第31話・ダンジョンに行こう
森に戻ってサクっと魔獣を狩りました。
デカい猪タイプを一匹と狼タイプを二匹、ついでに今日の儲け分にとスライムも狩った。ステルス機能は効果抜群で簡単に狩れた。今後は狩りに使わん方が良いかな?ヘイゼル爺さんにバレたら怒られそうだ。
街に戻って昼飯代わりの串焼き食べつつギルドに行く。
アドルさんにいつものようにスライムゼリーを20本分卸して午後はダンジョンに行くと告げた。
「ロールから聞いたんですが、ダンジョンで何かやるんですか?」
あら!もうロールさんから情報がいってるのね。
「ええ、まあ単なる思い付きなんですけどね。ダンジョン自体には影響がないと思いますよ」
「ダンジョンに何かあったら街の運営にも影響が出ますから、ギルドとしても何をするのかくらいは把握しておかないといけませんので、実験の内容を教えていただけますか?」
そりゃそうだ。いきなり新人冒険者がダンジョンでよくわからない事をするって言い出したら不安にもなるわな。
「良いですよ。やる事は単純ですからね」
「で、ダンジョンで何をやるんですか?」
「スライムに餌を撒くんです」
「餌?ですか?」
「ええ、でも適当に撒くんじゃなくて、餌の種類を決めて数匹のスライムに与えて様子を観察してみようと思ってます」
「はぁ?」
「まぁ、単にスライムを少しだけ飼育するだけですよ」
「ダンジョンでスライムを飼育?そんな事して意味あるんですか?」
「わかりません。第一、飼育出来るかもわかりませんからね」
「そうですね。今までスライムを飼育しようって人、聞いた事ありませんから…」
「ええ、だから失敗しても影響はないと思いますし、人の少ない場所でやりますから他の冒険者に迷惑がかからないように注意しますよ」
「わかりました。でも経過報告だけはお願いしますね。影響が出てからじゃ困りますから」
「了解です。では、ダンジョンに行ってきます」
「いってらっしゃい。気をつけて」
アドルさんに見送られてダンジョンへ向かう。
場所は街の東側の森の中、ギルドから小一時間歩いたところにある。
森の中と言っても道はちゃんと整備されているし、ダンジョン前にはいくつもの店が出ている。なかなかの発展ぶりだ。
「こりゃ、ちょっとした『門前町』だね」
なんて事を思っているうちにダンジョンの管理棟に到着した。
管理棟の外観はギルドを小さくした感じ、ここの受付で入場の登録をするとダンジョンに入る事が出来る。
ただ、ランクによって推奨階層の違いがあるらしいんで、その辺のところ警告されるんだろうな。
管理棟の中はギルドと大した違いはなかった。そりゃそうだ、この管理棟もギルド直営だものね。違いあると言えば依頼書の掲示板とカフェスペースが無い事くらいかな。
あとはダンジョンへの出入り口かな?駅の改札みたいなモノがあって、そこから冒険者が出入りしている。
ま、管理棟自体には大した用はないんで、さっさと入場登録しちゃおう。
受付にはお姉さんが2人いて、片方は栗色の髪をショートカットにしている理知的なスッキリ美人、もう片方は青い髪でちょっとたれ目、ポヤっとした感じの癒し系美女、どっちも好みのタイプだからすごく迷う。
とは言え、ここはそっち系のお店ではなくギルドなんだから変な気を起こしてはいけない。
タイミング良く、スッキリ美人さんの手が空いた様なのでそっちに話しかけた。
「すみません。初めてダンジョンを利用するんですが」
「はい。では利用登録をしますのでギルドスティックの提出をお願いします」
「はい。これです。お願いします」
ギルドスティックをお姉さんに渡すと水晶玉の付いた魔導具に差し込んで何か操作している。
「はい。登録完了しました。スティックをお返ししますね」
「ありがとうございます」
「では、ダンジョンの利用のための注意事項をご説明させていただきますね」
「はい。お願いします」
注意事項は大体予想通りだった。
ダンジョンへの入退出時にスティックを出入り口の魔導具に通す事
その時、探索予定日数も必ず登録する事
推奨階層以外の探索は自己責任な事
事故等での救助費用は自己負担な事
他にも細かくあったけど、要は『冒険者なんだから覚悟しろよ』って事らしい。
その代わりダンジョンで手に入れたモノは全部冒険者のモノになる。
命を担保にしたハイリスクハイリターンのギャンブル。それがダンジョン探索ってことらしい。
「ユウキさんはFランクなので推奨階層は地下1〜2階層になります。それ以外の階層は自己責任ですのでご注意下さい」
「はい。了解しました」
「他に何かお聞きになりたい事はありますか?」
「じゃ、俺にはあまり関係ありませんが、今現在の最高階数を教えてください」
「はい。このダンジョンの最高階層は地下7階です。それ以降への階段等は発見されていません。ダンジョンコアも発見されていません。もし発見した場合は報告をお願いします。ダンジョンコアの場合も同じですが、コアは破壊しないようにお願いします」
「ありがとうございました。じゃ、そろそろ行ってきます」
「あ!これをお持ちください」
早速、ダンジョンに行こうとした時にお姉さんが小冊子を渡してきた。
「これは?」
「ダンジョンについての注意書きと料金表です」
あらまぁ、入場無料じゃないんだ。
う〜ん……。こりゃ、気にしたら負けってことだな。
よし!初ダンジョンだ。気合い入れて行ってきますかね……。




