第41話・講習くらいは無料ですよね?
コイン投入口に銅貨を5枚入れて……っと。
ブ~ンと微かな起動音と共に測定器が動き出すと、水晶玉に赤い光が灯った。
ロールさんに言われた通りに光に意識を集中させると、水晶玉の中にアナログメーターみたいな『絵』が現れてゆっくりと俺の魔力の計測を始める。
ジワジワとメーターの針が上がっていく。
そして、針が降り切れるとメーターの下に『C』と赤文字で表示された。
「あ!すごい!メーター降り切れてる!」
なんかロールさんが驚いてるけど、評価は『C』判定ですよね?
「え?スゴイんですか?」
「ええ。魔力量の評価基準はSSS~Gまでの10段階なんですが、この測定器は『C』までしか計れないんですよ。測定不能の『C』判定ならユウキさんの魔力量はCランクの魔法使い以上って事なんです!」
「って事は、俺の魔力量は並以上って事?」
「そういう事です!普通は『D』くらいで多い人でも『C』の前半くらいが当たり前です。魔力量だけで言うならユウキさんはかなり優秀な魔法使いになれますよ!」
「へぇ~そうですかぁ。なんか魔法使いになれそうな気がしてきましたよ」
いやね、魔力の量自体は多いのはわかっておりましたよ。問題は魔法が使えるか?どうかって事なんですけど……。
「次は属性検査ですね。この結果次第でどの魔法が使えるかがわかりますよ」
そう言うと、ロールさんは測定器のダイヤルをひねったりボタンを押したりと次の準備に取り掛かる。
「よし!準備完了。これでユウキさんの魔法属性がわかりますよ」
では!スイッチON!!と高らかな宣言と供にロールさんがボタンを押すと水晶玉が発光しだした。
なんかドラムロールでも鳴りそうな勢いだがそんな演出も無く、しばらくして発光が収まると水晶玉に結果が浮かび上がる。
……結果は……。
『地』『水』『火』『風』『光』『闇』
と、出た。全属性だ。
これは個人的には驚く事ではない。むしろ当たり前の事のはずだ。
それにそもそも個人の魔法属性を調べる事自体がナンセンスな気がするんだよね。
この世界の魔法は多かれ少なかれ複数の属性が相互作用して成り立っている。
多少の得手不得手はあっても魔力があって魔法が使える人なら、全属性が表示されるのが普通のはずなんだけど……。
なのに、ロールさんの反応は……。
「す……スゴイ!!全属性使えますよ!!これって伝説の賢者様レベルの結果ですよ!!」
なんて大騒ぎだ。
「ちょっ…ちょっと待って!!落ち着いて下さい!!これって普通の事でしょ?」
「何言ってるんですか?!全属性ですよ!!普通は一属性が当たり前です。二つも三つも属性使えたら、即、魔法学会入りです!!」
「いやいや、『属性相互作用説』で説明するなら、多少の個人差はあるけど魔法使いなら、全属性が使えて当たり前のはずですよ」
「その説は魔導具の制作のための説ですよ?錬金術師協会では人の使う魔法にも適用しようとしてますが、魔法学会では認められていません。第一、人は魔獣や魔導具とは違うんですから」
そういう事か……。魔法学会のお偉方は魔導具や魔獣の魔法と人の使う魔法は根本的に別物という説をとっているのか。
しかし、錬金術師協会の方は魔法は全て本質的には同じのモノと見ていると……。
「それにこの測定器は『魔法学会認定』の魔導具ですから、『属性単独作用説』を元に調整されたモノなんですよ」
ギルドの魔法関係は魔法学会の説で運用されてるんですよ。とロールさんは言っていた。う~ん……、異世界も元の世界と同様に『権威』ってヤツが幅を利かせてるらしい。世知辛いねぇ~。
とは言え、これで俺が魔法を使える目が出てきた訳で、こんな所で俺が『権威』と闘っているヒマなんぞない。
重要なのは俺が魔法を使える様になる事だ。
「ん~……。とりあえず『属性』の事は置いておいてですね。前にロールさんが個人的に魔法を教えてくれる言ってたじゃないですか?あの話、OKですか?」
「あ!はい!それはOKですよ。ただ、私が個人的に教えるとなると少し問題があるんですけど……」
「え?問題?料金が高いとかですか?」
もしかして、ロールさんは魔法学会の権威で個人授業料がメチャ高だったりとか?
「いえいえ、そんな事はありません。ユウキさんからお金なんて取れないですよ」
よし!!ギルドに来て初の無料サービス!!ラッキーじゃん!!
問題がどんなモンかわからんが、この守銭奴ギルドでの『無料』ってのは大きな意味があると思うぞ!!
とにかく、ロールさん!個人授業の方、ヨロシクお願いします!!




