第97話・ヲタク系ダンジョン誕生
ラムちゃんがちょっとばかり危険な道に進もうとしていたのをやんわりと阻止してから、俺はダンジョンコアの情報を使ってDELSONの持っていたダンジョンのデータを更新していった。
流石はダンジョンの情報だ。各階層のマップデータが完璧になった。
しかも、未発見の隠し部屋のデータまで揃っているという至れり尽くせりな状態。
でもラムちゃんに言わせると「隠し部屋があっても宝箱は一つも無いよ。中身のアイテムも拾えてないから」との事だった。
そもそもダンジョンには宝箱を造るという能力はないらしい。
じゃあ、なぜ宝箱が存在するのかと言えば、手先の器用なダンジョンモンスターが餌になる人間を奥深く誘い込む為にダンジョン内に落ちている素材を使って製作しているんだそうだ。
それにラムちゃんのような年端もいかない幼いダンジョンだと、手先の器用なダンジョンモンスターすら作れないので、宝箱が出るようなダンジョンは成熟したダンジョンって事になるらしい。
う〜む。これってば魔法学会のダンジョン研究じゃ謎とされている事で、ハッキリ言って新発見なダンジョンの生態なんだけどね。
流石にこれは発表出来ないわなぁ〜。ダンジョンから直接聞きましたなんて誰も信じちゃくれないものな〜。
そんな感じでラムちゃんからダンジョンの講義を受けつつ、俺はダンジョンコアの回りに遮光カーテンを設置していった。
そして、昼飯にでもしようかという時間になった時にラムちゃんがこう宣った。
「ワタシも食べ物を食べてみたい」
「え?ラムちゃんて固形物食べられるの?」
ラムちゃんはダンジョンアバターだ。ご本人曰く、質量を持った幻影だ。
だから、コアからの魔力供給だけで大丈夫なはずなんだけど……。
「うん。ユウキの情報を使って食べられるように改良した」
改良って……。食事の為に肉体改造までするのか…。
好奇心旺盛な娘だねぇ〜。
「そうか。大したモノは無いけどインスタントラーメンっぽいモノならあるぞ」
「お餅とかおせち料理とかは無いの?」
「情報から検索したの?」
「検索した。年末年始に食べて飽きたらカレーってあった」
「なら詳細検索してみると良いよ。こっちの世界じゃ原材料が無いから今は食えないって事がわかるから…」
すると、ラムちゃんの瞳がチカチカと明滅し始めた。たぶん情報を再検索しているのだろう。しばらくしてハッと驚いた表情をした。
「な、何てことなの…。ほとんどの原材料がこの地域では未発見だなんて…」
そうなのだ。俺はこっちの世界に来てから米も大豆も見た事がない。海産物なんてそもそも海から離れてるから流通してるわけがない。
「仮に発見出来ても原種だったりしたら品種改良からやらないといけないし、再現は難しいと思うぞ?」
「じゃあ、『おせち』どころか『お餅』すら再現不可能だと…」
「そういう事になるかなぁ。まあ、俺のデータを使ってダンジョンモンスターとして再現出来れば話は別だけどねぇ〜。そんな事は無理でしょ」
「出来ると思う。てか、やる!!」
おい…。やるのかい…。ラムちゃんがふんす!って気合い入ってる。
「まあ、無理のない範囲でガンバってちょうだいな…」
そう言いながら、俺は自家製ラーメンを用意した。
「3分間、待つのだぞ…」
「じっと我慢の子であった……って、そのセリフ出処を知っている人がいるとは思えないけど、待つ」
的確な返しをありがとう。ただ、このセリフは俺の様なレトルト食品マニアなら基本的な知識だと思うんだがなぁ。
ラムちゃんはどこまで深く俺の情報を検索したのだろうか?
少々、ヲタク系なダンジョンになってしまったような気がする。




