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第68話・領主様に会ったよ


あっという間に領主様との会見の日。


なんでしょうか?バタバタしている内に問題の日になってしまった。

今は俺とアドルさん、ギルドマスターのロドリゴさん、それと護衛組のルキアさん達とゾロゾロと連れ立って領主様のお屋敷に向かっている。


ルキアさん達は警護の都合上フル装備なんだけど俺は革ジャンに革のズボンというラフな格好。しかも、領主様の安全の為にDELSONはおろか護身用のナイフすらも携帯を許されていないので甚だ心許ない。


「こんなラフな格好で良かったんですかね?失礼に当たりませんか?」


ちょっと不安になってロドリゴさんに聞いてみた。


「ん?じゃお前、襟や袖にフリフリの付いた服を着たかったのか?」

「いえ、さすがにそれは似合わないんで遠慮しておきますが…」

「安心しろ。領主様は寛大なお方だ。服装如きでお怒りはせんよ」


そうは言うけどねぇ。相手はお偉いさんしかも貴族様だよ。俺は礼儀作法なんて全く知らない田舎者なんだからさ、メッチャ緊張するんだよ。

もう不安でガチガチなんですけど~。





さて、今回お会いする領主様はアルベルト・ロンダーギヌス辺境伯って人だけど。

10年前に、この地「プラウドラ領」に配置転換でやって来たんだとか。

前の領主「プラウドラ伯爵」が何やらオイタをしたらしく、国王陛下の不興を買ってどこぞに飛ばされ、その後釜に来たのがこの人だ。

まぁ、この人も貴族なんでプラウドラ伯爵とも一悶着あったらしい。ちょっと前に奥方様とお嬢様が盗賊に襲われたでしょう、実はあれも裏に「プラウドラ伯爵」が絡んでいたとかいないとか…って噂だ。


ま、領民からすればそんな事は関係ないし、ロンダーギヌス辺境伯に代わってから生活も安定したし、王国側にしたら税収も増えたってんでいいことづくめ。

領地経営の手腕てのを見込まれたんだろうね。


そのロンダーギヌス辺境伯のお屋敷はヤドラムの街の中心からやや東側に外れた場所にあり、古い宿屋を改築して屋敷の代わりにしているんだそうだ。

最近、学校関係の仕事でちょくちょくこんな田舎に来る事が多くなったから急遽仕上げましたって感じだな…。


屋敷の前庭は綺麗に整えられていた、さぞや昔は高級な宿屋だったんだろうな。

そこそこ大きい庭を通って玄関前に出ると、そこには執事さんらしき黒服と白服で帯刀した騎士さん?らしい人が俺達を出迎えてくれた。


「ロドリゴ様、お忙しいところお出で下さりありがとうございます。お待ちしておりました」


慇懃に初老の執事さんが挨拶して俺達を屋敷に招き入れる。

重そうな扉を騎士さんが開けると、俺達はギルマスのロドリゴさんを先頭にアドルさん、俺、ルキアさん達護衛組の順番でエントランスホールに進んだ。


そこで領主様が自ら出迎えてくれた。


「忙しいところを呼び出してすまなかったな」


領主、アルベルト・ロンダーギヌス辺境伯は痩身で茶色の髪、茶色の目が印象的で貴族というより学者のような風貌の人だった。


「いえいえ、御領主様にたっては御壮健でなによりです。そして彼がユウキ、例の学校を卒業した者です」

「そうか。私がこの地の領主、アルベルト・ロンダーギヌスだ。よろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願いします。ユウキと申します。今は出稼ぎとしてFランクの冒険者をさせていただいています」


ペッコリ45度。ガッチガチのお辞儀だ。

ああ~もう挨拶すら緊張する~。やっぱ貴族のオーラはハンパないわ~。


「到着早々で悪いが報告を聞きたい。よろしいかな?」

「はっ。書類は揃っておりますので、こちらはいつでも構いません」


こうして俺達は領主様の執務室に通されたんだが、護衛組のルキアさん達は奥方様と前に護衛した時の事でお話があるみたいで別室に呼ばれてた。


その執務室には大きな仕事用の机があって書類が山積みになっていた。

そして部屋の真ん中にはまるで『円卓の騎士』が使うような丸テーブルが置いてあった。


そのテーブルにロドリゴさんを真ん中にして左右に俺とアドルさんが席につき、目の前には領主様が座り報告会が始まった。


まずは学校関連の報告だ。アドルさんがロンダーギヌス伯にいろいろと資料を渡し補足説明をする。


施設に必要な土地や資材の確保にいくら掛かるとか、生徒の募集要項はどうだとか、運営に掛かる人材確保や人件費はどうするんだとか…。

いや~面倒くさいねぇ~(はた)から聞いてるだけだけど、やることが半端なく多いわ…。それに掛かるお金もすごい。

初期費用だけでも億単位の額が動いてる。こりゃ失敗した日にゃ目も当てられんわなぁ~。なんてボーとしていたら…。


「悪いがユウキ君。きみの意見が聞きたい」

「んぇ!?あ、はい。なんでしょうか?」


突然、領主様からお声がかかった。びっくりした~。


「君はこの学校の訓練内容で冒険者の資質の向上に対して必要ないと言っていたそうだが、これはどういう事か説明して欲しい。私としては粗暴な冒険者を増やすつもりはないのでね」

「私は資質の向上に反対しているわけではありません。『今は』生存率の向上に力を入れるべきだと言ったのです」

「それはどういう事か?」

「はい、まずこの学校が『義務教育』ではないという事です。義務でないならば、入学希望者は自分が弱いと理解している者たちが多いはずです。そういう人間は元々『質』の良い人間ですから資質の向上に力を入れる必要はないと思われます」

「そういう事か…。だが、冒険者も今の君の様に貴族の仕事を請け負う事もあるだろう。その時に礼節も知らないとなると困るのではないか?」

「そういう事もあるでしょうが、それは今、考える必要はないと思います」

「なぜ、そう思う?」

「理由は単純です。この学校の教師の人数が少ないんです。それでは資質の向上に割く時間も労力もありません。それなら最初は生徒も少人数にしないと教育は崩壊します。それに村にいる指導者も教育には素人です。上に立つ人間にも教育が必要だと考えます」

「ふむ…、そういう事か…。ならば、私の伝手を使って教師を集めるがそれはどうだろうか?」

「それは時期尚早かと考えます。まずは規模を小さくやるべきです。最初は確実に教育を施して成功例を増やす事を優先すべきでしょう」

「無駄に規模を大きくして失敗のリスクを増やすより、細かく修正しながら拡大していくという事か」

「はい。それに規模の大きい事業ほど権威がしゃしゃり出て足を引っ張る事もありますからね」

「権威か…。どことは言わんがやりそうな話ではあるな…」


流石はお貴族様だ。わかってらっしゃる。

アザイ村の学校計画は、まだ『私塾』レベルのモノだ。だが規模が大きくなれば必ず、この国の三大教育機関『王立騎士養成学校』『魔法学会』『錬金術師協会』のいづれかが傘下に治めるべく動き出すに違いない。

それまでに権威に対抗できる程度の力を付けないと、この計画は権威の食い物にされる。そうなってはアサイ村やヤドラムの街の未来は暗いモノになってしまう。


ロンダーギヌス伯の考えがどの辺りにあるかはわからないが、俺自身も裏で動いて尽力してみますかね。


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