第227話・ダンジョンネットワーク化計画
とにかく機関車のお披露目は無事に成功した。
これから始まるのは路線の拡張だ。
まずは、アサイ村の実験路線を出発点としてヤドラムと繋げる。
その後、領都『メルキア』の大規模な駅舎へと繋げる予定だ。
領内の主要都市にはメルキアと同様に大規模な駅舎を建て、いずれはロンダーギヌス領全体に路線を拡張する計画になっている。
計画完了までに何年掛かることやら?しかし、その経済効果は計り知れない。
この路線計画は王国全体にも波及し、この国の発展に寄与するに間違いない。
ただ、問題が無いわけではなく、もろ手を挙げて喜べるわけではない。
「まあ、路線の敷設やら機関車の維持管理やらといろいろやる事は多いですが、それはお父様がすでに手を打っていますからそちらに任せるとしましょう。ただ…」
と、クララ様は優雅にお茶の飲みながら宣う。
久しぶりのラムちゃんのダンジョンでのお茶会の事である…。
「そうですねぇ…。こちらの放ったアバター達の情報やら、捕まえたスパイからの情報からするといよいよ国内情勢もバタついてきてますものねぇ」
と、俺はこれまでに入手した情報が記載された書類の束を眺めて言う。
「ええ、三人の王子たちが王座を巡って…。正直、そんなヒマは無いのですけど」
とクララ様がため息をつく。
現在、国内では三人の王子たちが次期国王の座を巡ってチャンチャンバラバラ裏でお祭り騒ぎをしている。
まだ、王様が御健在であらせられるので派手にやりあってはいないのだけれども、王国の屋台骨である王族がこうもグラついていると、その影響は同盟国や友好国にも波及して、諸外国の覇権争いの導火線にも火が着きそうになっているんだわな。
「今すぐにでも戦争が起きるってわけでもないんでしょうけどねぇ…」
だが、それも時間の問題だ。この王国が紡いできた150年にならんとする平和への努力もそれに慣れた王子たちや貴族たちには理解できていない。
今ある平和が並々ならぬ努力の結晶だと理解できなければ、政治体制は簡単に官僚化し権力闘争と既得特権の維持だけの児戯に早変わりする。
「こちらで得た情報は一応ミュラー爺さんの部隊やレッドさんにも渡るように手配はしていますが…」
「そうですね…。こちらもお父様を通じて公爵様にも情報がいくようにしてありますので、早々に低俗な覇権争いに巻き込まれるような事はないと思います」
「それで、これからの行動なのですが我々は『紅の風』として、暫くの間ダンジョン攻略に専念しようかと考えています」
と俺は切り出した。
これはパーティメンバー全員で決めた事だ。
元々、ダンジョン同士でのコミニュケーションとダンジョン交通の拡張は計画にあったんだが、機関車のお披露目が成功したことで前倒しになった。
「今回のお披露目の成功によって、領内及び国内外に鉄路が施設される事になります。これには数年の時間が掛かりますが、輸送量の増大は確実です」
ユーノさんが説明し始める。
「それに伴い情報伝達の速度も早まるでしょう。我々は各勢力に先んじてダンジョンを利用しての情報網の構築を早急な課題と考えています」
「正直、人間同士のいざこざにダンジョンを巻き込むのは考えモノですねぇ」
クララ様は消極的な姿勢だ。
だが、当のラムちゃんは別の考えがあったようだ。
「クララ、人間たちが戦争を始めればダンジョンは自然とそれに巻き込まれるよ」
それは俺がコルソ樹海から持ち帰ったデータからも言える事だった。
過去において人間は戦争に直接的、間接的問わずダンジョンを利用してきている。その最悪の利用例がダンジョンコアの活用だ。
ラムちゃんに言わせると、その歴史的事実を知っているダンジョンは今のところラムちゃんだけだそうだ。
そもそもダンジョンは内側に入ってきた情報は活用するが外にある情報、特に政治情勢などにはまったくと言っていいほど興味を持たない。
もし、戦時国がダンジョンからもたらされる資源よりコアの持つ力を欲した場合、ダンジョンは人間にあっさりと命そのもののコアを奪取されるに違いない。
「過去、人間はダンジョンコアを利用している。その技術を伝えられている国や勢力があったとしたら…。ワタシ達ダンジョンは人間に殺される…」
ダンジョンのネットワーク化は、ダンジョンという種を守る為にも必要な事なのだとラムちゃんは力説していた。
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