第34話・ダンジョン掃除と飯屋での事
ひょんなことから、ダンジョンに眠る「資源」の事がわかった。
どうせ腐らせる資源なら、俺が美味しく使ってあげよう。
ダンジョンもキレイになって、冒険者たちにも喜ばれて、一石三鳥って感じで良いこと尽くめなんじゃないのかな。
てなわけで、ゴミを探してダンジョンをウロウロと彷徨っている。
マッピングはレーダー機能で自動的にしてるんで帰りに迷う心配はない。
でも、落ちているのは小型スライムしかいない。
まだ、浅い階層だからかな?
とは言っても、このダンジョンは第七階層までしかないから、浅いってほどでもないんだけれど……。
ま、魔獣を避けての移動だからこの階層の一割も見てないんだけどね。
そんなこんなで、うろつくこと小一時間。ようやくゴミを発見した。
そのゴミは細い廊下の小部屋(六畳間くらい)の隅にあった。
内容としては、鎖帷子に胸当て、それに籠手が片方だけ。ここで冒険者がお亡くなりになったってわけじゃなさそう。荷物が多すぎて置いていった感じかな。
装備するための革紐やベルトの類はスライムに吸収されたのか、付いてなかった。
とりあえず今回は時間も無いし、これだけで満足する事にしよう。
どうせ、これからもちょくちょくダンジョンに来るわけだしね。
夕方、ダンジョンからギルドに戻って今日の事をアドルさんに報告する。
「とりあえず、スライムを三匹だけ飼育する事にしました」
「本当に飼育するんでね……。で、今後は観察って感じですか?」
「そんな感じです。餌に差をつけて一週間ほど様子をみようと思います」
「了解しました。また報告をお願い致します。それと近いうちに一度、視察させてください。上の方にも一応は報告しないといけないので……」
「はい、いいですよ。じゃ今度、時間を合わせて一緒に行きましょう」
「その時は案内の方よろしくお願いします」
「了解です。んじゃ、今日はこの辺で…、お先に失礼します」
「はい。お疲れ様でした」
これで、今日のお仕事は終了。
あとはのんびり飯でも食って明日にそなえましょうかね。
って事で、いつものお店春風亭に到着した。
いつものようにテーブル席は、冒険者たちが占拠している。
なんか賑やで良い感じだね。まだ一週間程度だけど、この店に来ると何かホっとするんだよね。
んで、お決まりのカウンター席に座ると、何も注文してないのに「レモネード」が出てきた。
「そろそろ来ると思って用意しておいたよ」
「ありがとう。この店で『レモネード』なんて俺しか飲まないものね」
マスターは三日目にして俺の顔を覚えてくれて、席に着くと注文無しに「レモネードと今日のオススメ」が出てくるようになった。
さすがはプロである。今度、イノシシでも捕ってきたらお裾分けしよう。
ちなみに、店員さんのお姉さんとはまだ仲良く出来ていない。
お姉さんの興味は俺よりイケメンの冒険者に向いているので、こちらへの対応は明らかに事務的だ。
俺も一応は転移者なんだし、もうちょっとモテても良いと思うんだけどな。
ファンタジーの主人公ってモテるのが当然だと思ってたけど、この世界では違うらしい。なんか納得がいかない。
そんな事を考えながら飯を食っていると、ドカドカとやかましく冒険者の一団が店に入ってきた。
「な〜んか。納得いかないのよねぇ〜」
ブツブツと文句を言いながら、赤い革の鎧を着たお姉さんがテーブル席に陣取る。
ん〜……。どこかで見たことある感じのパーティーだなぁ。
「別に良いんじゃねぇの?そんなに気にしなくてもさ」
ローブ姿のヤサ男が、軽い感じで受け答えをしている。
あぁ〜、コイツら森で闘ってたヤツらだわ……。
「絶対、あの場にもう一人魔法使いがいたはずなんだよ!でなきゃ、あたしら全滅してたかもしれないんだよ!」
「しかし、その謎の魔法使いとやらは援護だけして消えた……。何か出てこれない理由があったかもしれんな」
マッチョなおっさんはあの時の戦士だ。
どうやら、あの時の戦闘での俺がやった援護の事で、お嬢さんは納得いってないらしい。
だからと言って、ここで俺が名乗り出ていくとややこしい事になりそうなんでガン無視と決め込もう。
「名乗り出てこないなら、それでイイじゃん。その分、分け前も増えたんだし、向こうだって身バレしたら迷惑なんじゃないの?」
「かもしれないけど。助けられたまんまってのが、気分悪いんだよ!」
「それもそうだけどさ。探すったって魔法使いの情報なんてないぜ?」
どうも、お嬢さんは律儀な人らしい。礼の一つも言いたいんだろう。
その後、彼らの話はその「謎の魔法使い」を探し出すって事に落ち着いた。
ま、頑張っていただきましょう。見つからないとは思うけどね〜。




