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第79話・猟人と冒険者の違い


さて、部下二人に貯金を喰いつくされてから、はや一週間。

俺は頑張って仕事を詰め込んでいる。

三日に一度、ダンジョンに餌を撒き。その足でマッピングついでにダンジョン内に落ちている金属ゴミの回収。

他の日は街クエストを複数こなして、日銭を稼いでいた。


この時期の街クエストは雪かきが多い。普通は屋根に登って雪の塊を落とす力仕事で油断すると自分が落ちて怪我をする案外危険な仕事だ。

単価も低いので冒険者があまりやりたがらない仕事の代表格と言える。

だから、俺達みたいな出稼ぎが出番となるわけだ。


さて、先ほども言ったように普通の雪かきは力仕事なんだけど、俺の場合はちょっと違う。何せ俺にはDELSONという強い相棒がいるからだ。

ハッキリ言って雪かきはDELSON無双ができるお仕事。雪の塊を地面に落とすなんて野暮な事はしない。DELSONで「吸い取る」これで万事OKだ。

ちなみに、雪は捨てたりしない。この雪は夏までストレージ内で保管の一択だ。

今日の働きが夏場の快適生活に繋がるというわけだ。


で、本日は屋根の雪下ろしをメインにやってる。出稼ぎみんなは一件につき3~4時間かかる仕事だけど、俺の場合DELSONで無双するから一件だいたい1~2時間ってところ、一日に5~6件は片付けられる。

こうなると、安いクエストでも美味しい事この上ない。一日で銀貨3~4枚は稼げる。そのおかげで使い尽した貯金を半分まで回復できた。


そしてストレージ内の相も変わらず単位が分からん雪の数字が15000を超えた頃、ギルドで雪かきの仕事を選んでいた俺に声がかかった。


「ユウキ、すまんが少し手伝ってもらえんだろうか?」


振り向くとそこにはガルダさんがいた。

珍しい事もあるもんだ。ガルダさんは『雇われ』の中でも実力派の冒険者、そんなガルダさんが下っ端の俺に頼み事とは…。


「どうしたんですか?何かありました?」


「ああ、森に行ったEランクのパーティーが三日経っても帰って来ないんだ」


ん?高々、三日くらい帰って来ないからって『捜索』っておかしくないか?

『捜索依頼』か『保険』の関係かな?って思っていると…。


「実はな…。知り合いの爺さんに頼まれてな」


と、ガルダさんがいきさつを話してくれた。

どうやら、その爺さんの孫娘が行方不明のパーティーにいるらしい。

帰還予定日を過ぎても帰って来ない孫娘を心配して、ガルダさんに直に頼み込んだらしいのだ。


「よく行く飲み屋の爺さんでな。父親も知り合いだし、ソフィアの訓練をしたのも俺だからさ。そのちょっと断れなくてな…」


なんのかんの言って面倒見の良いガルダさんだから、そのソフィアって名の孫娘の事も心配なんだろう。

そんなガルダさんだから、新人や低ランクの若い冒険者たちに慕われているし、ギルド内では一目も二目も置かれている。

そんな人からの頼みじゃ、ちょっと断れないな。


「イイっすよ。お手伝いします」


「ありがとう。助かるよ」


そう言って、俺達は救助の打ち合わせに入った。

救助のチームはガルダさんと俺を含め全部5人、要救助者の人数は3人だ。

本当なら山狩りでもしたいところなんだろうが、ガルダさんが個人的に集めたボランティアの人達だから仕方ないんだろう。

実際、『依頼』とか『保険』でなければ救助なんて出ないしね。

ガルダさんだから、これだけの人数が集まったんだろう。


「それで、要救助パーティーの構成と動向を教えてください」


俺は早速、質問した。彼らがどんな依頼で行動したかによって捜索範囲も決まってくるからね。


「わかった。パーティーの構成は女性3人だ。盗賊、軽戦士、魔法使い。受けた依頼は森で鹿を狩ってくる事。今時期なら西側にある湖に向かったと思われる」


「了解。彼女たちの装備はわかりますか?」


「ん?いや普通に食料やら武器だと思うが、何か気になる事でもあるのか?」


「武器云々は別にして、食料をどれだけ持っているか?とか迷った時の準備はしているのか?で生存率が変わりますから」


「食料はわかるが、普通は森で迷う事は無いだろう?」


ガルダさんや他の冒険者達がキョトンとしている。

ウソだろう~?森で迷わないって冒険者ってレーダースキルでもあるのか?

俺なんかヘイゼル爺さんに森の怖さってヤツをしつこい程に教えられたゾ。


「あの~。もしかして冒険者の皆さんって、コンパスも無しに森に入っているんですか?」


「は?コンパスなんて必要ないだろう?地図でも暗記すれば位置なんて簡単にわかるはずだぞ」


マジかよ…。これが冒険者の実態か…。これじゃ生存率も上がらないわな~。

レーダー機能を使ってる俺でさえ、一応はコンパスと周辺の簡易的な地図を常備してるのに、これじゃ、森に死にに行ってるようなモノだ。

こりゃ、急がんと3人とも凍死もあり得るゾ。

どうしてアサイ村に学校を創る事になったか、再認識したわ。


「とりあえず、救助に必要な物資を急いで集めましょう。事は一刻を争いますよ」


「そうだな。俺が資金を出すからオマエ等は物資を集めてユウキに渡してくれ」


ガルダさんが他の冒険者達に指示を出し、救助ミッションが開始された。


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