第96話・ダンジョンコア、その名は……
女の子がDELSONに吸い込まれて、しばし茫然としているといつもの如くピロロンと軽い電子音がして何やら目の前に表示された。
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ダンジョンアバター 1
ダンジョンアバターの解析に成功しました。
以降、保存された魔力を使用して任意のアバターの製作が可能になりました。
ダンジョンアバターを通じてダンジョンコアからホットラインの開設と情報共有が要求されました。
要求を承認しますか? Y/N
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………え?
えぇ〜と……。ナニこれ?
『ダンジョンアバター』?ってナニ?
アレか?アバターってゲームとかのヤツか?
それにホットライン?情報共有?
てか、DELSONって『生きている動物』はストレージボックスに保存出来ないんじゃなかったけ?
『ダンジョンアバター』って、『生きている動物』じゃないって事?
何が何だか全然わからん。とにかく情報が無さ過ぎる。
このままじゃどうにもならない。
とりあえず、要求を承認してみよう。『YES』っと…。
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要求が承認されました。
ダンジョンコアとのホットラインの開設に成功しました。
以降、本商品を通してこのダンジョンとの連絡が可能になります。
ダンジョンコアとの情報共有が完了しました。
以降、本商品を通してこのダンジョンとの情報共有が随時行われます。
ダンジョンアバターがストレージボックスからの解放を要求しています。
要求を承認しますか? Y/N
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さっき自分からDELSONに吸い込まれた女の子が出たがっているらしい。
「なに?自分から入っていって出てこられなくなっちゃたの?」
まったく、ナニやってるんだか…あの子は…。
とにかくYESっと…。
すると、DELSONのモーターが動き出しポロンって感じで、女の子が出てきた。
「ふぅ〜…これで話せるようになった…」
出てきた女の子は先ほどとは違い、見た目が普通の女の子になっていた。
どことなくクララ様に似た面影があるが、赤色の髪が印象的だ。
ただ、金色の瞳と淡く黄金の後光を背負っているのが人間との徹底的な違いになっていた。
「え〜と……少々混乱してるんだが…。君はドコのナニ子ちゃんかな?」
「アタシはこのダンジョンのアバター。簡単に言うと『幻影』ね」
「幻影?『ホログラム』みたいなモノかな?」
「そんなとこね。でも一応は魔力を使ってるから質量もあるのよ」
ほ〜!質量のある幻影か!まるでガ〇ダム-F〇〇みたいジャン!!
「幻影って事は本体があると…?」
「そうよ。ワタシは単なるコミュニケーションデバイスだからね。本体はあっち」
そう言って、彼女が指差したのは金色の光を放っているダンジョンコアだった。
「んで、俺に何やら用でもあるのかな?」
「うん、アナタにはお礼が言いたくて出てきた」
「お礼?俺は別に君に何かしたつもりは無いんだけど?」
「あなたはワタシにご飯をくれた。だからお礼をするのが当たり前」
ご飯?………。あ!あれか…。
「スライムに撒いてるヤツの事か?」
「そう。あれのおかげで少しは助かってるから…」
「いやぁ〜。でもお礼と言われてもねぇ。君をここまで追い込んだのはこっちの無知のせいな訳だし…」
「それでもアナタが気づいてくれなかったら、ワタシは飢え死にしてた」
「そうか、そう言ってもらえるなら俺の趣味でやった事も報われるな」
「それにここにも何かしようとしてた」
「ああ〜これね。ここは余りにも無防備すぎるからねぇ。ちょっとばかり細工をしようと思ってね。許可してもらえるかな?」
「うん。やってもらえればワタシも助かる。ここはアナタの自由にしてイイよ」
「ありがとう。ただ、ここまで来るのに時間がかかるから一気に出来ないのは勘弁してくれ」
「それなら、ここまで来る為の直通の隠し通路を通すから安心して」
そう言って彼女は軽く指を弾いた。
すると、部屋の奥にもう一つ扉が現れた。
「これなら、第一階層まで1分で行ける」
出来立ての扉の中を覗いてみると1m四方の小さな部屋になっていて壁には1〜7の数字の書いてあるボタンが付いていた。
「おお!まるでエレベーターみたいジャン!!」
「アナタの持ってた情報を参考に造ってみた。一応、アナタにしか使えないようにしてあるからセキュリティも万全」
これなら仕事ついでにちょくちょく寄れそうだ。非常に助かる。
「ありがとう、助かるよ。でも無理してないか?10年以上も絶食状態だったんだろう?」
「これくらいならまだ大丈夫」
「そうか。でもあまり無理はするなよ。これからもスライムの餌付けはやっていく手筈になってるからな」
「ありがとう。アナタの言う通り無理はしないでおく」
「ああ。そうしてくれ。せっかく知り合えたんだから無理させて死なせたくないから……。そうだ、自己紹介がまだだったな。俺はユウキだ。ヨロシク」
「ワタシには名前は無いから好きに呼んで」
そうか、この子はダンジョンだから名前が無いのか。ならば粋な名前をつけてあげよう。
ヤドラムのダンジョンだから……。
「んじゃ、『ラム』ってどうかな?ラムちゃんって呼ぼうと思うんだけど…」
「ラム…。それがワタシの名前?」
「そう、ラムちゃん。気に入ってもらえると良いんだけど…」
「ん、気に入った。ワタシの名前はラム。ユウキ、これからもヨロシク」
「おう。これからもヨロシクな」
こうして、やや突発的だったが『ラムちゃん』ことダンジョンコアとのコミュニケーションがとれるようになった。
「ねぇ、ユウキ。アナタの情報からなんだけどワタシが『ラムちゃん』なら虎柄のビキニを着て仙台弁の『だっちゃ』を語尾に付けた方がイイ?」
うん。それはやめておこうか!
いろいろと問題になるし、そういう情報は検索しなくてイイから!




