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第37話・ヤーヴェさんと商談



夢中になって柵の修繕をやっていると、メイドのアーヤさんがお昼だと声をかけてきてくれた。


「ヤーヴェ様がご一緒にと、お呼びになっていますのでご案内いたします」

「あ?はい……。でも、よろしいのですか?」


普通は報酬条件に無ければ食事は自前のはずだ。しかも、お金持ちの雇い主が冒険者と一緒に食事をするなんてことは皆無なんだけど……。


「先ほどの商談の事もあるとの事ですから、ご遠慮なさらずに」

「なるほど、そうですか。それなら遠慮なくいただきます」


そう言うとアーヤさんが先に立ち、案内してくれた。



食堂として使われるその部屋からは美しく手入れされた庭が見え、大きなテーブルには豪華な食事が用意されていた。


「すまんな。『商談は食事をしながら……』がワシの信条でな。付き合ってくれ」

「いえいえ、遠慮なくいただきます」


そんな感じで食事をしながら商談を進めていく。


でも所詮、商品は『鉛筆』だ。それも至って原始的なモノ、儲けも有って無い様なモノだ。もっと改良したモノの方が良いはずなんだが……。

そう疑問に思って商談に至った理由についてヤーヴェさんに聞いてみた。


「そうじゃな。商売を息子に譲って5年、この隠居生活にも少々飽きたってところが本音じゃな」

「では、儲けは考えていないと……」

「いや、これも一応は商売だからな儲けは考えておるよ。ただこれは切っ掛け程度にしか考えておらんよ」

「そうですか。じゃ、この『鉛筆』は息子さんの商会の販売ではないのでは?」

「さすがに頭の回転が早いな。そうじゃ、ワシはまた一から商売を始めようかと考えておるんだよ」


やっぱりか。この爺さんは、のんびり隠居生活を送るタマじゃないってことか。

大体こんな『鉛筆』ごときで商談なんて変だと思ったんだよな。

自分が商売を始めるにあたって何か物珍しいモノをって考えてたところに俺がきたって感じになんだろう。

ま、これも縁だ。ご隠居さんの楽しみに付き合うのも良いだろう。


「わかりました。では契約に移りますか」

「ありがとう。ユウキなら気付いていると思うが、この『鉛筆』だとそんなに儲けは期待できない。君自身にもうま味のある話ではないが、構わないかね?」

「えぇ、それは初めから納得してます。それに売り出したらすぐにでも類似品が出そうですからね。儲けられるもの長くて一年程度と考えてますよ」

「そこまで、考えておるとはな。ただの冒険者にしておくには惜しいな。どうじゃ?いっそのことワシと一緒に商売人にならんか?」

「それはお断りします。冒険者の方が気楽ですし、それにアサイ村にも恩返しをしたいですから」

「そうか。それならば今回の勧誘は諦めようかの。じゃぁ、契約書の内容に納得いったなら、ここにサインをしてくれ。ちなみに、儲けは半々にしてある」

「はい。ありがとうございます」


そうして、俺は契約書を確認してサインした。『鉛筆』自体の儲けはなくてもヤーヴェさんに伝手(つて)が出来る事の方が儲けとしては大きい、そう考えれば俺自身に損は全くない。


ほんの少し、ファンタジーにありがちな「文化ハザード」なんて事も考えたが、鉛筆程度なら影響はほぼ無いはずだし、あまり気にし過ぎても自分の行動に制限が出来てしまうので今回は儲け優先でやってみよう。


「それで、柵の修繕の方はどこまで進んでいるかの?」


ヤーヴェさんにとっては柵の事も重要だろう。俺は思った以上に仕事がはかどっている事と、明日の昼ごろには作業が完了できると思っている事を伝えた。


「そうか。仕事が早くて助かる。また何かあったらユウキに頼る事にしよう」

「ありがとうございます。出来るだけご期待に添えるようにしますよ」


そう言って俺は庭に戻り、午後の作業に取り掛かる事にした。


さて、午後も気合を入れていきましょう!

仕事が早く片付けば、それだけ儲けも大きくなるからね。



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