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第94話・オルトロスと秘密の部屋


第七階層へ突入した。今夜はこの階層で一泊の予定なんだが、出来るだけオルトロスのいる中央付近にたどり着きたい。


とにかく中央の円形闘技場に近づく為に、それっぽいルートを選んで歩き続けた。

最悪の場合、今夜は廊下で一泊になる可能性もあるけど、その時はその時だ。


それから歩くこと数時間、そろそろ腹も減ってきたしキャンプ地代わりの部屋でも探そうかと思っていたところにその音が聞こえてきた。


ゴゴゴゴぉ~……ゴゴゴゴぉ~……


と、地響きのような低音が微かに聞こえる。ナンだろう?

耳を傾けて音のする方向を探っていく。


レーダーで確認しながら歩を進めていくと、どうやら音はダンジョンの中央辺りから聞こえてくるようだ。


じゃ、音の正体はオルトロスか?


地響きのような唸り声を上げるオルトロス……。メッチャ怖いじゃん…。

俺は足音を忍ばせ、ゆっくりとオルトロスのいる円形闘技場に進んだ。


オルトロス…。二つの頭がある狼の魔獣だ。

その性格は凶暴で敵を引き裂く強靭な牙を持つという。


ここのダンジョンにいるオルトロスは三代目らしい。


最初のヤツは、まだギルドがダンジョンを管理していなかった時期に第七階層の調査の途中で遭遇したそうだ。その時かなりの犠牲を出しながらも討伐に成功した。

ただし、その後の調査は中止された。


二代目はギルドの管理が始まってすぐに討伐隊が組まれて討伐された。

その後の調査で、ここ円形闘技場には下階層への階段どころか宝箱すら発見されずに終わり多大な赤字を出し結果、第七階層の調査は中止された。

それ以降、階層調査はマッピングのみに切り替えられ、オルトロスは放置されているという状態になっている。


まあ、オルトロス自体は素材としての価値が低くて使えるモノは牙と毛皮くらい。

いくら階層ボスの扱いだとは言え、下階層への階段が出ないのならわざわざ犠牲を覚悟してまで討伐する必要もない。

ならば、ダンジョンを周回して稼いだ方が断然良い。

名誉より目の前のお金の方が冒険者達には大事なのだ。

名誉や賞賛だけじゃ腹は膨れない、彼らにも生活があるって事だ。




静かに円形闘技場に近づいていくと、次第に唸り声が大きくなってきた。


「こりゃ、確実に音源はオルトロスだな」


そう呟きつつ入り口から中をそっと覗いてみた。

居た…。オルトロスだ……。


…………居たには居たんだけど……。

爆睡してやがりますよ…。しかも腹を出してひっくり返った状態で……。

時折、後ろ足がピクピクしてる。

ネットの動画で見た事あるわ…。ペットの犬が熟睡してるヤツ…。

タイトルが『野生を捨てた』とかになってるヤツだよ、これは……。

さっきから鳴り響いているのは、唸り声じゃなくてコイツの(いびき)だ。


とりあえず、静かに近づいてオルトロスの御尊顔を拝見させてもらおう。


なんともまあ~幸せそうなツラしてるんだろうか。

向かって右側の頭は白目を剥いて爆睡中、左側の頭は何か食ってる夢でも見ているのか?口をカフカフさせている。


「ナンだろうなぁ~、この徒労感は……」


オルトロスってもっと精悍(せいかん)なイメージだったんだけどなぁ~。

まあねぇ10年以上もほったらかしにされてちゃ、そら寝ちゃうわなぁ。


でも、どうしたもんかなぁ~?このまま帰るってのもナンだし、かと言ってマヌケ面して寝てるオルトロスを討伐するってのもなぁ~。

う~ん…と、この後はどうするかと考えを巡らせながら円形闘技場をウロウロしているとレーダーに何やら反応が出た。


「ん?何だこれは…」


その反応は円形闘技場の周囲を巡っている階段状の観客席に出た。

もしかしたら、階段かな?とにかく、確認してみよう。

レーダーの反応を頼りに近くに寄って観察してみたが、巧妙に隠蔽されていて見分けがつかない。

石で出来ている観客席を押したり引いたりしてみたがビクともしない。

どうしよう?破壊するか?


「……あ!DELSONで吸い込めばイイんじゃね?」


思いついたら即実行!俺は席にDELSONを向けてスイッチを入れた。

ウィーーーンとモーターが唸り出す。

すると観客席がギシッギシッと徐々に動き出し、次の瞬間にバコ!と音をたててDELSONに吸い込まれた。


席が無くなった空間から現れたのは細い階段だった。すぐ先に扉がある。


「隠し部屋か?」


イイねぇ~。隠し部屋!お宝の匂いがプンプンしますな。

俺はワクワクしながら階段を降り、扉をそっと開けた。


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