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第71話・ダンジョンは謎生物


のんびりとクララ様とダンジョン講義をしながら視察現場に向かっている。

クララ様も伯爵様もあれこれと質問してくるので出来るだけ、私見ではあるがそれに答えていった。

二人とも好奇心旺盛だね。根掘り葉掘りと聞いてくる。

ま、伯爵様の方はこのスライムの実験が事業になるかを見極めたいんだろうけど。

ちなみに奥様はマリアさんと王都で流行のおしゃれとか歌劇なんかの話に花を咲かせていた。


視察現場の小高い丘に到着すると護衛組のルキアさん達と騎士達が散開して位置に就いた。ちゃんと打ち合わせしてたのねぇ。


伯爵様ご家族と俺達ギルド組は数人の騎士に護衛され、丘の陰に移動してスライムの飼育器の所にきた。


「本当にスライムを飼育していたのだな…」


伯爵様が感心したように呟いた。


「はい。まだ短期間ではありますが成果は出ています」


「では、その成果を見せてもらおうかな」


俺は伯爵様の目の前に飼育器を出し、中のスライム取り出して見せた。

出てきたスライムは20cm程になっていた。凶暴性も無くなっている。


「元は5cm程の大きさでした。餌を与えて1週間ほどになります」


「ほう。スライムは成長が早い生き物なのか?」


「いえ、それほど成長が早くはありませんが餌の違いが成長の差として出ると思われます」


「餌の質で成長度合いが違うのか。長期の飼育だとそこがネックか…」


「そこは考えなくても良いかもしれません。スライムは悪食ですので今回ほどの急速な成長をさせなければ、街から出る生ゴミでも与えれば良いと思います」


「それなら餌代はタダみたいなものか。安価でスライムを家畜化できるとすれば、これは新しい産業になるかもしれんな」


「ダンジョン内でのスライムの飼育の場合、ダンジョンの外から餌を持ち込まないといけませんが、外での飼育ならゴミ処理や汚水処理としても使えるかと思います。実際、森のゴミ捨て場はスライムの繁殖が著しいですからね」


「それならば一石二鳥だな。領内の衛生状態が向上すれば、領民の健康保全にも役立つからな」


「あとはスライムゼリーを効率的に採取する方法を研究すれば産業化の目処が付くかと…」


「そうだな。よし、とりあえずダンジョン内での飼育の研究を続けてくれ。飼育場所や管理棟、人員などの選定はギルドに任せる」


こうして、スライム家畜化計画にGOサインが出された。

あれ?元々はダンジョン安定化の計画だったのに趣旨が変わっちゃったな〜。

ま、イイか。ついでにダンジョンの安定化もやっていこう。




視察は簡単に終了し、このままギルドに帰るのかなぁ〜なんて思ってたところにクララ様と奥様のエルフリーデ様から「もう少しダンジョン内の散策をしたい」との要望が出た。

ハッキリ言っていくら低階層とは言えダンジョンなんだから、それなりに危険が伴う。なのでダンジョン管理部長のトラスさんは反対したんだけど、行動派のクララ様にキッチリとやりこめられて一階層のみだが散策することになった。


まぁ、第一階層に出る魔獣はスライムくらいだし、熊や猪なんてヤバい動物も森の奥に行かなければ大丈夫なんだけど、護衛の騎士さん達はピリピリしてた。

ホント、行動派のお貴族様のお守は大変なんだねぇ。ご苦労様です。


んで、この散策中でもクララ様は俺にダンジョンの講義を求めてきた。


「遺跡型のダンジョンは温度が変化すると言っていましたが、なぜでしょうか?」


あぁ〜。魔法学会では謎とされてるヤツの事ねぇ〜。


「それは単に遺跡型のダンジョンはダンジョンではないからですよ」


「それはどういう事でしょう?違う種類のダンジョンという事ですか?」


「いえいえ、魔法学会の『ダンジョンの定義』では『閉鎖された空間に魔獣が住んでいる場所』とか非常に曖昧な定義で似たような状態の場所をすべて『ダンジョン』と指定していますが、『生物説』では遺跡型のダンジョンはダンジョンではなく、遺跡という穴倉を魔獣などが『巣』にした場所と見なしているんです」


「では、遺跡型のダンジョンは生物ではないと?」


「そういう事になりますね。生物でないから内部の環境が外の環境に影響を受けるんですよ」


「では、魔法学会が定義する『ダンジョン』には『生物』と『無生物』の二種類が存在するんですね」


「私はそう考えています。それに生物のダンジョンには『知性』を持っている可能性があるとも考えています」


「ダンジョンに知性があるのですか?」


「はい。その可能性は大いにあり得ると思っています。何故なら、ダンジョンは侵入してくる餌の好みに合わせて体内環境を作り変えているからです。それに侵入する餌に合わせた『罠』がダンジョンにも設置されている事もその証拠だと思っています」


「では、ダンジョンはその情報をどこから入手しているのでしょうか?」


「それはたぶん、餌自身からだと思います。『餌』この場合人間ですが、ダンジョンに侵入した冒険者が魔獣用に罠を仕掛けた戦闘を続けるとそのダンジョンに似たような『罠』が発生するという話があります。まだ、実証はされていませんがダンジョンの罠の多くが魔獣用の罠に似ている物が多いのはその為だと思います」


「もし、それが事実なら…。『ダンジョン』は『餌』の行動を観察していると言うと事になりますのでしょ?それならば、このダンジョンで長期にスライムの飼育を続けていった場合、このダンジョンがスライムの飼育に適した内部環境を構成する事もあり得るのではないしょうか?」


あ!それは気がつかなかった…。言われてみれば、その可能性もあるな〜。

さすがはクララ様だ。目の付け所が違うな。


「その可能性もありますねぇ。ただ、どれだけの期間を続ければその体内環境が出来るのかが不明ではありますが…」


「意外に短期間かもしれませんわ。だってダンジョンは『罠』を構成する位に高い知性を持っているんですから」


そうかもしれないなぁ〜。まったくの謎生物のダンジョンだから、どんな可能性もあるし、もしかしたらダンジョンとのコミニュケーションも出来るかもしれない。

本当にそんな事が出来たら、なんか楽しいんだけどなぁ〜。


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