第76話・秘密のはずが…
翌日、ルキアさんが俺の部屋に来た。事情聴取のためだ。
ちなみにマリアさんは俺の部屋に泊っいる。
しばらく間、俺の看病で泊まり込むって宣言された。
普通なら嬉しいシチュエーションなんだが、今の俺は身体を起こす事すらキツい状態、何かしたくても何も出来ないのだ。
ハッキリ言って、看病というよりも介護に近い状況だ。
「まさか、こんなにボロボロになってるとはねぇ~」
それがルキアさんの俺に対する第一声だった。
「どういう無茶したら、そんなになるんだい?」
ルキアさんの疑問もわかる。今の俺の状態は手足は腫れあがり、体中に痣が浮き出ているという、惨憺たる状態だ。
「前みたいにアンタの装備で治らないの?」
そうDELSONを指差してルキアさんが言った。
「その装備の裏ワザでこうなったんですよ。今、俺が生きていられるのは、DELSONの機能で生命維持をしてるのと、マリアさんのおかげです」
「じゃ、しばらくはこのままかな?」
「たぶん、あと2~3日はこのままだと思います」
俺の体力が修復に耐えられる状態になるまでの我慢だ。
「復活したら、アンタの部下たちにしっかりと謝りなさいよ」
そうだった…。『スライム事業課』の二日目から『課長』である俺が病欠って、部下になったノーベルくんとサリナさんに示しがつかない。
なんと言ってお詫びすれば良いやら…。
「それと、マリアから聞いたと思うけどダンジョンの件は見えない魔法使いがやったって事で良いわね?」
「はい…。それで構いません…。けど…」
「けど?ナニ?」
「ルキアさん…、出会った時から俺の事、疑ってましたよね?」
「そりゃね。アンタの装備を見た時にピンときたから…」
やっぱりそうだった。でも、ルキアさんはその疑いを不思議大好きのノートンさんにさえ黙っていてくれた。
「アタシは前に居た街でアンタの装備に似たモノを見た事があるのよ」
「DELSONに似た装備ですか…」
「うん。まだ、設計図の段階だったけどね」
「じゃ、似たような武器はもう開発されてると?」
「いや、それは開発を断念しちゃってるから存在してないわよ」
「開発出来てないんですか…」
「そうよ。技術的な問題がどうとか、危険性がどうのってユーノが言ってたわ」
「へ?開発者ってユーノさんなんですか?」
「そうよ。で、それと似たような装備を持っている新人がいれば、怪しいって思うに決まってるじゃない」
「それじゃ、最初からバレてたも同然だったんですねぇ」
「そういう事よ。それにノートンも気づいてると思うわ」
「え!?ノートンさんもですか?」
「うん。でも、ノートンは見えない魔法使い=ユウキって説は取らないはずよ」
「それはまた、どうしてです?」
「それじゃ、ノートンにとって面白くないからよ」
「面白くないですか?」
「ノートンにとって見えない魔法使いはポッと出の新人冒険者でなく、謎の超魔法文明の継承者じゃなくちゃいけないのよ」
「不思議大好きもそこまでくると、立派ですねぇ」
「まぁ、趣味も高じればってヤツよねぇ」
結局のところ、俺の秘密は秘密じゃなくなっていたって事か…。
ルキアさんもノートンさんも知っていて黙っていたんだね。
だからと言って、公然と見えない魔法使いとして行動するつもりは俺にはないけどね。
今まで通り、秘密裡に行動していこう。それが一番イイと思う。
あ~ぁ、ビクビクして損したぁ~。




