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第222話・死刑宣告


その日、歓楽街でとある騒動が発生していた。

騒動の現場はマフィアが仕切っているという噂のある歓楽街では有名な店だった。

店の形態はキャバクラって感じの大人のお店なんだとか。


その店の軒先に半死半生になったチンピラが3人、逆さ吊りにされていたそうだ。


普通、こういった歓楽街で発生した事故なり事件はマフィアに対処を任せる事になっているのだけれど、今回の場合は被害者がマフィアの関係者ときている。

そのうえ、まるで拷問を受けた様なありさまだ。(実際、うちのアバターさん達の躾けという名の拷問を受けたんだけども)


これは現場の状況から見て、犯人はマフィアへの宣戦布告を意図しているのは明らかだと思われた。


こうなると、さすがにギルドとしても黙っているわけにはいかない。

下手をするとマフィア同士の抗争にも発展する事もあり得るからだ。

しかし抗争相手のマフィアは既に討伐されている。

ならば、他のマフィアが街に侵入してきた可能性も考えられる。


この事件を切っ掛けにマフィア同士の抗争になったら一大事だ。

実験都市構想にも少なからず影響が出る可能性だって十分にある。


てなわけで、ギルドの警備部は緊急クエストを出して冒険者を大量動員。

歓楽街の巡回人員を増やして警戒にあたっている。




そして数日後の夕刻、そろそろ開店の時間という頃。

と、言っても開店そうそうにお客さんが来るような繁盛店ではないので、俺はカウンター席で甘いソーダ水を飲みながらレッドさんとのんびり話しをしていた。


しばらくすると、店の扉が開きお客様が来た。


珍しい事もあるものだと、何気なく客を見やると如何にもって人物が二人連れで入店してきた。


「悪いが客じゃねぇんだ。ちょっと聞きたい事があってな…。手間は取らせねぇ、少しの間、貸し切りにしてくれねぇか?」


と、ややポッチャリしてはいるが眼力が強烈なおっさんが言った。


ああ、これはレッドさんがやらかした事についてだな。

しかし、強化アバターが証拠を残すようなヘマをするとは思えないんだが、マフィアの捜査能力を甘く見ていたようだ。


店員モードのアバターに目で合図を送り、店の扉に『準備中』の看板をぶら下げてもらう。まあ、そんな事しなくても客なんて来ないと思うが念には念を入れてだ。


「で、そちらは誰です?」


「ワシは『エシェド・ファミリー』の代表のラキノールってもんだ」


と、ふとっちょヤンキーが自己紹介。

んで、その隣にいるインテリヤクザ風味の強いお兄さんは…。


「私はスリープス、部下のまとめ役を務めております」


ぶっちゃけ、マフィアのボスと若頭だ。

なんともまあ、ツートップがいらっしゃるとはねぇ~。


「俺はユウキと言います。この店のオーナーです。で、こっちはバーテンダーで店長を任せているレッドさんです」


と、こちらも一応の自己紹介。


「この店の名前は『エルミタージュ』でイイんだな?」


「ええ、うちは『エルミタージュ』ですが…」


「そうか……なら、面倒な前置きは抜きにして聞きたいんだが…。うちの若ぇのを潰したヤツはどいつだ?」


軽くドスの効いた声色でラキノールが言う。

だが、その程度でビビるレッドさんではない。

俺はちょっとビビってるんだけども…。


「そんなヤツ等なんぞ、知らんな…」


レッドさんが静かに告げる。すでに店員モードでなく強者モードだ。


「なぁ…レッドさんよ。こっちもメンツってもんがあるんだ。『知りません』『ああ、そうですか』って話で済んだらファミリーの連中に顔向け出来ねぇんだよ」


「そうは言っても知らないモノは知らん。それに、きさまが誰に顔向け出来なくなろうが我の関知する事ではない」


「おい。こっちが下手に出てるからって、舐めた口を利いてんじゃねぇぞ」


声を荒げる事のない静かな応酬…。

昔、観たヤクザ映画のワンシーンみたいだ。

ただ、このままでは話が平行線のままで終わるのは目に見えている。

それまで黙っていた若頭のスリープスがやってならない最終手段に撃って出た。


「うちの部下が治療院のベットで譫言(うわごと)ように、この店の店名を繰り返しているんですよ。いくらうちの部下が馬鹿でも、やられた相手の名前を間違えることなどありはしません」


「オマエ等は馬鹿の譫言(うわごと)を信じると?」


「それがファミリーってモノですから…」


「ふむ、そういうモノか…。だが、ここは境界線に近いとは言えギルド側だ。この意味はわかっているのだろうな」


「ええ、だからこちらとしても大事にはしたくないのですよ。出すモノを出して頂ければね」


「もし、断ると言ったら?」


「さあ…?ただ…この店の経営が厳しい状況に陥ったり、身内に不幸な事が起こるやもしれませんね…」


ああ~あ…、やっちゃった。脅しちゃったよ。

このファミリー…終わったな…。


だって、レッドさんが何やら『覇気』を軽く放出し始めちゃったみたいだもの。

俺には何も感じられないが、急にマフィアのお二人さんの顔色が悪くなって息も絶え絶えになってるんだもの。


「雑魚共が我の安寧を邪魔するか…。良かろう…禁忌に手を出した己が不幸を呪うがいい…」


レッドさんから『死刑宣告』なされた。

だが、マフィアだって伊達に修羅場を潜ってきたわけではない。


「ファミリーに逆らう気か。痛い目に遭うぞ」


それは精一杯の強がりにしか聞こえなかった。


だが、その言葉は『エシェド・ファミリー』と『エルミタージュ』の全面対決を意味していた。


お読みいただき、ありがとうございました。


不定期更新で、のんびり進めていきます。


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