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第51話・単なるスライムの視察なんですけど…


ダンジョンの管理棟へ到着するとすぐにロールさんが受付に何やら書類を渡しに行った。

今回のスライムの視察は一応ギルドが絡むんで、入場料が無料になるんだそうだ。

少額とは言えラッキーな事だ。アドルさんが先に管理棟へ話を通してくれていたらしい。

今、ロールさんはその手続きをしているんだけども…。

何か事か起こったのかな?管理棟の職員らしき人が俺の事をチラチラ見ながらロールさんと話している。

そして、手続きを終えたロールさんが俺を手招きで呼び寄せている。

手続きに俺のサインでも必要なのかな?とりあえず、ロールさんがいる受付に行くとロールさんが申し訳なさそうにこう言ってきた。


「あのぉ〜。管理部長と管理課長がユウキさんにお会いしたいそうなんですぅ」


あぁ……。何か嫌な予感がするなぁ……。


『ダンジョン管理部長』と言えば、このダンジョン管理棟の事務方のトップ。そして『ダンジョン管理課長』と言えば、実務のトップだ。

そのツートップが直々に俺に話があるという。


「今じゃなきゃダメですか?」

「ええ、もう奥の部屋で待っているそうなので……」


そかぁ〜。ちょっとした思いつきがドンドン大事になっていくなぁ〜。


「仕方ないか…。んじゃ先にお偉いさんに会って行きましょうか…」

「はい。では、ご案内しますね」


そう言ってロールさんと一緒にツートップの待つ執務室へと入って行った。

執務室には、ぽっちゃりしたおっさんとガテン系のおっさんがいて俺達を出迎えてくれた。


また、おっさんだ…。こういう時ってラノベじゃ、どちらかは『セクシー系のお姉さん』てのが定番じゃないんでしょうか?なんかおっさん率が異様に高い気がするんですけど……。

あぁ……。ちょっとでも期待した俺がバカだったのかなぁ〜。

この世界は期待しちゃいけない世界なのかなぁ〜。


「ナニ変な事、期待してるんですか?」

「そんなにジト目で俺を見ないでください…」


なぜかロールさんに気づかれました。この人もなんか勘がイイんだよなぁ〜。


「忙しいところスマンね。私がダンジョン管理部長のトラスだ」


そうぽっちゃり系のおっさんが自己紹介して席を勧めてくれた。


「そして彼がダルトン、ダンジョン管理の実務の担当だ」

「ダルトンだ。元Bランク冒険者だ。よろしく」

「ユウキです。Fランクの新参者ですが、よろしくお願いします」


こうして、ダンジョン管理のツートップとの話し合いが始まった。





「さて、こうして君に来てもらったのは他でもない…」


そう切り出したのは、ぽっちゃり管理部長のトラスさんだ。


「今、君がダンジョンで行っている実験に領主様が興味を示したことだ」

「それはアドルさんから聞いていますが、何か問題でも?」

「大問題だ。あの領主様の事だ、確実にダンジョンに視察に来るはずだ」


え?!マジかよ!話だけじゃないのかよ!


「領主様直々の視察となれば、警備やら施設の整備やらやる事が多い。しかも今回は、あと10日ほどで準備せねばならない」


あぁ、そうかぁ〜。皆さんの仕事を増やしちゃったって事かぁ〜。

なんかスミマセン…。


「そこでユウキ君にはダルトン課長と共に現場に赴き、必要な人員と資材の数量及び警備の計画を練ってもらいたい」

「え?俺もその仕事をしなきゃいけないんですか?」

「当たり前だろ。この実験は君が始めた事だ。謂わばユウキ君が責任者って事になるんだぞ。それに領主様が絡むんだ、君が中心になって事を進めないでどうするんだ」


うわぁぁぁ〜。面倒くせぇぇぇ〜。


ちょっとした好奇心で始めた事なのに、ものすげぇ〜大事(おおごと)になっちゃってるよ〜。


「さて、私はこれからアドル部長とスケジュール調整をしてくるから、後はダルトンと話し合ってくれ」


それじゃぁって感じでトラスさんは執務室を出ていった。

俺は、それを見送りながら気になる事をロールさんに聞いた。


「ねぇ、アドルさんってお偉いさんなの?」

「そうですよ。アドルさんは『事業開発部』の責任者なんです」


ほぇ〜。アドルさんは確か三十になったばかりのはず、それで部長さんとは思ってた以上に優秀な人だったのね。


さて、それはそれとしてダルトンさんとのお話合いだ。

面倒くさい事この上ないが仕方ない、さっさと終わらせよう。


「と、いうわけでユウキ君…。まず、君が実験をやっている場所を詳しく教えてくれないか?」


早速、ダルトンさんがダンジョンの地図を広げながら切り出してきた。

それはダンジョン第一階層の詳細な地図だった。

俺は記憶を頼りにDスライムたちを確保した場所を探した。

確か……森の近くでぇ、小川があったよなぁ…。


「え〜と…。大体、ここら辺ですかねぇ〜」


俺が指示した場所を見てダルトンさんが顔を(しか)めた。


「ずいぶんと奥で実験してるねぇ…」

「仕方ありませんよ。他の冒険者たちに迷惑はかけられませんし、変な邪魔もしてほしくありませんでしたからね」

「う〜ん…。ここまで奥だと、道を通すだけでも一苦労だな…」


そうなるだろうね〜。でも、解決策くらいならすぐに思いつきます。


「別に道を通す必要は無いと思いますよ」

「ん?それはどういう事かな?」


俺はダルトンさんに今やっている実験について簡単に説明した。


「そうか。そのスライムの飼育器を移動すれば簡単な事か」

「そういう事です。実験自体は始めたばかりですし、視察するほど見せるモノもありませんからね。設備投資は領主様がGOサインを出してからで良いんじゃないですかね?」

「そうだな。それなら警備も簡単に済みそうだし、ダンジョンの一時封鎖と警護も少人数で良いだろう」


単にスライムの経過観察するだけなんだから、無駄な経費など掛ける必要なんてないしね。

それに実験なんだから、結果報告とそれを元にした仮説を出すだけで良いと思うんだけどね。


「まぁ、領主様は好奇心旺盛なお方だからな。報告書だけなんぞ納得しないだろうからなぁ」

「あぁ〜行動派な方なんですねぇ」

「そのおかげで、この領地は上手くいっているわけなんだが…」

「それに付き合わされる下っ端は仕事が増えてキツいと…」

「そういう事だ。しかし、これも給料の内さ」

「俺は給料を貰ってませんけどねぇ」

「成功すれば報酬は出るよ。さぁ、とりあえず君の実験の経過を見に行こうか」

「はぁ〜。しがない新人出稼ぎは文句言わずに働けってかぁ〜」


「労働は美徳だとも言うぞ」とダルトンさんは苦笑して席を立った。


ちょっとした実験だったはずなのになぁ。お偉いさんはなんでこんな大事(おおごと)にしちゃうんだろう?


面倒くさい事になっちゃったなぁ〜。


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