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第80話・オオカミなんて怖くない


早速、開始された救出ミッション。俺は集められた物資をDELSONに保管して救出チームと森に向かった。


「ユウキ、悪いがオマエが先頭に立ってくれ」


そうガルダさんに言われて森に入って行った。


森は積雪30cmほどで、歩くには少々キツい。

なので、DELSONで雪を掃除しながら森を進んでいった。


「こりゃ、歩きやすいな」


ボランティアでついてきてくれた大柄な冒険者が言った。

まさか、この為だけに参加要請されたわけじゃないだろうな?

そう考えていると、後ろを歩いているガルダさんが声を掛けてきた。


「オマエは村では、かなり優秀なハンターと聞いている。今回の捜索はユウキの経験と知識が必要なんだ。それを使ってソフィアたちを探し出してくれ」


そういう事か…。ならば、DELSONの機能でちゃっちゃと見つけましょうかね。

とはいえ、この機能をあまり冒険者さん達に知られるのは、ちょっとマズい気もするからね。バレないようにしていこう。


「とりあえず、彼女たちが狩りに行ったと思われる西の湖に行きましょう」


俺はそう言って先を急いだ。ここでレーダー機能を全開した方が早く発見できるんだけど、それをやっちゃうと後々、問題が起きそうだからね。


それから何回かの小休止を挟みつつ4時間ほどで目的地の西の湖に到着した。


この湖は北にある荒れ地の川から温かい水が入ってきているので、厳冬期でも凍らないので一部の動物たちの越冬地になっていた。

だからこそ、この場所は冬期の主な狩場として利用されている。


俺達は湖のほとりに到着すると、すぐに手分けして行方不明のパーティーの痕跡を探しにまわった。


「オーイ!!こっちに来てくれ!!」


しばらくするとボランティアの冒険者さんが大声で呼んだ。

呼ばれた場所に行くと、そこにはキャンプをしていたであろう痕跡があった。

だが、そこはかなり荒らされていた。


「こりゃ、森狼(フォレスト・ウルフ)の群れだな」


森狼(フォレスト・ウルフ)は体長2~3mほどの大きな狼だ。

普通、5~10頭ほどの家族単位の群れで行動する事が多く、鹿などを捕食する優秀なハンターだ。


「オイ。こんなモノがあったぞ」


近くに落ちていたのだろう。もう一人の冒険者がガルダさんにボロボロになった背嚢を手渡した。それをガルダさんが確認する。


「こ、これは…。ソフィアの物だ…」


その背嚢には小さな花の飾りが付いていた。ソフィアさんが御守り代わりに付けていたモノらしい。


「って事は、ここでキャンプ中に襲われたって事か…」


「それで、逃げ出したんでしょうねぇ」


俺は現場を観察して、そう結論を出した。

現場は荒れてはいるが、戦闘した跡もなければ血痕もない。

慌てて逃げ出した可能性が高いはずだ。


「よし!なら、まだ生存してる可能性はあるな。追うぞ!!」


ガルダさんがそう宣言すると、俺達は森狼(フォレスト・ウルフ)の足跡を追った。足跡を追うのならDELSONのレーダー機能を使うまでもない。

簡単に行方不明のパーティーは見つかるだろう。


「シッ!止まれ!!」


小一時間、歩いた所でガルダさんが身をかがめながら近くの物陰に隠れた。

どうやら、森狼(フォレスト・ウルフ)の群れが見つかったようだ。


物陰からそっと覗いて見ると、20匹近い森狼(フォレスト・ウルフ)の群れが大木の周囲をウロウロして、時には樹上に向かって威嚇をしていた。


「ガルダさん、あそこ」


俺が指差した先には大木の枝に落ちない様にロープで身体を固定している三人の姿があった。

三人はかなり衰弱しているようで、ぐったりとしていた。


「ソフィア…。こいつぁ、かなりヤバそうだな」


「どうする?この時期の群れとしちゃぁ、頭数が多いぞ」


ボランティアの冒険者が指摘してきた。普通、厳冬期の森狼(フォレスト・ウルフ)の群れは多くても10頭前後のはずだ。それ以上、頭数が多くなると獲物の確保が厳しくなって冬を越せなくなる。

この時期にこれだけ大きな群れになっているという事は理由がある。


「ボスが魔獣化してるかもな…」


そうなのだ。大きな群れを統率するには、それだけ力が強く賢いボスが必要だ。

そしてそういうボスは大抵、魔獣化している。

撃退するにしても危険度が上がる。


「それにしても、クマの次はオオカミか?今年の森はどうしちまってるんだ?」


もう一人の冒険者が愚痴を言う。


「今はそんな事を言ってる場合じゃない。戻って討伐隊を組むにしてもソフィア達がもたないだろう」


「じゃ、俺たち5人で突っ込むか?」


「それしかないだろうな。悪いがユウキ、お前にも付き合ってもらうぞ」


ガルダさんは元々、俺を戦力には考えていなかったんだろうが、こうなっては一人でも戦える人間がいた方が良いと思ったのだろう。


「ええ、イイですよ。これでも村じゃ優秀な猟師で通ってるんですからね」


ま、実際のところDELSONで連射すればオオカミの20や30なんぞ簡単に殲滅出来るんだけど、今回は後方支援に回ろう。


「猟師には猟師の闘い方ってのがありますから、今回は敵の攪乱と後方支援でいかせてもらいますよ」


「了解した。俺達はユウキが敵を攪乱した後に撃って出る。お前のタイミングで始めてくれ」


「了解です!」


こうして、激闘の火ぶたが切られた。


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