第36話・異世界の大工さん
突然のヤーヴェさんとの商談は後回しにして、今回のお仕事を頑張ってやろう。
今回のお仕事は前にも言った通り「柵の修繕」簡単な大工仕事、俺の万能ツールDELSONさんの無双っぷりを発揮できるお仕事だ。
ストレージに収納した材料をクリエイト機能でサクっと加工、しかも今回はギルドで借りた大工道具と紐付けしているから切断や穴あけ加工も簡単だ。
あっという間に柵に加工して、あとは修繕箇所の柵を交換すれば良いだけって感じだ。
いやぁ、DELさん(かなりお世話になってるんで擬人化してみよう)のおかげで楽に稼げるわぁ〜。時間、余っちゃいそう……。
てな事なんで、時間つぶしにこの世界の大工事情について教えてあげようかな。
この世界の大工さんは大きく分けて2種類ある。
一つは王様の城や砦、都市部の城壁なんか造る大工さん、いわゆる石工職人と言われる人達。
そして、もう一つはそれ以外の大工さん。
前者は軍事に関係している人達なんで、己の身を守る為に「組合」の様な組織を作って秘密保持なんかをしっかりとやっている。
握手の仕方で、どこの組織のどのくらいの地位の職人か?って暗号みたいなのを使って身の安全を図っているんだとか……。
まぁ、そうだよね。捕まって城や砦の内部構造なんかバレたりしたらたまらないし、秘密保持のために施工主の王様あたりに監禁されたり殺されたりしてもかなわないものね。
そんな感じなんで、石工職人について探り回ると暗殺者のお世話になったりするというウソかホントか分からない都市伝説みたいなモノがあったりもする。
んで、それ以外の大工さんは至って平和な大工さんなんだけど、これが案外と職人の数が少ない職業なんだそうだ。
特にアサイ村やヤドラムの街みたいな辺境のド田舎なんかだと数人しかいない。
そんな人数で家が建てられるのか?って思うだろう。
それが建つんだよね。ド田舎の強みなんだろうな。
職人技が必要なところは大工さんがやって、後は全部村人総出でって感じで家が建つんだよね〜。
ま、家自体が簡素だからなんだろうけど……。
しかも、この世界の一般的な建物には「釘」が使われていない。
鉄製の釘はあるんだけど、一本一本手造りだから非常に高価なんだよね。
だから、お金持ちの家くらいしか鉄釘なんて使われない。
普通なら木製の釘か再利用できる「鎹」っていう大きなホチキスの芯みたいなモノを使っている。
俺の場合はDELSONで石の釘を大量生産できるんだけど、それをやっちゃうといろいろと問題がありそうなんでやらないけど……。
そんなんで、今回の大工仕事では木製の釘を使っています。
クリエイト機能で釘を製作、DELSONを釘打ち機にしてスパンスパンって感じに打ち込んでいく。
うん。便利。壊れた柵を引っこ抜いてから、DELSONを「パイルバンカー」代わりにして新しい柵を地面に打ち込んで横板を釘留めしていく。
DELSONさん大活躍です。
このペースなら、今日明日で終わりそうだな。流石はDELSONだ。手作業なんかより断然に効率が良い。
サクっと終わらせて、いただくモノをいただいきましょうかね。
この世界の出稼ぎは数をこなしてナンボだからね。




