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第84話・これも大事なお仕事です


なんちゃら三世張りの仕事を楽々こなし終えた翌日。

俺はその成果をルキアさんとマリアさんに見せた。

場所はもちろん俺の部屋である。


「これはトンデモない証拠ねぇ…」


と、ルキアさんが手紙の内容を確認して唸っている。


「御所望されてた誘拐事件の証拠ではないですけねぇ〜」


「でも、これならヤツらを必ず討伐対象に出来るわ」


そう言いながら、手紙をマリアさんに渡した。

マリアさんも内容を確認しながら考え込んでる。


「この封蝋の紋章って、前領主のプラウドラ伯爵のですよね?これって国王陛下に御見せしないとダメなヤツなんじゃないですか?」


至極もっともな疑問だ。なんせこの件に貴族が絡んでる証拠なんだしね。


「そりゃそうなんだけど、貴族絡みは当事者のロンダーギヌス辺境伯様の担当する事だから私たちには関係ないわよ。私たちは実行犯のマフィアを合法的に潰すのがお仕事なんだからね」


貴族同士のケンカは王国の近衛騎士団辺りが間に入って決着をつけるのが普通なんだと。まあ、そうでもしないと内乱とかに発展して敵対勢力に付け入る隙を与え兼ねないからね。

プラウドラ伯爵には何かしらの罰が下ってオシマイってところだろうな。


「討伐の許可ってどれくらいで降りるんでしょうか?」


マリアさんがルキアさんに質問した。


「そうね…。早くても七日は掛かるんじゃないかな?辺境伯様は、もう領都に戻っちゃてるしね」


「それじゃあ、スピンクス・ファミリーも逃げるなり抵抗するなり、対抗策を練ってきますね」


「だからこそ、しっかりと下準備をして相手に逃げられないようにしないとね」


ルキアさんがそう言って席を立った。


「この手紙は私の子飼いの盗賊(シーフ)が手に入れたって事にして、ギルマスに渡すわ」


「そうして下さい。俺はこの件が済むまで大人しくしてますから」


「ユウキには、これ以上手伝ってもらう様な事はしないから大丈夫よ。安心してスライムの相手でもしてなさいって」


「頼みますよぉ〜。簡単に見えない魔法使いインビジブル・マジシャンが出るようになったら変な面倒事が起き兼ねませんからねぇ」





そう言ってルキアさん達に手紙の事を任せた二日後のこと…。

いつものようにダンジョンでのゴミ撒きを終えて、ギルドに顔を出すと何やらギルドの中がバタついていた。


また、魔獣でも出たのかな?ギルドも忙しいねぇ。

まあ、Fランクの俺には関係ないけどさ…。なんて思ってたら…。


「お!ユウキ!!ちょうどいいところに来たな。ちぃ〜とツラ貸せや」


と、ギルマスのロドリゴさんが声をかけてきた。


「へぇ〜い。なんすかぁ?」


やる気のない返事をしながら、ギルマスの執務室に入っていった。

ギルマスに促され、ソファーに座ると…。


「早速だが明日、ユウキには辺境伯様の屋敷に行ってもらいたい」


は?いきなり出張ですか?長期の出張は無理だよ。スライムの世話だってあるんだからね。


「そんな嫌そうな顔をするなよ。伯爵様の屋敷ったって領都の方じゃない」


「え?でも、伯爵様は領都に帰ったって聞きましたけど?」


「伯爵様はな。でも、お嬢様はこっちに残ってらっしゃるんだわ」


「お嬢様が?何でまた?」


「スライム関係やら学校関係の事があるからな。お嬢様がこっちに残って仕切るんだとさ。その方が許可や確認に時間もかからないから処理が楽になるんだとよ」


たとえ、伝書鳩を使っても一々伯爵様にお伺いしてたら無駄な時間が掛かる。

ならば、お嬢様を名代としてこっちに残せば事業もそれだけ早く進むって事か。


「ま、そのおかげで今回の討伐許可も早々と出たんだがな」


「ああ、それで今バタついてるんですね。でも、こんなに騒いでたら情報が敵にも筒抜けじゃないですか?」


「それも想定内だ。実際問題、冒険者の経歴の洗い出しはほとんど進んでないからな。この情報が敵に伝わる前に、こちらから仕掛けるつもりだ」


「じゃ、俺はお屋敷でお嬢様の警護って事ですね」


「ん〜。警護というよりもお守りが正解かな?」


「お守りですか?警護ではなく?」


「警護だけなら騎士団がいるからな。オマエはあのお嬢様が無茶な行動をしないようにお守りをするのが役目だ」


「ああ、なんかわかるような気がしするわぁ。お嬢様なら適当な理由をつけて討伐見物に行きそうな気がする…」


「オマエだけじゃなく向こうの家令たちも、そう思ったんだろうな。だからオマエさんは、お嬢様がどこぞに出張って行かないように見張るのが仕事だ」


「うわぁ…。面倒くさい仕事だこと…」


「仕方あるまい。何故か知らんがオマエはお嬢様のお気に入りだからな。執事さんたっての希望なんだから、キッチリお守りしてこい」


「了解しました。こっちの件が済むまでお嬢様のお相手をキッチリ務めますよ」


「頼むぞ。こっちは討伐中にお嬢様の面倒まで見られないからな」


面倒とは言え、ちょっとお嬢様のお話し相手になればお給金が頂けるという美味しいお仕事、気になる報酬はなんと一日銀貨10枚というビックリなお値段。

流石は貴族、お金の使い方がハンパないね。



そして翌日、朝一でダンジョンの方のギルドに寄って部下のノーベルくんとサリナさんに本日はお嬢様のお相手をするのでゴミ撒きは二人でするようにお願いした。


その際、サリナさんに


「コーヒーを飲む時に3回に1回は砂糖と塩を入れ間違えれば良いのですぅ〜」


と、実に嫌な呪いを掛けられた。相も変わらず心に来る呪いだ。

しかし、これは大事なお仕事だ。どんなに凶悪な呪いを掛けられようとも、完遂しなければならない。

どんなに美味しい食事が出ようとどんなに甘いお菓子が襲ってこようと笑顔で対処しなければならない過酷な労働なのだ。


「と、いうわけで二人供ガンバッてねぇ〜〜」


そう笑顔で俺はお嬢様のいるお屋敷という戦場に旅立っていったのだった。


さぁて、今日はどんな美味しいモノが食べられるのかなぁ?楽しみぃ〜〜〜。


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