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第22話・考えてみれば、これもイベントなんだけどなぁ


街をブラブラしながら森に向かう。

さすがは、「宿場町」が発展してできた街だけの事はある。

いろいろな店があって、なかなかの賑わいだ。

途中、「ウサギ肉の串焼き」なんてのがあったんで、買ってみた。

香辛料が効いていてなかなか美味い。冷えっ冷えのエールがあったら嬉しいんだけど、贅沢は言えない。なにせこれから仕事しなくちゃいけないしね。


串焼きが美味かったんでさらに5本追加購入して食べながら街を出た。

西に歩いて一時間ほどの所が目的地の森だ。秋も深まったとは言え、まだまだ森の動物たちは活発に活動している。

今回の狩りは様子見と周辺のマッピングも兼ねてるんで、のんびりと森を観察しながら今後の計画を立てていこう。


んで、今回のお仕事のスライムゼリー収集なんだけど、量としては容器20本だから10リットルほど、30cm級一匹を確保すれば充分だ。

他の冒険者には厳しい事らしいが、DELSONはスライム特化の装備みたいなモノだから簡単に稼げる。

だけど、俺にはヘイゼル爺さんからの御達しがあって、スライムはメートル級以上しか狩ってはダメって事になっている。

なぜかというと、爺さん曰く「スライムは森の豊かさのバロメーターだから」なんだそうだ。

大きなスライムが多い森は豊かで他の動物も多い証拠なんだって。

その反対に森が荒れていると、スライムも小さく凶暴になる。飢餓状態が続くのが原因なんじゃないか?って事らしい。

楽に儲かるからって、乱獲するとみんなに迷惑がかかるから俺は自重しないといけない。

なんせ俺の場合、ゼリーの品質はほぼ最高品質だから、容器一本で銅貨50枚相当の買取価格になるはずだ。

今回は容器20本だから銅貨1000枚、銀貨にすると十枚前後の儲けが見込める。


ちなみに元いた世界の価値に例えると10万円くらいな感じ。ギルドで借りた格安の宿代が一ヶ月分で銀貨三枚だから、なんとなく価値観がわかると思う。


しかも、俺がメートル級を狩った場合、手に入るスライムゼリーは500リットルほど、容器1000本分だ。

銀貨で500枚、金貨換算で5枚分の大儲け。

でも、いきなりギルドに出すといろいろと面倒くさい事になる上にポーションの相場がおかしくなるって村長さんが言ってた。

だから、徐々に個人的な販路を見つけて売るのが良いって、村長さんから知り合いの薬師の紹介状をくれた。

本当に、至れり尽くせりの村長さんには、感謝の言葉しかない。

頑張って儲けて恩返ししないとね。


というわけで、森に入る前にいつものようにレーダー機能を起動して周辺を索敵してみた。

おぉ〜。いるわ、いるわ、季節的なのか?環境が良いのか?よくわからんが、数量的には多い。村の方の森も豊かだったけど、こっちの森も負けず劣らず豊かな森だ。

これなら簡単に仕事が片付きそうだと思ったんだけど、スライムをレーダー検索してみたところ、俺の周辺には小ぶりなのばかりだった。


仕方ないので、俺はメートル級探しとマッピングを兼ねて、森の奥に入っていくことにした。

さすがにメートル級だとなかなか見つからない。森を彷徨うこと小一時間、ようやくレーダー上に反応がでた。


スライムが見つかれば、あとは簡単だ。いつもの通りに後ろからこっそり近づいて、DELSONをプスっと刺せば一丁上がり。

ズゾズゾっとゼリーを吸い取って、残ったスライムコアを拾うだけだ。


ふと、そこで俺はある事に気づいた。


「そう言えば、これってイベントじゃね?」


そう!ファンタジーの主人公が狩りに出て、森の中で魔獣に襲われてる可愛いヒロインを救い出すってイベント!!


「これも、定番中の定番だよねぇ〜」


というわけで、耳をすませてみた……。

そこに遠くから微かに響く絹を引き裂くような女性の悲鳴が!!


…………。聞こえません。

えぇ、聞こえるはずがありませんよ。

だいたいに、ちょろっと考えればすぐにわかります。

いくらキノコ狩りだって魔獣が出るような森の奥に来るわけないし、しかも森の奥に来るような人間は俺と同じような狩り目的の人間だ。

装備だってキッチリしてるし、この世界の人間に無防備に危険地帯に行くような甘ちゃんは存在するわけがない。


あぁ……。現実ってそんなもんだよなぁ……。


そんな事を思いつつ、俺はトボトボと森をあとにするのだった。


まぁ、いっか。そこそこ儲けたんだから……。


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