法が上手く、そして誰よりも優しい人でした。

 彼は一生懸命修行をして、賢く、強くなったのです。それもみな、困っている人々を助ける為。


 ですが、そんな強い大賢者様にも出来ないことがありました。

 自分の目の届かない遠い所。自分の手を出せない他の国。そして、自分の理解が及ばない人の悪意。彼は誰よりも優しかったからこそ、全ての人を助けられないこと、自らの行動により周囲に迷惑を掛けること、人を助ける為に人を傷付けること。それがどうしても出来ませんでした。


 そして何より、自分が居なくなった未来が心配で仕方ありませんでした。


 大抵の人は理想に届かず妥協してしまう所を、大賢者様は諦めませんでした。考えて考えて、その命脈(めいみゃく)が尽きようとする前に、思い付きました。

 人間には不可能なら、人間では無い者にやらせれば良い、と。

 ただ、賢い彼にも一つだけ誤算がありました。彼の優しさはその優しさ故に、長い生涯(しょうがい)の中で他の人の何十倍もの悪意に晒され、擦り減ってしまっていたのです。

 善悪の判断が、長い人生の中で歪んでしまっていたのです。


 彼は残りの生涯をその魔法を開発することに捧げました。そして、その命が尽きる前に完成したのです。完成、させてしまったのです。

 彼はその魔法に、全てを掌握する王の魔法、魔王と名付けました。

 しかし人の身を超える存在。そんな魔法を産み出すには膨大な、膨大な魔力が必要になります。彼はその解決策も考えていました。

 自身の魔力と残り僅かな命を以て魔法を産み出す。しかしその魔法はそのままでは力を発揮出来ない。そこで、その魔法本体とは別の魔力を補給する為の魔法で以て(もって)、その膨大な魔力を補給させれば良いと。


 そしてその晩、彼は魔法を発動しました。これでずっと望んでいた優しい世界が実現出来ると。万感の想いと共に、その身を捧げました。


 そして、世界に王が産まれ落ちました。いえ、王と言うのは正しく無いのかもしれません。大賢者様が敢えてそうしたのかは分かりませんが、産まれ落ちた王は、女の子だったのです。

 まだまだ魔法としては未完成の王。その王たる女の子を育てる為の揺り籠も、時を同じくして世界に降り立ちました。

 それこそが現代に残る最大の神秘、ダンジョンなのです。


 世界各地に突然現れたダンジョンに各国は騒然(そうぜん)とし、始めは慎重に調査を進めていました。ですが、すぐに目の色が変わります。数多の困難を孕んだ探検の末に発見されたある物。それは、従来の魔法を遥かに超えた、奇跡とも言える力を持っていたのです。


 その噂は抑制する間もなく世界各国に広がり、各国はすぐに我先にとダンジョンに人を送り込むようになりました。

 そしてそれは、大賢者様の想定通りでした。そこに何にも代え難い宝物が納められている限り、人はその(ごう)で以てそれを求める。業により集まる人こそが業を滅ぼす為に産み出された王へ魔力を献上する為の生贄だと、そうとも知らずに。

 人の業を集中させ、効率良く業を裁く処刑台でもあるダンジョン。そして、それは同時に手の届かない悪意に手を届かせる為の膨大な魔力を掻き集める、補給路でもあるのでした。


 やがて、魔王と名付けられた女の子はその力を完全な物としました。その力は、人の身に余る悪意を感知した時、全ての悪意を根絶やしにする為に振るわれると、そう伝えられています。


 こうして世界は、新しい秩序を手に入れました。世界に蔓延る(はびこる)悪意を根絶やしにする為の、歪んだ秩序が……。

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