表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/227

第35話・街のクエストを受けてみる



飯を食った後、少しエールを飲みながら周りの客の会話に聞き耳を立てる。

ダンジョンはどうだとか、森の具合はこうだとか、いろいろと情報を仕入れてみると、森での狩猟は今月いっぱいくらいで厳しい状態になるって事がわかった。


来月後半には雪もチラつくらしい。冒険者たちは場所を移動するか、ダンジョンに籠るかって選択になるんだろう。

でも、俺らみたいな「出稼ぎ組」は街の整備やら雪かきなんかも仕事になるから、あまり関係ないんだよね。


むしろ、冒険者がそういう仕事を嫌うからこっちに仕事が回ってきて忙しくなる感じだしね。


そんなわけで翌日は、ギルドにクエストとして出てる街のお仕事を受けてみた。

クエストの内容は、とある大店(おおだな)のご隠居さんの家の柵の修繕。期間は五日間で日当が一日銀貨1枚と破格なお仕事。


そのご隠居さんは、5年ほど前に息子さんに店を譲って今は街の東側に小さな家(って言ってもそこそこ広いんですけど)を買ってのんびり生活していた。


「すみませ〜ん。ギルドから依頼を受けてきたんですが、ヤーヴェさんはいらっしゃいますか」


何とも重厚なドアをノックすると、ゆっくりとドアが開いてメイドさんが現れた。

栗色の瞳に栗色の髪、美人というよりも可愛い系のメイドさんだった。


「は〜い。ご苦労様です。現場は裏庭なのでご案内します。こちらから、どうぞ」


そう言われて、案内されるまま裏庭に行くととそこにゆったりと安楽椅子に座って寛いでいる爺さんがいた。あの人がご隠居さんのヤーヴェさんかな。


「ヤーヴェ様、依頼を受けていただいた冒険者を案内いたしました」


メイドさんがそうヤーヴェさんに告げる。


「そうか、ありがとう。後はわしがやるからアーヤは下がってくれて構わんよ」


そう言ってメイドさんさんを下がらせると、ヤーヴェさんは俺に近づいてきた。


「すまんな。大工仕事なんぞ冒険者に頼む事じゃないんだろうが、知り合いの大工が忙しいらしくての」

「いえいえ、気にしないで下さい。俺は冒険者というよりも出稼ぎって感じなんで仕事に優劣を付ける気はありませんから」

「そう言ってもらえると助かる。ワシがヤーヴェじゃ。よろしく頼むよ」

「ユウキといいます。こちらこそよろしくお願いします」


そう挨拶を交わしてから握手をした。優しそうな依頼人で良かった。


「柵の材料はこちらに用意してあるから使ってくれ。大工道具は大丈夫かな?無ければ用意するが……」

「大工道具はギルドから借りたのがあるので大丈夫です。早速、始めさせていただきますね」


そこには大量の木の板が置いてあった。普通なら一人で扱える量じゃないけど、俺には万能ツールの『DELSON』がある。コイツがあれば大工仕事は簡単だ。

そのためにギルドから大工道具を一式借りてクリエイト機能に紐付けしておいた。

これで、簡単に材料の加工が出来る。


まずは、材料の板を吸い取ってと……。


「ん?ユウキ、お前さんは何をしておるんだ?」


おっと!ヤーヴェさんに見られていたらしい。ま、隠す事も無いから良いけど。


「あぁ、俺の装備はこうやって材料の加工出来るんですよ。いろいろと制約があるんですが、ゴミもでませんから便利なんですよ」

「ほ〜そりゃ便利そうだな。ワシにも使えるかな?」

「いやぁ、生憎と俺専用の装備なんですよ」

「そうか。誰でも使える装備なら売れそうなんだがなぁ」


そうか……、機能を限定したモノなら魔導具として作れるかな?

アイデアとしてはいけそうだ。メモっておこう。


「そのアイデア、いただきますね」


そう言って俺は常備してある紙片を出して今の思い付きをメモした。

最近、俺はこうやって思い付きをいろいろとメモっている。

これのおかげで俺は、この世界にはまだ発明されていないあろう、ある筆記用具の開発に成功した。

それは「鉛筆」だ。とは言え、黒炭を板で挟んだだけの原始的なモノでしかない。

でも、ちょっとしたメモくらいなら便利に使える。これもいつかは金儲けの材料にしようと思っている。


「ん?なんか商売にしようとしてるのか?それなら一枚噛ませろ」


おぅ。流石は大店(おおだな)のご隠居、金儲けの匂いには敏感だ。


「それと、お前さんの使ってるそれは何だ?」


おやおや、この爺さん、「鉛筆」にも金の匂いを感じ取ったか?怖い怖い。


「これですか?まだ試作中なんですけど、筆記用具にどうかな?って思って作ってみました。『鉛筆』っていうんですけどね」

「ふ〜ん、少々粗削りだが便利そうだな。どうだ?うちの商会で売り出さんか?」

「え?良いですけど…。まだ試作品ですよ?」

「構わん。商売というのは時に、博打を打つ事も大事だ。売れそうだと思ったら自分の勘を信じてやらなきゃならん」


いやぁ〜、老いても商売人だね。商機を見出す勘の良さがあるから店を大きく出来たんだな。


「んじゃ、あとで試作品を2〜3本渡しますね」

「そうじゃな。その時までに契約書を作っておこう」

「それじゃ、よろしくお願いします」

「うむ。お前さんとは、長い付き合いになりそうだな」


おぉ〜。なんか訳わからんうちに大店(おおだな)に伝手ができたぞ。

でも、ヤーヴェさん…。なんか笑顔が怖いっす…。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ