第47話・DELSONはこっちが本業
「毎度ありがとうございましたぁ。またよろしくお願いしまぁす」
ユーノさんの所で魔導具の事を教わってから、俺は得意先の薬師や商店を何件か巡って先行投資に使った分をどうにか取り返した。
いや~良かった良かった。さすがに三日も稼ぎ無しじゃマズ過ぎるわなぁ。
サボるのもほどほどにしないと、立派な出稼ぎ冒険者になれないぞ。
てなわけで夕方、飯でも食って帰ろうと商店街をブラブラしていたら見知った顔と出くわした。あの人はヤーヴェさん所のメイド、アーヤさんだ。
夕飯の買い物にしては荷物が多いな。何やらデッキブラシみたいな物まで持って大変そうだ。ちょっと声をかけてみよう。
「こんにちはアーヤさん。荷物、大変そうですね」
「あ!あなたは……。出稼ぎのユウキさん、こんにちは」
「どうしたんですか?そんなにたくさん荷物?少しはお手伝いしましょうか?」
「え?あぁ…、ありがとうございます。少し持ってもえると助かります」
「じゃ、重そうな掃除用具の方を持ってあげますよ」
そう言って、俺はデッキブラシやら石鹸の入ったカゴを持ってあげた。
「それにしても、スゴイ量の荷物ですねぇ?お屋敷のお掃除用ですか?」
「ええ、玄関前の石畳の汚れがなかなか取れなくて、いろいろ工夫をしてるんですけど……」
おお!その懸案はDELSON無双の懸案ですぞ!石畳の黒ずみ汚れなら、高圧洗浄機で一発解決だ。
「それなら、俺がやりましょうか?少し水が飛び散りますけど、石畳の黒ずみ汚れくらいならすぐに綺麗にできますよ」
「え?良いんですか?それなら明日にでもギルドに指名依頼を出そうかしら?」
「あ!依頼は出さないで良いっすよ。今回はサービスしますから」
「よろしいんですか?冒険者さんは安い仕事やつまらない仕事は受けたがらないと聞いていますが……」
「構いませんよ。俺は普通の冒険者じゃありません。単なる『出稼ぎ』ですからね。それにヤーヴェさんには前回、仕事量以上に料金を頂いたと思ってるんで、恩返しですよ」
じゃ早速、現場の確認という事でアーヤさんと俺はご隠居さんの屋敷に向かった。
『現場』と大層な事を言っても、そこはヤーヴェさんの屋敷の玄関前。
幅は2mほど長さは3mほどの石畳だ。長年の汚れで黒ずんでいる。
「こう言う汚れは気にしなければ良いんでしょうけど、一度気になりだすと綺麗にできないかな?って頭から離れなくなっちゃうんですよ……」
ロールさんはずいぶんと前からこの汚れと闘ってきたらしい。
ならば、ここはDELSONの出番!
しっかり、綺麗にさせていただきますよ~。
「大丈夫!これくらいの汚れなら10分もあればきれいにできますよ」
「本当ですか?!じゃ、よろしくお願いします!!」
水が飛び散りますからと、アーヤさんに少し離れた場所へ移動してもらった。
で、俺はDELSONの吸引パイプの形状を変化させみた。先端部分は汚れの場所が広いんで扁平型にしてっと……。
あとは高圧水流を出すだけだ。ここら辺はアサイ村でウォーターカッターを試しているから大丈夫だ。
では、盛大にお掃除しますか!!
DELSONのスイッチを入れると同時に勢いよく噴出する高圧の水。
音に驚いたのか「きゃっ」ってアーヤさんの可愛い悲鳴が聞こえてきた。
そして、見る間に落ちていく石畳の黒ずみ汚れ。
う~ん。何か良い感じ~。
やっぱ、高圧洗浄機で掃除するのって気持ちいいよね~。
ウォーターカッターじゃ役立たずだったけど、やっぱりDELSONはお掃除関係じゃ無敵だ。
サクサク黒ずみ汚れを落とす事10分ほど、玄関前の石畳は新品の様に綺麗になった。
「ほぉ~ずいぶんと綺麗になるもんじゃな」
「わぁ!!ヤ…ヤーヴェさん…いつの間に……」
いきなり、後ろからヤーヴェさんに声をかけられたものだから、びっくりしちゃったよ。
「玄関先でジャージャーやってれば、バカでも気づくわい。それよりもどんな洗剤を使ってるだ?今まで落ちなかった汚れじゃぞ」
「あぁ~。これは洗剤なんか使ってませんよ。水だけで汚れを落としてるんです」
「本当か?ユウキのポーション造りで出来た洗剤だと思ったぞ」
「俺はまだポーション造りを始めてもいませんよ」
「そうか。じゃぁ、そのお前さんの専用装備に秘密がありそうだな。どうだ?うちで夕飯でも食べながら話を聞かせてくれんか?」
「う~ん…別に秘密ってほどの事でもないんですけどね~。夕飯を食わせてもらえるなら良いっすよ」
「よし!ならば、そんな所にボーっと立ってないで中に入れ。アーヤ、夕飯の支度を頼むぞ」
「はい。かしこまりました。すぐにご用意いたします」
おぉ~。サービスのつもりが『タダめし』になった~。
ラッキーな事だ。アーヤさんの作ってくれるご飯はすごく美味しいからね。
今日は大儲けな一日になったなぁ~。




