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第89話・兵隊さんには向いてません


さて、大興奮のノートンさんは放っておいてマリアさんの杖がどうなったかと言うと、今はギルドの地下保管庫に厳重にしまってあるそうなのだ。

近いうちに専門家(たぶん、ユーノさんかな?)に詳しく検査してもらう事になったんだとか…。


「やりすぎちゃったなぁ~」って、マリアさんは反省しきりだ。


「しょうがないんじゃないの?使っていれば、遅かれ早かれバレる事なんだし…」


「そうなんだけどさぁ~。あの杖、お父さんのプレゼントだったし…。それに……ねぇ…」


そう言ってマリアさんは俺をチラチラと見てくる。


「まぁ、責任の一端は俺にもありますが…」


「はぁ…。そう言う事を言ってるんじゃないんだけどなぁ…」


じゃ、なんの事よ?よくわからんなぁ。


「でも、これであの杖が使えなくなるって訳じゃないんでしょ?」


「うん。なんだか『危険魔導具』の指定を受けるみたいなの」


この国の法律には魔導具の取り扱いについて厳しい規定があるそうなのだ。

特に冒険者や魔法騎士団等で使用される杖などの攻撃性の高い魔導具はランク付けされ登録管理される。使用者にも取り扱いに対する責任とその魔導具の維持などが義務付けられるんだそうだ。

そして、危険魔導具のランクには上から『特級』『一級』『二級』『三級』の4種類があり、『特級』は国の特別な施設で『一級』は軍の施設で保管され『二級』はギルドもしくはそれに準じた保管庫で管理される。

武器屋などで販売されている杖等の魔導具は『三級危険魔導具』に当たり登録などの告知義務は無い。


で、マリアさんの杖は俺が改造しちゃった事で、二級以上の指定にランクアップする事が確定的になったんだそうだ。


「ルキアさんも軍で使う兵器級だって言ってましたものねぇ~」


「あれだけの攻撃力じゃ規制が掛かるのも無理ないわよねぇ~」



それから三日ほどはギルドも事後処理でバタついていたが、捕まったマフィアの連中が王都に護送される頃には平常通りの落ち着きをみせるようになった。


そんな時に俺とマリアさんはユーノさんに呼び出された。


「たぶん杖の事で呼び出されたんでしょうけど、なんでユウキくんまで?」


「さぁ?魔導具の事を教わってるから、マリアさんの杖を教材にでもするんじゃないですかね?」


そんな事を話しながら、ユーノさんの店に向かった。

店に入るとユーノさんが出迎えてくれた。


「二人供、よく来たわね。奥の部屋でお話しましょ」


部屋に入るとテーブルにはマリアさんの杖が分解されて置いてあった。


「どうぞ、座って」


ユーノさんに促され、テーブルを挟んで俺達は座った。


「え~と…。まずはマリアさんの事なんだけど…」


そう言いながら、ユーノさんがペラペラと書類をまくりながら話し出した。


「正直、このままだとこの杖は一級指定を受ける事になるわ」


「え?それだと『軍』の管轄になっちゃうんですか?」


マリアさんが不安そうに聞き返す。


「そうね。『軍』の管轄下にに入った場合マリアさんも『軍』に召集される事になるから、王都に行く事になるわね」


「それは私が兵士になるって事ですよね。それは嫌なんですが…」


「わかってるわよ。冒険者は基本的に兵隊には向いてないからね。だから、この杖の性能を落として二級指定にするつもりよ」


そう言ってユーノさんが杖に入っていた『マナキャパシタ』を手に取った。


「それって『魔力電池』ですよね?それを外しちゃうんですか?」


マリアさんが聞いてくる。


「外しはしないわ。これを私特製の物と交換するだけよ」


「え?でも、ユーノブランド製のマナキャパシタって普及版のより高性能のはずですけど?」


「そのはずなんだけどね。こっちのマナキャパシタの方が全然高性能なのよ。私のより2倍は高性能なの…」


「じゃ、交換するだけで魔法の発動回数が半減するんですね?」


「そういう事。これで二級指定でギルドの管轄になるわよ」


「良かったぁ~。保管されて手元に置けないのは残念だけど、兵隊にされるのは御免被るから…」


マリアさんはホッとした様子だった。そうだよね~、杖のオマケで兵隊にされちゃたまらないものね。軍に入ったら、訓練もだけど規律とかも大変そうだもの。


でも、良かったぁ~。俺のせいでマリアさんが兵隊さんになっちゃうなんて、可哀想すぎるものね。



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