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第88話・Debut


朝方、何やら庭の方が騒がしくなっていた。

さっき寝たばかりなのに、五月蠅いったらありゃしない。

まあ、その原因はわかってるんだけどね。


俺は布団を頭まで被り、再び寝る態勢に入る。

睡眠は大事なんです。しっかりと二度寝させてもらいますよ…。


おやすみなさい。グぅ〜〜〜〜〜〜〜。




「ユウキぃーー!!おっはようーーーー!!」


元気な掛け声と共に布団を一気に引き剥がされた。

冷気が身体包み込む。


「うわ!!寒ぃーーーー!!」


もう!!俺の聖域(サンクチュアリ)を破壊したヤツは誰だ!!

と、寒さに凍えながら見るとそこにはルキアさんがいた。


「いつまで寝てるの〜?もう朝だよ〜」


朝とは言えまだ7時前、こっちの世界じゃ遅いかもしれないが、前にいた世界じゃ早起きの部類だと思うぞ…。


「うぅ〜。寒いんですけどぉ〜」


そう言いながら、俺はルキアさんから布団を奪取して被った。


「てかなんで、ルキアさんがここにいるんですか?もう向こうの事後処理が終わったんですか?」


「終わってるはずないでしょうぉ。朝一でここに呼び出されたのよ」


「呼び出し?ルキアさん、何かドジったんすか?」


「んなわけあるか!こっちでマフィアの残党が捕まったって聞いたから確認と護送の手配に来たの!」


ああ〜、そういう事か…。昨夜のサービス残業の処理で来たのね。ご苦労様です。


「でさ、その残党ってのが庭で凍死寸前で見つかったって話なんだけど、アンタ何か知らない?」


「知らない?」とか言ってるけど、ルキアさんの目は『アンタがやったんでしょ』って言ってる。

その通り、犯人は俺です。でも、わかってるでしょ?そんな事は認めませんよ。


「熟睡してて、ナぁ〜んも知りませぇ〜ん」


「はぁ、そうだと思ったわ。情報は無しって事ね」


「お役に立つず、すんません。じゃ、俺はもう少し寝ますんで、お疲れ様でした」


「ナニ言ってんの!アンタもギルドの一員なんだから、サッサと起きて手伝いなさい!護送の準備くらい出来るでしょ!」


「ええ〜!だって俺、Fランクっすよ〜。その手の仕事って、高ランクの人の仕事でしょ〜?」


「うっさい!人手が足りないんだから文句言わずに働け!!」


俺はルキアさんに無理矢理ベットから引きずり出され、朝一から仕事をさせられるのであった…。


ねぇ〜、この仕事の報酬はぁ?

へ?出ないの?!何で?!俺が討伐メンバーじゃないから?

んじゃ、働かない!

痛っ!痛いって!ルキアさん!耳引っ張らないで!ちぎれちゃう!ちぎれちゃう!

わかった!わかりましたから!……もう、働けば良いんしょ?働けば…。




こうして俺はルキアさんに引っ張られて、屋敷の玄関に向かった。

その時、ルキアさんが小声で「恩に着るけど、自分のやった事なんだから少しくらいは手伝ってよ」と言ってた。

そんな事言われちゃ嫌とは言えなくなっちゃうよ。

仕方ない…。お手伝いしますかねぇ〜。


そうとは言っても低ランクの俺が手伝わせてもらえる事と言えば、報告書をギルドに配達する事くらいなもので、俺は渡された報告書の束を詰め込みギルドに行く事になった。


ギルドに着いて報告書を職員に渡し、お仕事終了〜。ギルドのカフェスペースでお茶でもしようかと向かうと、テーブルに突っ伏したマリアさんを見つけた。


「朝からお疲れですね。大丈夫ですか?」


そう声を掛けると、ぐったりしたマリアさんの目に隈が出来ている。徹夜明けかな?それならサッサと帰って寝た方が良いと思うぞ。


「ユウキく〜ん…。どうしよう〜?」


「どうしようって…。何かあったんですか?」


「実はねぇ…」


そう言うと、マリアさんが俺に真新しい杖を見せてきた。

その杖は金属の装飾が多くとても高級品に見える。たぶん『火属性』の魔石だろうか、先端に真っ赤な宝石が輝いている。


「あら?杖、新調したんですか?前の杖に不具合でもありました?」


「違うのよ〜。あの杖、ギルド預かりになっちゃったの〜」


マリアさんの話に寄ると、マフィアに突入する時にあの杖を使ったそうなのだ。

ただ、ちょっと張り切り過ぎたらしく、杖の性能をフルに使用したんだとか…。

そのおかげで、マリアさん一人でマフィアの兵隊の半分を無力化し、作戦はこちらの被害をほとんど出さず成功したんだけど…。


「あの杖の攻撃力が強力過ぎて、ギルマスに杖の入手先やその経緯をしつこく聞かれたのよ…」


「ああ〜…。それでぐったりしてたと…」


「そうじゃないの…。その後が問題だったのよ〜」


ん?そりゃどういうことだ?と、思っていたら…。


「ユウキーーー!!来たよ!!来たよ!!来ましたよーーー!!」


と、ぶっ飛んだノートンさんの叫び声が聞こえてきた。


「うわぁ〜、ノートンさん。ど、どうしたんすか?」


「ユウキー!遂に来たよーー!第二の超魔法文明の後継者!沈黙の錬金術師サイレンス・アルケミストが現れたんだよーー!!」


「は?ナンすか?その沈黙の錬金術師サイレンス・アルケミストって?」


「なにって、マリアちゃんの杖を改造した人物に決まってるじゃん!!」


ああ〜。そうだった…。あの杖の出処を聞かれたら謎の人物を出すって言ってたっけなぁ〜。


「んで、そのナンチャラ錬金術師がどうかしたんすか?」


「ユウキ…。君はまだ気づかないのかい?この短期間にこんな辺境の地に見えない魔法使いインビジブル・マジシャン沈黙の錬金術師サイレンス・アルケミストという超魔法文明の後継者が相次いで出現したんだよ!」


「そりゃ…。まぁ、不思議な事が続くもんだとは思いますけど…」


「あのねぇ〜。そんな単純な事じゃないんだよ。この二人の同時期の出現には必ず意味があるんだ!それはこの辺境の地に超魔法文明の叡智が眠っている証拠かもしれないんだよ!!」


あ…。うん…。ノートンさん…大興奮ですねぇ〜。

そか…。マリアさんのぐったりの原因はこの人か…。

たぶん、ギルマス以上に根掘り葉掘り聞き込みされたんだね〜。お疲れ様です。



その後もノートンさんは『隠された叡智』がどうとか、『謎の地下都市』がなんだとか騒ぎまくってた。

他の冒険者たちは「また、変な病気が出たぞ」って感じでノートンさんを遠巻きに眺めているだけだった。


新キャラをデヴューさせてたのって失敗じゃないのかな?

ノートンさんに餌を与えちゃダメな気がする〜。


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