第44話・悲しみの果てに……
DELSONのおかげで魔法が使えない事が確定した。
由々しき問題ではあるが、解決出来ないわけじゃない。
この世界には、魔導具ってモノが存在している。
これは魔法が苦手な人や魔力量が少ない人たちのために生まれた道具だ。
実際に魔法使いやその他の冒険者たちは、杖や魔導具で戦闘時の不利を補っている。
要は発想と工夫でどうにかなるのだ。
こっちにはDELSONという強い味方がいることだしね。
まぁ、そのDELSONのおかげで魔法が使えないんだけどもぉ〜。
そういう事なんで、ロールさんには申し訳ないが個人授業は終了させてもらうことにしょう。
「ロールさん、魔力喪失の原因が判明しました」
「いったい何が原因だったんですか?まさか病気とかじゃないでしょうね?」
「いえいえ、違いますよ。原因はコイツです」
そう言って俺はDELSONの吸引パイプを指差した。
「ユウキさんの装備ですか?たしか専用装備でしたよね?」
「ええ、俺の魔力はコイツ専用になってるみたいですね。だから魔法発動前にコイツに吸収されてるみたいです。一種の『呪い』みたいなモノかな?」
「呪いとは違うと思いますよ」
「どうしてそう思うんですか?」
「呪いならユウキさんはダンジョンに入れませんから」
「え?そうなんですか?」
「ええ、ダンジョンのゲートは安全装置にもなってるんですよ。呪いのアイテムや呪われたモノなんかは持ち込めないんです」
「そっか……。じゃ、呪いじゃないとしたら……」
「『契約』?なんじゃないですか?だから専用装備になったとか?」
「そういう事か。契約ならうなずけますね」
「ええ、伝説の魔剣とか勇者専用の装備とかは契約するそうですからね。ユウキさんの装備って案外、伝説級なのかもしれないですよ」
「どうですかね?そんなカッコイイものじゃないと思いますよ」
量販店で売ってたモノが伝説級の装備とはとても思えんけどねぇ〜。
「ま、これじゃいくらロールさんに教わっても俺には魔法が使えそうにないんで、申し訳ないですが、個人授業は終了って事でよろしいですか?」
「仕方ないですよ。契約で魔法が使えないんじゃ魔法学会の賢者先生でも無理ですから。私の方こそお役に立ず申し訳ありません」
「いえいえ、俺の方こそ貴重な時間を取らせてしまってすみませんでした。でも今回の個人授業では学べる事がたくさん出来ましたから、本当にありがとうございます」
「そうですか?そう言って頂けると私も嬉しいです。次は実践じゃなくて理論の方で勉強しましょうよ」
「そうですね。次回は理論でお願いしますね」
そう言って俺はロールさんと別れ、ギルドを後にした。
さて、本格的に今日はやる事が無くなった。
夕飯にはまだまだ早いし、どうしようかと街をぶらつきながら考えていたんだけども何も思いつかない。
魔法が使えないって悲しみにフテ寝を決め込もうにも夕方にもなっていないんじゃ話にならない。
あ!そうだ!そう言えば「純魔力」が手に入ったんだっけ?じゃコイツを使って今持ってる魔法をいじり倒そう!!
それなら善は急げだ。夕飯用の食い物と飲み物を適当に買いあさって、さっさと部屋に帰って遊びましょう〜っと。
さて、部屋に帰って来ましたよ。早速、新しいおもちゃで遊びましょう〜。
まずは『魔法操作機能』を起動してっと……。
さぁ……何からいじろうかなぁ〜。
うん。これにしよう。「ライトニングボルト」
この魔法は思い出の魔法だ。なんせコイツせいで死にかけたからね。
この魔法に『純魔力』を注入して威力のアップをしてっと……。
あら?あっという間に『純魔力』が空になった。魔力量『34』程度じゃ、威力アップもままならないか?
ならば、たっぷりと俺の魔力を注ぎこんでやろうかぁ……ぐへへへ。
というわけで、DELSONに純魔力を吸わしてるんだけど。着火の魔法程度の魔力量じゃ全然足りないし時間も掛かる。スッゴく面倒くさい。
なので、ここはDELSONさんに魔力一気飲みをやってもらいましょう。
俺は意識を集中し、丹田に魔力を集める。体内だけじゃなく周囲の空間からもこれでもか!ってくらいに集め練り上げ圧縮していく。
もうその魔力と言ったら、気体の様なフワフワした存在じゃなく液化した感じになっている。これならいけそうだ。
ここで俺は、一気飲みには欠かせないセリフを宣った。
あ!ここで注意!!良い子はマネしちゃダメよ。一気飲みは身体にも悪いし最悪「暴行罪」って犯罪にもなりかねないからね。
でも、俺の場合お相手は耐久消費財のDELSONさん。人間相手じゃないんで罪にもなりません。
「DELちゃんの、ちょっとイイとこ見てみたい。それ!一気ぃ!一気ぃ!!一気ぃ!!!一気ぃ!!!!」
DELSONの吸入パイプにガンガン魔力を吸引させていく。流石は我がDELSON、文句も言わずに飲み尽していく。
そして、最後の一滴を吸い上げた瞬間、ピンポ〜ンと軽い電子音が鳴り響き俺の視界になにやら表示された。
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「純魔力 ∞」
限界値を突破しました。
これにより、本品は所有者との間に
『純魔力』採集用経路が確立されました。
以降、『純魔力』は無制限に使用できます。
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なんだ?DELSONのヤツ逃げ打ちしやがったか?
仕方ないヤツだなぁ〜。
今回はこれで許してやろう。
じゃ、魔法操作の続きといきましょう。
まずは「ライトニングボルト」の威力は『中』から『高』に上げてっと……。
それから、効果時間は『瞬間』から『2秒』くらいで良いかな?
あとは、効果範囲は『極小』に変更して……。あ!数値でも指定できるのね。んじゃ『30mm』くらいにしてと……。
ん?『圧縮度』?何か面白そうだ。適当に『圧縮』しちゃえ〜。
……と、いろいろいじってたら……。ピンポ〜ンとまた電子音が鳴った。
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魔法操作により魔法名「ライトニングボルト」は
魔法名「プラズマビーム」にレベルアップしました。
魔法の使用の際にはご注意下さい。
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おお!!何かスゴい事になったぞ!!
すんげぇ〜楽しい!!もっといろいろやってみよう!!!
こうして、楽しい夜は更けていくのでした。




