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第57話・ある日森の中…に出会った*しょのに


はい!クマさんの処理も終わってキャンプ地に帰って参りました。

今は焚き火に鍋をかけて、美味しいスープを作っているところです。


ちなみに魔法使いの女の子は、クマの生首とにらめっこしたまま動かなくなってたので、そのまま放置しました。

他にあのクマ以上にヤバそうな動物もいないし怪我も大した事なさそうなんで大丈夫だろう。それに気が付けば街に帰ってギルドに駆け込むでしょう。

って事で、クマの件はあの娘さんにお任せしましょう。


無責任って思ってるでしょ?その通り!無責任です。

何たってこっちは出稼ぎ冒険者、しかもFランクのド底辺です。

そんな俺にギルドは領主様との会談なんて大仕事を押しつけてきた。

そして、このままダンジョンのスライム関係の仕事も俺の担当になる流れだ。

これ以上、面倒事に関わるのは 御免被(ごめんこうむ)りたい。

俺は偉くなりたいわけじゃない。アサイ村に恩返ししながら好きな事をやっていたいだけなのだ。


さて、日も傾き始めてきました。だんだん寒さもキツくなっております。

今夜のスープは香辛料を効かせて、身体を温めましょう。


「スープ、ウマぁ~」


しかし、ここら辺の気候は冬は厳しめみたいだ。

今回製作したテント如きじゃ、かなりキツいだろう。

やっぱり、プレハブ住宅みたいなモノも造ろうかな?革装備も温度調節できるように魔導具化もしよう。

なんだかんだ言っても、俺はひ弱なヲタクなんだ。夏場の冷房も冬場の暖房も必須だし、お風呂だって入りたい。

ラノベの主人公たちはあっさり大金を稼いでチーレム組んで諸条件を簡単にクリアしてるけど、俺の場合は地道に一つ一つクリアしていくしかない。

チーレムなんて夢のまた夢……。イイなぁ~オレTUEEE~できる主人公って……。


なんて、くだらない事を考えつつ思いついたアイデアをメモしていく。

このメモ帳もだいぶアイデアが貯まってきた。貯めてるだけで何一つ形にしてないけど……。

形にはしたいけど、お金がかかるんだよなぁ~。

アザイ村への仕送りついでに少しずつ貯金もしてるんだけどねぇ。

まぁ、ダンジョンのスライム事業が軌道に乗ればそこそこのお給料は出るって言ってたからそれを流用してみるかな。

だけど、まずはお金のかからない方を形にしようか。

ちょうどよく、ダンジョンにも関係してるしね。



その時の俺はすごく油断していた。問題のニードルベアを片付けたから、もう危険な猛獣や魔獣はいるはずがないと高を括っていたのだ。

だからDELSONも傍に置かず、機能も全部止めて冬装備の確認やアイデアの捻出に集中していたのだ。


そんな時にヤツは現れた……。




静かに燃える焚き火が温かい。周りは冷えた闇に包まれている。

静寂……。そんな言葉が似合う夜だ。


俺は何も考えずに、ただボ~っと焚き火を眺めていた。静かな時間が過ぎていく。前の世界にいた時でも、ここまでまったりした時間の過ごし方はなかった。


「たまにはこんなのも良いかなぁ~」


そんな独り言が自然に出てきた。その時……。


バキリ……。


不意に枝が折れる音がして、暗がりからそいつが現れた。


「……え?」


マズい!!完全な不意打ちだった。クマが一匹だけだなんてどうして思ったのか。

しかも、始末したヤツが『クルイ』だって保証もなかったのに!


「クソがぁ!!」


俺は暗闇を睨み付けた。自分の危機感の無さに嫌気がする。油断し過ぎだ。


そして、そいつはゆっくりと闇の中から姿を現した……。

そいつはボロボロのローブを纏い、杖を突いて幽鬼の様に姿をした。


コイツは死神だ……。


そう思った。恐怖で身体が動かない。頭の中が真っ白で何も考えられない。

ホラー映画や心霊動画なんてのは観ていたが、ホンモノが目の前に現れたのだ。

叫び声すら上げられなかった……。


そいつはフラフラと俺に近づいてきた。

そして、左手に持っていた血だらけのクマの生首を俺に突き付けてきたのだ。


「……ひぃ……」


喉が張り付いて声が出てこない。効くかどうかもわからないお経を必死に心の中で唱えていた。それ以上の事は何もできなくなっていた。


生首からポタポタと血が滴り落ちている。怖い怖い怖い。恐怖が心と身体を支配する。冗談じゃない。心霊モノは夏場と相場が決まっているんだ。俺は冬場に怪談を楽しめるほどの手合いではないんだ。勘弁してくれ。


もう俺の眼前にはクマの生首があった。しかし、どうにもできない。

もうダメだ。そんな諦めともつかない気持ちが沸き上がってきた時……。


「た……たす…けて……」


死神はそう呟いて、バタリと倒れた。


「……へ?なんだ?」


何がどうなったのかわからないが、どうにか助かったらしい。

倒れた死神をよく見てみれば、それはあのクマと闘っていた女の子だった。


どうしてこの娘は森の奥に来たのだろうか?あのまま街に行った方が近いはずなのに……。しかも、クマの生首を持ち歩く必要性があるのか?

それにどこをどう歩いたのか、放置してきた時よりもボロボロになってるし……。


しかし、これはさすがに放置するわけにはいかないな。


仕方ない。最後まで面倒をみますかねぇ~。



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