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第五十九話 黒幕登場

 オズワルドの沈黙した身体へ向かって、ドーフンはその大きな顔で大きな口を開く。

 そして耳を塞ぎたくなるような大声を放つ。


「ギルドじゃ油断して当たらなかったが、『あのお方』から貰った力を持ってすれば、金級っていってもこの程度か。

お前らの道どりから先回りして待ってた割にゃ、あっけねえ終わり方だぜ」


 高いところが好きなのか、彼はドラゴンの死体の上で言った。

 渋い顔をするアダマスはスカートを少したくし上げて太腿に巻かれたガンベルトのホルスターからリボルバー拳銃を抜く。


「おい。そこの女共、俺様に従うってんから生かしておいてやるが、もし逆らうってんなら……ガッ!」


 銃弾は両膝への二発。金属音が鳴り響く。

 指差して何やら早口で捲り立てるところへ有無を言わさない正確な発砲である。

 白い蒸気が銃口から「パシュリ」と噴き出ると同時にゴスロリスカートを翻し、唇で煙をひと吹き。

 彼は眉間に皺を寄せ、一言を落とした。


「息が臭い」


 土が舞った。

 ドーフンはゴロゴロ転がりながらドラゴンから落とされ、膝を抱えているのである。膝が撃たれ、中の皿が割れているなら起き上がれない。


 しかし一同は近寄らずに目を離さなかった。

 彼が起き上がると確信しているのである。

 なお、アーサーだけは「そんな場合じゃないだろう」とワタワタと自称竜殺しの魔剣を抜いてとどめを刺そうと頑張っている。

 視線に耐えきれなかったドーフンはガバリと起き上がってまた煩く喚いた。


「テメェら少しは油断しろよ!近づいたところを襲い掛かれねえだろ」

「だってこのパターン、絶対起き上がるヤツだし。映画館でよく見た」


 起き上がる彼は「俺の分かりやすさは映画並かよ」と、銃になんて撃たれてなかったかのようにピンピンと立ち上がった。

 皮膚がめくれ上がり、その内側が見える。


「その『骨』は……」

「おお。見えちまったか。ヘヘッどうだ、驚いたろう」


 そこにあったのは紛れもなく金属のフレーム。そして口から漏れる黒い煙。

 紛れもない『改造人間』の証明だった。

 ドーフンはそれをこれ見よがしに見せる。

 

「ヒィッ!?」

「アーサーうるさい。

改造人間なんて、そんなに驚くものでもないじゃないか」


 が、彼の理想通りに「ヒイイ」と怯えるのはアーサーのみで、目の前の光景は温度差がクッキリと浮かんでいる。


「はぁあっ!?もっと驚けよ!コッチはわざわざ手術してるんだぞ。メチャクチャいてーんだぞ!」


 冷めた目で返すアダマスにドーフンは足をブンブンと振り回してフレームを見せた。

 見せられる側としては改造手術よりも足が汚いままなのが気になる。フランケンシュタイン党は脚フェチでは無いらしい。


「うーん、こんな職業していると新聞に載せないだけで、割と目にするしなぁ。ついこないだも見たし。すごくパンツが大好きな人。

天丼芸もここまでやられると飽きるっていうか。

膝に当たった時に金属音がした時点でバレバレっていうか、キャラ的に改造を受け入れてそうだなっていうか。

どう思うかな。ハンナ」

「とりあえず驚いてあげれば宜しいかと?」

「どひーびっくり。こうかな?」

「もっとじゃないでしょうか」

「どひゃーびっくりぽんぽん……ぽんぽこりん!」


両手を広げて口を広げて驚く動作をしてみるがドーフンは下を向いて耳から小さく黒煙も吹くばかりだった。

なるほど、どうやらお気に召さなかったらしい。こんなに頑張っているのになんて酷いヤツなんだ。

ドーフンって悪いヤツだなー。だから首をクイと回してレオナに言った。


「ボク一人じゃダメらしい。レオナもやって」

「えー、面倒くせーな。だいたい人数の問題じゃないって」

「ダメ!レオナもやるの!」

「……ったく、しょうがねーな」


 レオナはアダマスの小動物的な駄々を見、キリリとした表情筋を緩ませる。

 そうして彼女は急々と準備を始め、その様子をハンナが撮影。


 途中アーサーが「ボクは何をしてれば良いでしょうか?」「ああ、好きにして良いよ。なんなら一緒に驚いてはいかがでしょう」「いや、それはちょっと」と、そういった感じのやり取りをして、サーベル片手に立ち尽くしていた。

 なにかないものだろうか。

 彼は思いつつキョロキョロ辺りを見回してみると、先ほどよりもある変化があった。


(あれ?オズワルドさんの死体が無いぞ)


 オズワルドの生死は決まっていない。

 しかしアーサーの中ではもう勝手に死んだことになっている、オズワルドの身体が無くなっている事に気付いた。

 そして変化がもう一つ。


(オーパーツが、動いている!?)


 それはレオナがアダマスと一緒に『一発芸・驚いた動き』をしようとするのと同時だった。

 オーパーツの装甲がカタカタと動き、爆発するように一気に宙へ放出されたのだ。

 それぞれがジグソーパズルのように連なっていて、ひとつの大きさは瓦一枚といったところ。

 放出された装甲は空中を浮遊したまま「パリ」と音を立てて光を纏った。あれは静電気だろうか。

 そして装甲版は超高速で回転しながら飛行して襲い掛かってきた。その速度は鳥なんかよりもずっと速い。


「てめぇら、俺様を舐めやがって。やっち……なんだと!?」


 改造人間のドーフンの身体がバターのように切れて、上半身が宙に舞う。威力は銃なんかよりもずっと強いと判別出来た。

 レオナはアダマス抱きかかえ、ぞしてアーサーの元へ一瞬に辿り着き二人を抱えて全てを叩き落とす。

 一方でハンナは壁蹴りを加えた軽やかな動きで立体的な回避をしていた。

 

 そうしている内にオーパーツの本体から立体映像が宙へ大きく映し出される。

 映し出されるのはオズワルドの顔。


「突然の不意打ち、スマンな。だがワシも『仕事』でのう」


 映像の彼はカードを見せた。

 冒険者ライセンスに見えなくもない。

 しかしそこに刻まれているのは、羽帽子とナイフを模ったギルドの紋章ではなく、王家の紋章だった。


「これは見慣れないと思うが国王陛下の直属であるというライセンスカードじゃな。

今まで黙っておったが、ワシは国王陛下直属の密偵なのじゃよ。この言葉は陛下の言葉と思って聞くが良い。


このオーパーツはたった今から我が国の秘密兵器として接収させて貰う。

よって、秘密を知ったお前さん等を消させてもらうよ。悪く思わんでくれ」

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